映画「バクテン!!」公開へのカウントダウン企画⑨~2011青森インターハイ

男子新体操で熱く燃えた!

(「社会新報」2011年8月17日掲載)



 2011年7月31日~ 8月 1日の2日間にわたり、 全国高校総体では新体操競技が行なわれた。 今年の高校総体は、東日本大震災の被害が大きかった北東北が開催地だったため、震災直後は開催も危ぶまれたが、 開催地の甚大な努力によって無事開かれた。

地元・青森山田、 優勝ならず
井原高校が優勝! (男子団体競技)
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 東北は 「北の男子新体操王国」と言われ、青森、岩手には全国で優勝を争う有力校がある。 今大会は青森開催だったため、 青森県の 「青森山田高校」に、 地元優勝の期待が大きくかかっていた。 青森山田は、5月に東京で行なわれた 「男子新体操団体選手権」 でも優勝しており、 インターハイでも優勝候補の本命と言われていた。
 しかし、 参加24チーム中9番目に登場した県立井原高校 (岡山県) が、他の追随を許さぬ圧倒的な美しさとスケール感のある新体操でほぼノーミスの演技を見せ、優勝ラインと言われる19点を超える19 125をマーク。 出番が後半に固まっている他の有力校に十分なプレッシャーをかける演技だった。 その後、 16番目に登場した昨年度優勝校 神崎清明高校 (佐賀県)も、迫力ある組技を駆使したすばらしい演技を見せるが19・000 とわずかに及ばす。
 青森山田高校は、23番目に登場。このころには、会場となったマエダアリーナの広い観客席もほぼ満席になっていた。 そして青森山田の登場で会場は一種異様な空気に包まれた。 期待に満ちた静寂の中、津軽三味線の音が響きわたり、演技がスタートした。冒頭の人を投げ上げる技は成功し歓声が上がったが、 タンブリング (バック転などの転回技)の着地や倒立でミスが出てしまう。男子新体操の流れを変えたとも言われるストーリー性のある美しい動きの「青森山田の新体操」の真骨頂は見せられたが、ミスはミス。19100となり、 井原高校の逃げ切りを許した。


 

競技終了後、 荒川栄監督 (青森山田高校)は、 「地元の大応援にかつてない緊張が私にもあり、それが選手たちに伝わってしまった。 本番でノーミスの演技をさせることができなかったのは私の責任。 選手たちはよくやったと思う」 と敗戦の弁。一方、 優勝した長田京大監督 (井原高校) は、 「岡山からバスで移動してきたので、途中で被災地に立ち寄って、 選手たちと黙とうをささげてきた。 震災で大変な被害を受けた東北の人たちに感動してもらいたい、 そのために演技するんだという気持ちを確認して、 青森に入った」 と語った。その結果、 「青森に来てからは、とにかく自分たちの最高のパフォーマンスをしようという気持ちに集中できて、今までで一番いい演技ができた」(細羽勇貴キャプテン) と言う。 井原の演技は、その美しさには定評があるが、 今回の演技は、 美しいだけでなく雄大で力強かっ
た。
 新体操では早い出番は不利に働くことも少なくないのだが、今回の井原の演技にはその不利をものともせぬ強さがあった。あの力強さは、 東北への思い故だった。井原は、 「地元チームの優勝」 という東北の夢を破ったかもしれないが、演技で見る人に感動と勇気を与えたのだ。

 

【個人競技】

 個人競技では、優勝こそは臼井優華 (済美高校/岐阜県) に譲ったものの、 青森県勢が2位、3位を占める健闘を見せた。優勝した臼井、2位の平野泰新 (青森山田高校) は2年生、3位の永井直也 (青森山田高校) はまだ1年生と、 来年以降の対決も楽しみな若きメダリストたちが誕生した。 昨今の高校生の男子新体操は、 技術、 表現力とも数年前からは飛躍的に進歩しており、 一度見ればその魅力にはまる人も多い。 競技人口は1000人足らずと少ないが、日本が世界に誇れる 「芸術スポーツ」として、 男子新体操にはこれからも注目していきたい。


■ユニークさ健在!
鹿児島実業、4年ぶりに舞う

「お客さんの笑顔が見られたから、目標達成です!」


 動画サイトYouTube では100万ビューを超えるほどの人気を誇るのが、アニメソングや歌謡曲を使ったコミカルな演技が持ち味の鹿児島実業高校 (鹿児島県) だ。「南の新体操王国・九州」 だけにここ3年間、 インターハイに駒を進めることができなかったが、今年は九州大会で3位になり、4年ぶりのインターハイ出場を果たした。

 動画サイトで有名になってからは、インターハイで演技を見る機会がなかった鹿実がフロアに現れただけで、会場中が 「待ってました!」という雰囲気に包まれた。 メンバー-6人中 3人がこの春に新体操を始めたばかりの1年生という急造チームだが、 本番ではこの1年生たちがすばらしい頑張りを見せ、大きなミスなく演技を終了。 インターハイ出場が決まってから作ったという曲は、 マルモリダンスやKARA、AKB48など最新ヒット曲をふんだんに使い、その曲に合わせた絶妙な演技は、 会場の笑いを誘った。  

 演技終了後、 樋口靖久監督(鹿児島実業高校) は、「この大会でのうちのチームの目標は、東北の人たちに笑いと元気を! だった。 これだけの笑顔と拍手がもらえたので、達成できたと思う」 と語った。本番に向かう選手たちには、「自分が楽しまなきゃ、見ている人も楽しめないぞ」と声をかけたという樋口監督は、「演技が終わって選手たちも満足そうな顔で帰ってきたので、よかった」と笑顔になった。

 

~映画「バクテン!!」公開まであと23日~

※映画公式サイトはこちら。 ⇒ https://bakuten-movie.com/

TEXT:Keiko SHIINA