フェアリー史上最高に応援したくなるフェアリーJAPAN、WCソフィアに登場!

今週末(4/12~14)、ブルガリアで行われるWCソフィア大会に、フェアリーJAPANが出場する。

パリ五輪の最終予選にあたるアジアシニア新体操選手権大会を5月2~4日に控えたフェアリーにとってはこのソフィア大会と、翌週に行わるWCバクー大会が最終調整であり、またアジアシニアに向けて「日本は強い!」とアピールする最後のチャンスとも言える。

昨年の世界選手権で団体総合13位に終わり、五輪の出場権を得ることができていない日本は、2024年になってから五輪出場権獲得のために、「フープ×5」の作品を変更。一方で「リボン&ボール」は昨年までの作品の精度をより上げていくという戦略をとった。

五輪シーズンの今年、2種目とも新しい作品にしてくる国も少なくないが、まだ出場権を得られていない日本は、世界選手権でも種目別決勝6位となっている「リボン&ボール」には手をつけず、団体総合予選13位で総合順位を下げる原因となってしまった「フープ×5」を刷新することに注力したのだ。

パリ五輪に向けたいわば勝負作であるこの「フープ×5」は、2010年から東京五輪までの10年間にわたって続いてきたロシア門下生としてのフェアリーJAPANからの脱却を強く打ち出したものとなった。

「ソーラン節」を前面に出し、振付にも和のテイストが強く押し出され、先日発表された衣装もガッツリ「着物」を意識したものになっている。日本人は日本人らしく! と主張しているような作品だ。一歩間違えれば泥臭くなってしまいかねない選択のようにも思うが、今のフェアリーJAPANにはこの作品はとてもよく似合っている。

なぜなら、今のフェアリーたちは、日本代表団体が「フェアリーJAPAN」と呼ばれるようになって以来最高に泥臭いから。

 

日本の団体強化が選抜団体方式になったのは2006年からだ。2005年の世界選手権に出場したチームも、複数のチームから集められた選手たちによるものだったが、このときのメンバーはその時点ですでに日本トップレベルの実績をもった選手たちだった。このときのチームが、準備期間わずか半年で世界選手権で団体種目別リボン6位という結果を残したことによって、「選抜団体方式」が本格的に導入されることとなり、2005年12月に初のトライアウト開催。2006年から通年合宿での強化が始まったのだ。

以来、歴代のフェアリーたちも、そのときどきに大きなプレッシャーと闘ってきたことは知っている。フェアリーに選ばれただけで輝かしい栄光が約束されていたわけではないこともわかっているつもりだ。

ただ、それでも。とくに2010年にロシアでの強化が始まってからは、ロシアという大きな力が背中を押しているという心強さがあったのも事実だと思う。大会に向けて、ミスを少なく、精度の高い演技を仕上げていくことは大前提として、自分たちなりのベストパフォーマンスができたとしてもそれが果たして評価されるのかどうか? 新体操はそこがもっとも難しい部分であり、ややブラックボックスな部分でもある。それが、当時、新体操最強国であったロシアが強化に携わっている以上、「間違っているはずはない」と突き進むことができたはずだ。

もちろん、日本の指導陣(強化本部)も最大限の尽力をされたこともわかる。ロシアに任せた以上、我慢に我慢を重ねていた面もあるだろうことも想像できる。それでも、「ロシアがついている」ことで得たものも大きかった。ロシア育ちになってからのフェアリーJAPANは、2020年に開催されるはずだった東京五輪に向けて、着実に力をつけ、そしてその力をきちんと評価されるチームになっていった。世界選手権からもメダルを「じゃらじゃら下げて」凱旋することも珍しくなくなっていた。

が。

2020年からのコロナ禍。東京五輪の延期。海外との行き来が困難になり、さらに2022年になるとロシアのウクライナ侵攻もあり、日本の新体操は、ロシア頼みからは脱せざるを得なくなった。

そして、2021年の世界選手権(北九州開催)でこそ日本は団体総合4位、種目別では両種目とも銅メダル獲得したが、その後、長いトンネルに入っていく。

世界選手権では、2022年は団体総合8位(種目別フープ×5は5位)、2023年は団体総合13位(種目別リボン&ボールは6位)と東京五輪前のような成果はなかなか出なかった。とくに2種目をミスなく揃えることに苦労してきた。

