新ルールが求めるもの②~NPO法人トゥインクルクラブ

日本国内の公式戦では、3月に開催される全国高校選抜から適用される「2022-2024ルール(以下、新ルール)」では、とにかく「音楽に合った動き、表現」が求められると言われている。

去年まで少々曲を犠牲にしてでも「技をどれだけ詰め込めるか」に終始しがちだった新体操にとってこれは大きな変革だ。

そして、今まで「技」を追求し続けてきた選手たち、指導者たち、がこのルールに対応していくのは、とても大変だと思う。

1月21~23日に行われたテレビ信州杯は、新ルール適用ではなかったので、演技にはそれほど大きな変化は見られなかったのだが、ジュニア選手やチャイルドの演技には、「新ルールを意識している?」と感じさせるものも少なくなかった。

若年層に関しては、今シーズンすぐに結果を求めるわけではないだけに、少し先を見た指導をされているんじゃないかと感じることができた。

とくに、テレビ信州杯がずっと継続して行っている「チャイルド団体(徒手団体)」は、手具を使用しないだけに、音楽がよく感じられる演技が多かった。チャイルド団体に関しては、国際ルールがどうであっても、その傾向は強いのだが、今年はよりそう感じられ、見ていてとても楽しかった。

なかでも、NPO法人トゥインクルクラブの演技は、最初から最後まであらゆる音に動きを合わせてきていて本当に気持ちのいい演技だった。

私は写真はプロではないので、あまり上手には撮れない。ただ、技術は拙いなりに、「あ、いいな」と思う瞬間には必死にシャッターを切っている。

それは、もちろん目で見て「ここ!」と思う瞬間に切っているのだが、このトゥインクルクラブの演技は、シャッターを切る音が音楽にシンクロしていたのだ。つまり、動きで「ここ」と思うところには、必ず音にもアクセントがあったということだ。

面白くなって、演技後半は、「目で見て撮る」というよりも、音楽に合わせてシャッターを切ってみた。

それでも撮れる演技だったのだ。

もちろん、競技の上ではさまざまな評価ポイントがあるので、全てがトップレベルだったわけではないと思う。

チャイルド団体で、このチームは10位だった。

それでも。

これだけ音楽に忠実に合わせて動くことを小学生のときに経験している選手たちには、この先の可能性をおおいに感じた。

この先は、手具をもつようになり、徒手とは段違いの難しさを感じることにはなる思うが、それでも、「音楽にぴたりと合って踊ること」の気持ちよさを幼いころに体感できていることは彼女たちの大きな強みになると思うのだ。

いつ、どんな時代でどんなルールのときでも、「踊り感あふれる、表現力を感じさせる演技」をする選手はいる。

たとえ点数には反映しなくても。

そういう選手たちからは、「(難度や技が)ちゃんとできるようになったら表現もしよう」では、できるようにならないという言葉が出ることが多い。うまくできてもできなくても、「表現する気持ち」は持ち続けながら完成度を上げていく。それはひとつの在り方だと思う。

もちろん、演技の完成度を上げていく道のりは人それぞれだ。向き不向きもある。

とくに昨年までの技の数の多い演技内容では、まずは技術を磨いてから表現に、という優先順位になっていた選手も多かったし、はじめは「技メイン」に見えていた選手が、ぐっと化けて見せてくれたりもした。それはそれで素晴らしい進化だったと思う。

が、どうもこれからのルールでは違ってくるのではないかと感じている。

とくにまだ先が長いチャイルドやジュニアの選手は、やはり「まずは踊る、まずは表現すること」を優先したほうがよいのではないか。

そんな風に感じるのだ。実際の大会となり、採点されるようになったときに、新ルールが求めているものがどこまでしっかり反映されるかはまだ未知数だが、少なくとも額面とおりにルールを受け止めるなら、今後は、「音楽を大切にしない演技」は評価されなくなるはずなのだ。

そうなってくると、まずは難度や手具操作だとばかりに「音楽聴こえてる?」と思うような演技をしていた選手に、「技術が上がってきたから表現も力入れよう。音楽に合わせて動こう!」と求めても無理があると思うのだ。

そして、ここ2年は、練習にも制限があったり、大会の中止も多く、新体操を続けるモチベーションを維持することも難しくなってきていたチャイルドやジュニア世代の選手たちに「新体操は楽しい!」と思ってもらえる可能性が上がる。

それが新ルールではないかと、私は期待している。

TEXT & PHOTO:Keiko SHIINA