2024かささぎ杯男子団体1部「スーパージュニア対決」
10月13~14日、熊本県の芦北町で開催された2024かささぎ杯(男子)は、凄まじい試合だった。
とくに2日目に行われた団体1部は、まさに「全国トップレベルジュニアの競演」となり、全日本ジュニア前哨戦と呼ぶにふさわしい熱戦だった。
団体1部に出場したのは11チーム。その中の上位5チームが全日本ジュニアへの出場権を得ることができるが、なにしろ、この11チームの中には、昨年の全日本ジュニア優勝の神埼ジュニア、2位の芦北ジュニア、3位の佐賀ジュニアがいる。そして、それらのチームはほぼ昨年とメンバーが変わっていないという充実ぶりだ。
順当にいけば、この3チームが上位に来る可能性が高く、8チームで残り2枠を争うことになるが、今年は宮崎勢の進境が著しく、公式練習を見ていても、どのチームも徒手が磨かれてきていることが感じられた。宮崎からは小林中学校、NORTH connection RG、えびの新体操クラブ、小林新体操クラブの4チームが出場しており、どこも侮れない。
さらに、禁断ノ華実も、前日の個人に出場していた4人がそのまま団体メンバーに入っており、3人は身長も高く見栄えのするチーム。実施力の高さには定評のある鹿実のジュニアであることを考えると、ここも怖い存在だった。
結果、試技順1番だった禁断ノ華実は、あの名作「鬼滅の刃」を、じつに丁寧に踊り上げ、実施減点も最小限に抑え10.600。
小林中学校は、上半身の動きのキレのよさ、美しさが際立つ演技で、8.900。
NORTH connection RGは、タンブリング中の空中姿勢、着地の収めの美しさが目立ち、柔らかさとシャープさが同居する非常によい動きを見せ、11.300。ここまでの3チームには大きなミスもなく、序盤戦は締まった試合となった。
えびの新体操クラブも、高い飛ばしを見せる組みが2回入るアグレッシブな演技で、タンブリング、徒手ともに力強く、間違いなく全国レベルと思わせる演技だったが、選手の怪我で4人での演技となってしまい、8.450(ー1.500があってもこの得点)。とても悔しかったと思うが、次につながる演技だったと思う。
神埼RGは、バランス、倒立ともに少し危ないところはあったが、元気いっぱい、迫力いっぱいの神埼らしい演技で9.150。
小林新体操クラブは、倒立が少し短くなってしまった選手が複数いたが、バランスはどこよりも長くしっかりと止まって見せ、7.600。
そして、TOP3の一角を担うと目されるJKA芦北ジュニア新体操クラブが登場する。今回は地元である芦北町での開催でもあり、会場の声援はひときわ大きくなる中、全日本ジュニア2位になった昨年同様、荘厳な雰囲気の曲で、後ろ脚持ちバランスをした選手が高く掲げられる組みから演技スタート。倒立で少し危ないところがあったが、タンブリングの力は、そこまで登場してきたチームよりも一段上と思わせるものがあり、地力を見せつけ13.350。構成7,250は、やはりそれまでに出てきたチームとは一枚役者が上、ということだろう。
別府RGみやびは、見るからにまだ小さい選手が多く(それでも小4以上ではあるが)、マットのある体育館での練習をなかなか積めない環境とのことだったが、曲は2019井原高校の団体のもので、高い志、意欲は伝わってきた。
ここまで、ほとんどのチームに大きなミスが出ず、予想以上にハイレベルな大会となっていたが、試技順9番の水俣ジュニア新体操クラブに魔物が襲いかかる。序盤の倒立で一人が落ち、その影響もあったのか、全体的にばらつきの目立つ、実施減点が多そうな演技になってしまい、8.700。昨年は全日本ジュニアにも出場しているチームだが、今回は涙をのんだ。
この時点で、暫定1位が芦北ジュニア、2位にNORTH connection RG、3位が禁断ノ華実。そして、おそらく、上に飛び込んでくるだろう2チームが「真打登場」とばかりにフロアに向かう。会場の緊張感も高まる中、まず佐賀ジュニア新体操クラブが登場する。
小学生のころから、全日本ジュニアにも出場し、周囲の度肝を抜く演技を見せてきた佐賀ジュニアの選手たちは、かなり大きくなった。それだけに、ひとつひとつの技の見栄えが増し、迫力も増した。が、恐ろしいことにこのチームには中3がいない。まだ中1と中2だけのメンバーなのだ。
それでも、タンブリング、徒手ともにまさにスーパージュニアという風格のある演技だった。