そして迎えた2024年。

勝負を懸ける「フープ×5」の新しい作品は、1月に長野で行われたテレビ信州杯のエキシビションとして初披露された。

このときは作品が完成してまだ日も浅く、ミスはあった。「ソーラン節」という思い切った選曲の良さもまだそこまで伝わってこなかった。ただ、「これはもしかして化ける作品なのでは」という予感はあった。今のフェアリーの選手たちのもつ雰囲気とはよく合った作品だとは感じたのだ。

その後も、国内のいくつかの大会でのエキシビションを重ね、2月23日には、大阪府泉佐野市で公開練習を行った。3月から海外での転戦が始まるため、国内では最後の公開練習になるだろうと聞いて、観に行った。

アップから始まり、フレーズ練習、通し練習と、公開演技まで含めると2時間半近くだったろうか。フェアリーJAPANは、この日、「フープ×5」「リボン&ボール」の2種目とも、惜しみなく練習も演技も見せてくれた。

そして、この日の練習を見ている限り、「リボン&ボール」は、非常に完成度が高く、安定感があった。リボンという団体では難しい手具でも、操作がとても正確でリボンの軌跡までしっかりコントロールできていることに感心した。ラストの4本投げも、少々狂いが出ても対応できる熟練度も感じられ、昨年から演技を変えずにやり続けて積み重ねが生きていると感じられた。その分、練習も比較的サクサクと進み、その分、「フープ×5」のほうに時間を割いていた。

この時点で、1月に長野で見たときよりはかなり作品としてまとまりと迫力は増しており、「化けるのでは」という予感は確信に変わった。が、いかんせんまだ安定感に欠けていた。とくに足投げなど難易度の高い交換が多く、少しの狂いが大きな綻びとなってしまう。そんな怖さはまだ感じられる状態だったように思う。

それでも。ステップなど、曲を表現する部分では、「日本らしさ」「このチームの良さ」が非常によく伝わるようになってきており、あとは完成度を上げるだけ! というところまでは到達しているように思えた。この時点ではまだ海外の大会でどう評価されるかは未知数だったが、ミスを最小限に抑えればおそらく、高い評価を得られるのではないかと思う演技だった。

 

果たして3月2~3日に開催されたF ellbach-shmiden杯(ドイツ)では、フープ×5で34.90、リボン&ボールdせ31.90を獲得し、優勝。

dこの大会では実施もかなりよく、懸案だったフープ×5の得点は、爆上がりした。

これで自信を得たかと思ったが、3月22~24日のWCパラフィオリア大会(ギリシア)ではフープ×5で32.350、リボン&ボールが32.350で団体総合9位にとどまる。

しかし、3月30~31日のティエグランプリ(フランス)では、フープ×5では35.00、リボン&ボール28.850で団体総合5位。両種目で決勝進出を果たし、フープ×5では35.450で銀メダルを獲得した。大会によって出来の差はまだあるものの、「フープ×5」に関しては、芸術点(A)は、ほぼ8点にのっており、トップレベルの国と並べても遜色がない。難度点(D)もティエの決勝では20点にのった。日本色を強く出した「ソーラン節」に懸けた戦略は成功したと言ってよいだろう。あとは実施点(E)をどこまで上げられるか。

すでに故障はほとんどの選手が抱えているだろうことを思うと、アジアシニアまでのコンディション調整に細心の注意を払いながら、練習を積み重ね、実施に磨きをかけていく。それだけだと思う。「この作品で評価してもらえるのだろうか?」という迷いはもうもつ必要がないのだから。

明日からのWCソフィア大会(ブルガリア)、翌週のWCバクー大会(アゼルバイジャン)。

最終予選前の重要な試合であることは間違いないが、重要だからこそ、最後の最後には開き直って「やったるぜ!」と明るく立ち向かってほしいと思う。

 

