鈴木菜巴(アリシエ兵庫/武庫川女子大学)、劇的展開で全日本選手権初優勝!

1日目のフープで落下場外があり、この種目では14位に沈んでしまった鈴木菜巴は、優勝争いにも出遅れた形になった。
しかし、2日目になると、まずリボンで限りなく高い精度で「マスク・オブ・ゾロ」を演じ切り、この種目ではトップとなる26.600をマークし、猛然と上位陣を追い上げる。
そして、クラブの最終演技者として登場した鈴木は、今年から「マトリックス」に変えたクラブの演技を、どこまでも力強く、アグレッシブに演じ、最後の投げも思い切りよく高く高く投げ上げた。「取って!」会場中が祈るような気持ちになった次の瞬間、この上ないくらいのピンポイントで鈴木はクラブをキャッチして演技終了。
直後に、「やったー!」と快哉が聞こえるようなガッツポーズが飛び出した。そして、笑顔が弾けた。


この時点では、まだ得点も表示されておらず、「勝った!」「優勝できた!」という確信はなかったはずだ。
そもそも、優勝しようとか逆転しようという気持ちもなかったのかもしれない。
ただ、1日目のフープでのミスは悔やんでも悔やみきれなかっただろうだけに、とにかく「悔いなくやり切る」それだけを目指しての後半2種目だったのではないか。
たくさんの技、リスキーな技がこれでもかと詰め込まれた鈴木の演技は、守りに入ったら縮こまる。
ことによっては、初日の出遅れがこの日の、果敢な2演技につながったともいえるのかもしれない。
優勝は限りなく難しい位置からの、一世一代のリボン、そしてクラブは、たとえ優勝には届かなかったとしても、多くの人に語り継がれるだろう名演技であり、鈴木自身も自分に花丸をあげられるものだったに違いない。
そして、このクラブの演技には今大会唯一の28点台・28.350が表示され、この瞬間、鈴木の全日本初優勝が決まった。
2位の喜田未来乃とは総合得点で0.350差。
男子同様、女子も最後まで優勝の行方のわからない熱い展開の全日本選手権だった。
長い間、日本のトップレベルで活躍し続け、優勝経験も豊富な鈴木だが、ここ一番で逃したものも少なくないはずだ。
そのときの悔しさ、後悔、そのすべてがここに結実したかのような最高の優勝だった。
おめでとう! あきらめないでくれて本当にありがとう!
PHOTO:Norikazu OKAMOTO