とくに遠くで空気をつかみ、それを思い切り振り回すような体回旋は、高校生でもなかなかこのレベルでやっているところはない、と思う凄まじさだった。
身長が伸びた分、ぐっとスリムになり、動きのシャープさは際立つようになった。
それでいて、タンブリングになると、重量級とも思える迫力があり、会場の床が揺れるほどだ。
組みの高さもあり、演技の独創性もあった。
佐賀ジュニアのチームTシャツには「執念」という文字がプリントされているが、まさにそれ。「執念」が伝わってくるような、ジュニアなのに熱さと重さを感じさせる演技には、大きなミスはなかった。
バランスではわずかに弾んでしまったように見えた。
また、なにしろ運動量の多い演技なので、後半になるにつれ、やや実施に粗さが見えたようにも思う。
そこが実施に響いたのか、構成は7.675が出たが、実施が6.500にとどまり、14.175。
しかし、実施の減点はまだ埋めていける可能性がある。
つまり、佐賀ジュニアは、まだまだのびしろがあるということだ。
引きどころはあったとは思うが、それでも今回の佐賀ジュニアの演技は、「優勝です」と言われても納得できるものだったと思う。
おそらくたいていの大会でならば、ぶっちぎりでの優勝もできるに違いない。
だが、ここまでの演技をしても「優勝できるかはわからない」と思わざるを得ないのが、九州の怖さだ。
この凄まじい佐賀ジュニアの演技の興奮冷めやらぬ中で、この大会のトリにして、昨年の全日本ジュニアチャンピオンの神埼ジュニア新体操クラブが登場してきた。
出場チームの中でももっとも身長差が大きいのではないかと感じる凸凹チームだ。
上は中3から下は小学生。これだけの体格差があれば、同調性を見せるのはかなり困難だろうと思うが、神埼の演技は、この身長差を自分たちの武器に昇華していた。
大きな選手がいて、とびぬけて小さな選手がいる。だからこそできる技や隊形、また、だからこそ醸し出せるドラマ性のある作品を神埼ジュニアは演じた。
もちろん、技術も高い。タンブリングのスピードやキレの良さ、神埼バランスと言われる脚を保持して高く上げるバランスのフォームも美しく、止まりも万全だった。ジュニアでは短くなりがちな鹿倒立もしっかりと見せ、形も美しかった。
この大会では上位のほとんどのチームに大きなミスはなく、ハイレベルな大会だった。
が、神埼ジュニアの演技は、さらに高い精度でほぼ綻びがなかった。
結果、構成8.100、実施7.000の15.100での圧巻の優勝を成し遂げた。
この圧倒的な得点だけを見れば、演技を見たわけではない多くの人は、「神埼だからタンブリングが強くて、ガツガツした演技で押してきたんだろうな」と思うかもしれない。
たしかに、神埼ジュニアといえば、そういう演技で勝ってきた時期もあった。
だが、このチームがやろうとしていることは、少し違う。
今までの神埼ジュニアとは毛色が違う、と私は感じた。
タンブリングや徒手の基本技術のレベルの高さには、神埼ならではのものがある。
が、彼らの強みはそこではない。演技で「見せたいもの」を技術以外の部分でもっている、そんなチームだと思う。
彼らの演技からは「物語」が伝わってくる。
タンブリング強い、徒手がうまい、組みが面白い、それもこれもすべてこの「物語」に必要な要素だから、「物語」を描き出すためには技術の部分で、見ている人を不安にさせたり、ひっかかりを作ってはいけない、だから技術を一定以上の高い水準まで引き上げてきた。そして、今はさらに、その上で彼らはフロア上に「物語」を描き出している。
「表現力」
言ってしまえばそういうことだと思うが、その部分が抜きん出ている。
それがこのチームの強さだ。こういう力をもったチームはなかなかいない。
高校生でも、大学生でも。勝負にこだわれば、犠牲にしてしまいがちな部分だからだ。
しかし、神埼ジュニアは、そこにこだわって、このジュニア戦国時代を勝ち抜こうとしている。
9月に行われた男子クラブ選手権にも神埼ジュニアは出場し、ジュニア部門で優勝しているが、そのときの演技も今回の演技と同じものだった。
だが、あのときは、「ジュニアなのに凄い!」とは誰もが思っただろうが、おそらく今回の演技の域には達していなかったと思う。
1か月でここまで上げてきた神埼ジュニアの仕上げ力にも恐れ入るが、全日本ジュニアまではあと2か月ある。
果たして、そこで神埼ジュニアがどんな演技を見せてくれるのか。楽しみでしかない。