映画「バクテン!!」公開へのカウントダウン企画⑫~2022「芦北高校4人の挑戦」

このところ、過去記事を振り返ってきたが、久々に「現在」の記事。

6月11~12日、沖縄で高体連九州ブロック大会が開催されている。1日目に行われた団体競技男子は、出場6チーム中4位以内にインターハイの出場権が与えられる「負けられない戦い」だった。

結果、優勝は、今年3月の全国高校選抜でも優勝している神埼清明高校(佐賀県)。構成8.875、実施8.700の17.575はさすがの王者っぷりだ。

そして、2位には、5月の男子団体選手権優勝で波にのる鹿児島実業高校(鹿児島県)。今回もコミカルなしのガチ演技で、その実力が本物だと証明して見せた。構成8.450、実施7.000で15.450。3位には古豪・小林秀峰高校(宮崎県)が入った。高校選抜時はかなりチーム事情が苦しそうに見えたが、ここにきて構成8.000、6.900の14.900まで上げてきた。夏に向けてもうひと伸びを期待できそうだ。

インターハイ切符最後の1枚は、熊本、福岡、大分の4人編制3チームによる争いになった。

4位にすべりこんだのは、芦北高校(熊本県)だったが、芦北高校は昨年の九州大会では2位、インターハイでも4位と伸び盛りのチームで本来なら今回の九州大会でも「打倒神埼!」の一番手かと目されていた。

が、熊本県大会では5人編制。さらに今回は4人編制という苦しい状況にあったが、他の2チームも4人編制だったため、地力に勝る芦北はインターハイの切符を手にすることができた。構成5.400、実施7.050、減点3.10で9.350と3位とは大きな差がついているが、人数不足による3.0の減点がなければ12.350。今年からのルールでは「6人そろっての実施」で得られる加点が多いが、4人編制ではそれがすべてとれないため、構成点も大きく下がっていることを思えば、6人揃っていればかなりの得点の上積みが期待できそうだ。

九州大会へ出発する前日に、芦北高校に取材に行った。

もともとは6人メンバーは揃っていた。いずれもジュニアからの新体操経験者でレベルは高いと聞いていた。

が、県大会の公式練習中に1人が肘を脱臼し、急遽5人での演技となってしまったとは聞いていた。

その選手は九州大会にも間に合わず、5人編制でしか演技できないと聞いてはいたが、去年の3年生が強かっただけに、彼らが抜けた「今年の芦北」を一目見ておきたかったので、出かけて行ったのだ。

体育館に入ると、そこで練習していたのは4人だった。

「ひとり遅れているのかな」と思いながら見ていたがいつまでも入る気配がない。脱臼をしている選手は、ずっとチームのサポートをしていたが、果たしてあと一人は? と訝しく思っていると、出来田和哉監督が「すみません。県大会の翌日に、ひとりコロナ陽性が出ました。他の選手も急遽検査したりしてここ数日大変でしたが、幸いみんな陰性で濃厚接触者にもあたらないと判断されたので九州大会には出ることはできますが、4人でやるしかないです。なんとか4位以内に入ってインターハイの権利だけはとってきたいと思っています。」と言った。

そんなことになっていたとは。

それにしても、他の選手が陰性だったというのは幸運だった。

そして、この日見た彼らの演技からは、とてもそんな状況にあるとは思えない、迫力と美しさ。そして、なにか「決意」のようなものが伝わってきた。強かった去年の3年生が抜けても、決して見劣りしない立派なアルデバラン(後継者)がそこにはいた。

いや、むしろ、様々な部分で、「強かった去年の芦北」に負けないくらいの進化も見られた。

このチームは強い。

そう直感する瞬間がある。この日の4人の演技を見たときには、たしかにそう感じた。

なんとかインターハイで6人揃った演技を見たいと思わずにいられなかった。このチームが、6人揃って演技をしたなら、「なにか」が起こるかもしれない。そう思ったからだ。

 

芦北高校の男子新体操は、相当昔には強かった時代があるという。

しかし、同じ県内の水俣高校の台頭もあり、新体操部が廃部になって久しかった。

が、時代は変わり、水俣高校の新体操部も衰退。熊本県からはインターハイに男子団体が出られなくなっていた時期もあった。

そんな中で、芦北はまずジュニアクラブを立ち上げ、ジュニアの育成から手をつけた。

そののちに芦北高校にまず同好会として新体操部を復活させ、部に昇格。インターハイへも再び出場できるようになった。

そして、ついに。

2020年には豪雨災害でマットや手具も失うという困難にも遭いながら、その逆境から這い上がった彼らは、昨年のインターハイでは4位。表彰台まであと一歩のところまで迫ることができた。

かつて大学生チームにとっても脅威だったと言われている水俣高校時代の「強い熊本」が還ってきたのだ。

そんな去年の活躍も、まだまだ彼らにとっては「通過点」だったのだ。そう思わせるものが今年の芦北高校にはある。

4人での演技でもそう感じたのだから、6人揃ったときには。。。

8月のインターハイでの彼らの演技におおいに期待したい。

4人になってもあきらめず、がむしゃらにインターハイ切符を獲りにいった今回の気迫をもって、6人でインターハイに臨んだときに、なにが起こるのか。起こせるのか。

注目だ。

~映画「バクテン!!」公開まであと20日~

※映画公式サイトはこちら。 ⇒ https://bakuten-movie.com/

TEXT & PHOTO:Keiko SHIINA