映画「バクテン!!」公開へのカウントダウン企画㉒~2011 ALL JAPAN個人選手たち
なんとまだ2011年の記事があった!
本当にこの年、私はなんとか男子新体操を世の中に広めたくて必死だったんだな~と改めて思う。
自分のブログ(今ならSNSになるのだろうけど)だけで発信していても広がらないと思って、どこか載せてくれないか? とあらゆるところに営業をかけていたことを思い出した。その結果がこの「突出して他メディアでの掲載が多い2011年」なんだと思う。
この記事は、「スポプレ」というスポーツ用品店で配布されるフリーマガジンに掲載されたものだ。近所のスポーツ店に置いているのを見つけて、営業したことを思い出す。団体に比べると、注目度が低かった個人競技を知ってほしくて書いた記事。一部のスター選手だけでなく、少しでも多くの選手たちを知ってほしいと思って書いたのでやたらと選手名が出てくる(笑)。
男子新体操のルールも2015年を境にかなり変わったので、ここに書かれていることが当てはまらなくなっている部分もあるが、それでも今も「男子新体操が魅力的」なことには違いない。
■男子新体操個人競技観戦のすすめ
(フリーマガジン「スポプレ」2011年10月掲載)
最近では、かなり知名度が上がってきた 「男子新体操」 だが、どうも団体競技のイメージが強いようだ。 たしかに、 人が人の上に乗ってやぐらをつくったり、人の上を人が跳び越したりする団体演技は、迫力満点でインパクトがある。 おまけに「合成か?」と思われるほどの同時性もある。 おもしろいことは間違いない。
対して、 個人競技はというと、女子ほどの華やかさがないせいか、あまり注目を浴びずにひっそりと行われてきた印象がある。
が、じつは、この男子新体操の個人競技、見始めるとなかなか味わい深いものなのである。
●「表現」を楽しめるのが男子新体操の魅力
近年、フィギュアスケートはとても人気があるが、それはなぜだろう?
日本選手が強いから。それはもちろんある。
しかし、それだけではない。 フィギュアは、たとえルールをわかっていない人が見たとしても、「作品」として楽しむことができるからだ。 音楽にのせての表現に工夫が凝らされており、その作品で選手が描こうとしている世界が観客に見える。 だから、ジャンブの種類の見分けがつかないような観客にも、フィギュアスケートのよさはわかるのだ。
しかし、新体操は、「芸術スポーツ」といいながらも、技術偏重になってしまっていた面が強かった。 とくに国際ルールへの対応を迫られる女子は、 音楽や表現は二の次になりがちだった。 ところが、日本独自のルールで行われる男子新体操は女子に比べて、ルールのしばりが非常に少ない。 そして、演技時間は同じ90秒なのだが、 その中で「やらなければならないもの」の数が男子はかなり少ないのだ。 となると、そこに時間的なゆとりが生まれ、そのゆとりを彼らは、「表現」に費やすのだ。
「表現」の方法や種類は人によって違う、きりりと男らしい見栄をきる選手もいれば、絶え間なく手具を動かし続ける選手もいる、音楽を奏でるように体のあちこちを柔らかく動かして見せる選手もいる。
静かな曲でしっとりと踊りあげるような作品だと、かなり長い時間静止して見せたり、 静止から動き始めるまでにたっぷりとためがあったりもする。 そして、演技中の彼らはじつに表情豊かだ。 それだけ、自分の表現する世界に入り込んでいるのだろう。 これらは、高度化しすぎて忙しくなってしまった女子の新体操ではあまり見られないものだ。
●社会人~ジュニアのトップ選手たちの個性がぶつかり合う
11月18~20日に、 千葉の幕張メッセで開かれる「第64回全日本新体操選手権大会」の個人競技には、優勝候補の筆頭として、昨年度チャンピオン・北村将嗣 (花園大学RG)が社会人として初めて出場する。 彼の演技は、音楽と体の動き、さらに手具のきが見事にマッチしている。 意外性のある操作をしながら、独特な体の使い方で、音を拾うように踊る彼の演技は多くの後輩たちに影響を与えている。ほかにも社会人で出場している木村功(花園大学 RG)と奥雄太 (KOKUSHIKAN RSG) は、 大学卒業後にはマッスルミュージカルにも出演していたことがある。舞台で磨きをかけたその演技は、スポーツでありながら、エンターテイメント性にあふれ、見る人を魅了する。まるで短編映画を見ているような気分にさせてくれる選手たちだ。
インカレチャンピオンの菅正樹(花園大学)には、社会人選手たちのような円熟味こそはないが、 若さあふれる弾けるような演技は文句なしにかっこいいと言えるだろう。野口勝弘 花園大学)の演技も、かなりドラマチックで観客の心をゆさぶるものがある。 福士祐介、椎野健人 (ともに書森大学)の静の演技は、観客の心にしみいるような美しさがあり、柴田翔平 (青森大学)の演技からは沸き立つような情熱が伝わってくる。 増田快雄( 青森大学)のクラブの演技は最高にクールだし、弓田速未(国士舘大学)の演技は、せつなくて胸がしめつけられるようだ。
高校生にも、 インターハイチャンピオンの臼井優華 (済美高校) や、 平野泰新 永井直也 (ともに青森山田高校〉のような、実力派が増えている。 彼らも技術だけでなく、それぞれに個性があり、それが魅力となっている選手たちだ。
●フロアマットのアーティストに注目!
初めて男子新体操を見る人なら、くるくる飛び跳ねるタンブリングだけでも超人のように見え、手具さばきはマジシャンのように見えるだろう。しかし、そういう「すごさ」だけなら、体操の内村航平選手にはとうてい及ばないし、女子の新体操だってより高度な技もやっている。
ただ、「表現者」であるという一点において、 男子新体操は先んじている。 それは間違いない。だからこそ、シルク・ドゥ・ソレイユに採用されたり、YouTubeで爆発的人気をよんだりしているのだ。 ただ、「すごい」だけなら、そうはならない。
どうか、団体競技だけでなく、 男子新体操の個人技にも目を向けてほしいと思う。そこでは、フィギュアの高橋大や小塚崇彦にも負けないアーティストたちの競演が行われているのだから。
~映画「バクテン!!」公開まであと11日~
※映画公式サイトはこちら。 ⇒ https://bakuten-movie.com/
TEXT :Keiko SHIINA