映画「バクテン!!」公開へのカウントダウン企画⑳~2011 ALL JAPAN社会人選手たち

YouTubeで100万PV! 

世界が注目する「美しすぎる」男子新体操の頂上決戦が開幕

(「Sportiva」2011年11月17日掲載)

高校総体、インカレ、 社会人選手権、 そして全日本ジュニアの上位選手、 チームが一堂に会して 「日本一」の座を競う第64回全日本新体操選手権大会が、11月18日~20日、千葉県・幕張メッセで行なわれる。


 先ごろ、 YouTube で 「超人的」 「美しすぎる」 と世界中で話題になり、100万PV超えを達成した青森大学の団体演技も2009年の全日本選手権でのものだった。 各チーム、各選手が、 1年間の集大成としてすべてを懸けてくるだけに、伝説となる名演技を見られる可能性が高いのが、この全日本選手権なのだ。

 そして、 今年は、例年とは少し状況が変わりそうな予感がある。 それだけに一段と見逃せない大会となりそうだ。
 男子新体操は、ここ10年ほど 「大学生の天下」 だった。 中学や高校から始める選手が多かったため、技術が完成するのは大学生になってから。 そして、プロや実業団など大学を卒業してからも続けられる環境がほとんどないため、多くの選手が大学までで競技から離れてしまう。
 男子新体操は、 そんなスポーツだったからだ。


 

ところが、今年は社会人選手のレベルがかつてないほど高い。 昨年の全日本チャンピオン・北村将嗣(きたむらまさし・花園大学RG) は、 卒業後、母校・花園大学のコーチに就任。 学生たちと一緒に、 トレーニングを続けてきた。 もちろん、現役選手たちの指導に使う時間が増え、自分の練習だけに割ける時間は学生時代より圧倒的に少ない。 それでも、体育館にいる時間はおそらく誰よりも長く、完全に競技から離れる時期を作らなかった北村は、 10月の社会人大会で進化した演技を見せた。 大学生ではほとんど出ていない 9.500超えの高得点を4種目すべてでマーク。 学生時代よりも安定感、存在感の増した演技で観客を沸かせた。
 社会人大会で2位になった木村功 (きむらこう・花園大学RG) と3位の奥雄太(おくゆうた・KOKUSHIKAN RSG) は、 大学卒業後はいったん競技から離れ、マッスル・ミュージカルなどエンターテイメントの世界でも活躍していたが、今年は競技に戻ってきた選手だ。 木村は塾講師、奥はスポーツクラブのインストラクターをしながら、 地元でジュニアや高校生の指導を手伝うかたわらで自分の練習時間、場所をなんとか捻出している。 そんな彼らの演技は、 十分とは言えない練習時間にもかかわらず学生時代よりも表現力に磨きがかかり、凄味すら感じられた。 結果、 大学生のトップレベルと十分に競えるだけの得点を得て、 全日本選手権に駒を進めてきた。
 全日本選手権で社会人選手が優勝したのは、 2004年の杉本清志 (東京ジュニア新体操クラブ) が最後で、 それ以降はずっと大学生が全日本を制している。 しかし、今年は社会人としては、比較的コンスタントに練習を重ねてきた選手たちが揃い、久々に社会人のチャンピオンが生まれるのではないかと期待されている。 彼らの活躍いかんでは、あとに続く選手たちの「社会人になっても本気で競技を続ける」 モチベーションも向上するに違いない。
 もちろん、大学生もやすやすと社会人に優勝を譲る気はない。 インカレチャンピオンの菅正樹(すがまさき 花園大学)、 インカレでは僅差の準優勝に泣いた福士祐介 (ふくしゅうすけ青森大学)、 音響ミスがありながらもインカレ3位の野口勝弘 (花園大学)、 今年度大学生の最高得点9.550 をロープで記録している柴田翔平 (青森大学) などが、 大学生の意地を見せるに違いない。
 また、ここ数年、着実に増えてきたジュニアクラブ育ちの選手たちは、 小学生のころから本格的なトレーニングを積んでおり、 高校生でも高い技術を持っている。 その代表格がインターハイチャンピオン・臼井優華 (うすいゆうが・済美高校) だ。 昨年の全日本選手権でも総合9位につけている臼井は、今年は入賞、いや優勝の可能性もあると言われている。
 例年以上に白熱した 「大学生vs社会人」の戦いに、高校生もからんできそうな今年の全日本選手権は、名演技の応酬になる予感に満ちている。 そして、 社会人選手が第一線で活躍できれば、この先も、社会人で競技を続ける選手が増える可能性も増し、 男子新体操というスポーツ自体の振興にもつながるに違いない。 そういう意味で、 第64回全日本新体操選手権大会は、 男子新体操の未来がかかった試合でもある。 ぜひ注目してもらいたい。

~映画「バクテン!!」公開まであと13日~

※映画公式サイトはこちら。 ⇒ https://bakuten-movie.com/

 TEXT :Keiko SHIINA