5年がかりの夢<下>~女子新体操岐阜国体チーム
5年がかりの夢<下>~女子新体操岐阜国体チーム
2007年に全日本ジュニアで団体優勝したころのNPOぎふはたしかに強かった。団体も個人も強かった。あのころのメンバーで国体を迎えられたなら、おそらく最強だったに違いない。
ところが、岐阜国体が開催される2012年は、その黄金世代は高校生ではない。そして、その下の世代は、黄金世代に比べると心身ともにやや弱い選手が多かったという。
たしかに最強だったころのNPOぎふの強さは、勝負強さにあった。果敢な演技をしているにもかかわらずミスがない。ミスしても最小限の傷でとどめる。そんな強さをもっていた。
ところが、2008年、2009年と「あのNPOぎふが?」と驚くようなくずれ方をして、全日本ジュニアの団体では惨敗を喫している。地元開催の国体という重責を担う選手達のこの勝負弱さは、指導陣には悩みの種ではなかったか。
しかし、それであきらめないのが、岐阜の強さであり、凄さだ。
指導陣も、選手達もあきらめることなく、ひたすら練習をし、自分達の体を、技を、精神を鍛えてきた。その結果がやっと出始めたのが2010年であり、2011年には開花した。
「このメンバーでは無理」
そんなあきらめ方を、岐阜はしなかった。
ひと世代前の選手に比べれば、もとの能力では劣っていたかもしれないが、その分、頑張ろうとする選手達を信じ、成長させることに懸けた。
そして、今、「地元国体の年に、このメンバーがいたなんて運がいい」と言われるほどのチームになった。
決して「運がいい」のではない。5年がかりで、作り上げたチームなのだ。
ダメでもダメでもあきらめず、「岐阜国体で輝くこと」を目指してしがみついてきたチームなのだ。
今年のインターハイでの演技は、本当にすばらしかった。
あれだけミスをするチームが多い中、おそらくどのチームよりも難しいだろう構成なのに、難なくこなす。交換の移動もなければ、リボンのたるみもない。フープのキャッチも正確! 選手たちの表情もいきいきとしていて、すばらしい演技だった。結果の4位には、首をかしげる人も多かった。それほど、インターハイでの岐阜の演技はすばらしかったのだ。
おそらく、4位という結果は悔しかっただろうと思う。納得もできなかったかもしれない。
しかし、1か月後のクラブ団体選手権で、その雪辱を見事に果たしたところが、このチームの強さだ。彼女達は、うまくいかないことがあったからとへたれるようなチームではないのだ。ダメでも、ダメでも立ち上がり、次に向かう。そうやって今までの5年間(いや、本当はもっと小さなころから)やってきたのだから。
インターハイの結果が思ったよりも下だったからって、それがなんだ!
次がある! きっと彼女たちはそう思ってやってきた。
そして、クラブ団体ではシニアの部初優勝を飾った。
あの黄金世代でさえできなかった優勝をついに成し遂げたのだ。
インターハイに比べると、ややあぶないところもある演技ではあったが、あぶなくても素早く巧みに対処できるのが彼女たちの強さだ。つまり、それだけ練習してきた、経験を積み上げてきた、ということだ。
岐阜清流国体。
彼女達が小学生のころから夢見てきた大舞台が、いよいよ始まる。
そこで見せてくれるだろう堂々の演技もきっとすばらしいに違いないが、それ以上に、そこにたどりつくまでにこのチームの選手たちと、それを支える人達が粘り強く歩んできた道のりこそが、本番の演技や結果がどうであれ、すばらしいと思う。
2012年10月1日。
岐阜国体チームの団体演技におおいに期待したい。
text by Keiko Shiina