もちろん、良い結果を祈っている。パリ五輪にも出場してほしいと願っている。

だが、仮に思うような結果に恵まれなかったとしても、2022年以降、フェアリーJAPANがもがき苦しみながら進んできた道は、この先の日本の新体操に希望を与えてくれている。東京五輪までの数年間とはいろんなことが大きく変わっても、「必ずパリ五輪へ!」と挑み続けてきた。あきらめずにしがみついてきた。フェアリーたちのそんな姿を見られたことは本当に嬉しかった。

日本全国の新体操をやっているジュニアたち、高校生、大学生、みんなたいていそうだから。

上手くいかないことのほうが多くて、思うような結果にはならなくて。それでもあきらめられずにしがみついている。日本の新体操選手のほとんどはそんな人たちなのだから、その代表であるフェアリーJAPANは、泥臭くかっこ悪くてこそみんなの代表にふさわしいと思う。そんないばらの道を乗り越えて、パリ五輪の切符をつかむことができたならば、過去最高に心から祝福できるし、みんな勇気をもらえると思う。

 

「フープ×5」では、荒波にも負けない強いフェアリーの魂を!

そして、「リボン&ボール」では、変調の多い曲で、2020年から今までにフェアリーが歩んできた紆余曲折を描き切ってほしい。新しい仲間が入り、希望に満ちて歩み始めたとたんに暗転し、苦しみ、見えない敵と闘う。主将の鈴木歩佳が、強いエネルギーでみんなを鼓舞し、引っ張りみんながだんだんひとつになっていく。そして、最後には、暗かった空が晴れ渡り、虹がかかる。

鈴木と2人、リオ五輪前からフェアリーに在籍している竹中七海が鈴木を支え、2021年世界選手権で見事な世選デビューを飾った稲木李菜子には、チームのピンチに発揮される高い対応力があり、当時チーム最年少ながらコロナ禍の苦しい時期を共に過ごしてきた生野風花もついにめぐってきた舞台にがむしゃらにぶつかっていく。そして、個人競技でも国内有数の煌めきを見せていた田口久乃、まだ高校2年生になったばかりとは思えない落ち着きと表現力のある西本愛美。この6人に加え、泉佐野での公開練習では、現在は控えに回っている今岡里奈、中村知花が入っての演技披露もあり、いつでも交代できる準備ができていることも伺えた。能力は決して低くない。東京五輪やリオ五輪のときのメンバーと比べても、身体能力、器用性、表現力、新体操の進化に伴ってどの力も高いと感じる選手たちだ。

それでも、一般の人にとってわかりやすい結果「五輪出場」が果たせなければ、今のフェアリーは力がないなどと言われてしまう。

ロシアの後ろ盾もなく、おそらく強化にかける予算も東京五輪前とは雲泥の差に違いない。それでも、結果が伴わなければ、それが選手の能力に負うものだと思ってしまう人もいる。

フェアリーJAPANは、8人で力を合わせてこの苦境を乗り越えようとしているのだ。

 

泉佐野での公開練習で「リボン&ボール」の通しを見たときに、ああ、本当にこの作品は今の彼女たちだから演じられる作品だ。今の彼女たちだから伝わってくるものがある、と感じ、涙が出た。海外の大会でも、それはきっと伝わる。

「だてに苦労はしてきてない」

今までになめてきた苦杯、辛酸。そのすべてが今のフェアリーJAPANの財産だ。

「五輪に出られるかどうか」は、まだわからない。可能性もあるといえばあるが、厳しいといえば厳しい。

そんなギリギリのところで、必死にあがいている。そんな選手たちだから、最終予選までのあと3週間ちょっと。

過去最高に力を込めて、フェアリーJAPANを応援したい。

※WCソフィア大会の情報は ⇒ https://www.jpn-gym.or.jp/rhythmic/event/36642/

※WCバクー大会の情報は ⇒ https://www.jpn-gym.or.jp/rhythmic/event/36645/

※アジアシニア新体操体操競技会の情報は ⇒ https://www.jpn-gym.or.jp/rhythmic/event/36770/

※Facebookに掲載されていたティエグランプリでのフェアリーJAPAN「フープ×5」 

https://www.instagram.com/reel/C5QeoDet4aQ/?igsh=MTA3MDNpN283bGV2dg==