全日本選手権に向けて~シン東海の雄
今年は、本当に大会を見に行けていない。
自分自身の環境変化もあったが、「なんとか行こう!」と思っていたインターハイは天候にたたられ行くことを断念せざるを得なかった。
全日本選手権を迎えるまでに現地で見た大会は数えるほどしかない。これはおそらく20数年ぶりくらいだと思う。
そんな2025年だったが、金銭的にも時間的にもかなりの無理をして、なんとか現地観戦した試合が、7月21日に静岡県で行われた「東海国スポ」だ。選手には申し訳ないが、私にとってはありがたいことに、この大会は1日で個人と団体を行うというタイトなスケジュールだったため、宿泊なしの弾丸観戦が可能だったのだ。
そして、ジュニア選手を入れての「三重選抜」だった昨年から、ついに今年は高校生でチームを組めた三重県が、東海の王・岐阜県とのガチンコ勝負という見逃せない勝負。さらには、個人での「高校三冠」(選抜、ユース、インターハイ)に王手をかけている山本響士朗(高田高校)と、スーパー高校生・丸山一休(済美高校/OKB体操クラブ)の激突も見られるという。 これは行くしかない大会だった。
この大会では、岐阜県が三重県の前に試技を行ったのだが、個人種目での岐阜には、ミスが多かった。スティック、リングを任された2人は1年生で、おそらく緊張もあったのだろう。良い演技をしていたのだが、もったいないミスも出てしまった。岐阜県のトリとしてクラブで登場した丸山も、その流れにのまれたかのように演技中に手具を取りこぼす場面が2回、ラストも落下場外という本人にとっても悔やまれる演技になってしまった。
東海国スポでは、ミスの続いた岐阜県の直後が三重県の出番だった。
ミスが続いた後の少し騒然とした会場の空気を、三重県の一番手・佐川玄太がスティックの素晴らしいノーミス演技で一掃した。昨年もジュニアながら三重選抜に入っていた選手だが、まだ高校1年生。それでも、動きの幅が大きく、美しいつま先を見せながら、アグレッシブに動き、難しい内容も難しく感じさせないクリアな演技だった。
続く村田駿のリングも、クラッシック音楽の華麗な旋律にのせた水も漏らさぬ実施で、ノーミス。彼も高校1年生で、昨年の三重選抜メンバーだが、昨年は見るからにジュニアで、小柄ながらとても上手! 頑張ってる! と見ていて応援せずにはいられない選手だったが、今年は違った。もはや「応援する」のではなく「魅了される」、そんな選手に変貌していたのだ。佐川もそうだったが、この2人の1年生の伸びには凄まじいものがあった。
そこで感じたのは、今年、高田高校に入学したスーパールーキー・中澤陸の存在だった。昨年の全日本ジュニアチャンピオンである中澤は山梨県の実家を離れ、三重県の高田高校へ進学した。かなり思い切った挑戦だったと思う。もともとジュニアながらも国スポメンバーに入るだけの力をもっていた佐川、村田ではあるが、そこに最強ジュニアの中澤が加わったことによる刺激もおおいにあったのだろう、と素晴らしすぎる2人の演技を見て感じたのだ。そして、これなら中澤超えもあるのでは? と思ったところに、三重県の3番手としてその中澤がロープで登場。
ロープはいわずと知れた男子新体操の鬼門。この種目を苦手とする選手は多いのだが、1年生ながらその重責を中澤は引き受けていた。そして見せたのは、あまりにも強いメンタルに驚愕するしかないノーミス演技。あまりの落ち着きっぷりに、なかば呆れてしまう。そんな強さを見せ、ロープではなかなか出ない20点台をマークした。18点台の佐川、19.833の村田も素晴らしかったが、やはりそれを上回る得点を中澤はたたき出した。
三重県は、ここまで登場した3人がすべて1年生。そして全員ノーミスという破格の強さを見せつけてきた。
岐阜のミスもあり、個人種目での三重のトップが限りなく濃厚になってきたところに、「待ってました!」とばかりに山本響士朗が登場し、クラブで盤石の演技を見せる。いや、実際はラストの投げが少し遠く、一瞬ひやりとさせたが、それさえも難なくカバーしたことも含め「盤石」だった。このラスボス感たるや! 昨年の全日本選手権でも個人総合7位と、高校生最上位、多くの大学生を上回る位置につけている山本は、今年の全日本でも脅威になりそうだ。
東海国スポでは、個人種目での流れそのままに、団体でも三重県が岐阜県を上回る得点をあげ、個人、団体とも制す完全優勝を遂げた。岐阜県も団体では気迫のこもった素晴らしい演技を見せたが、わずかにミスがあり、団体でもほぼ完璧な実施だった三重県に0.4及ばなかった。
昨年の東海国スポで、ジュニア選手を含む三重県が岐阜県を破ったときには、本当に驚いたものだが、今年の三重県はまさに「東海の雄」と言える強さを見せつけた。
この恐るべき高校生たちの中から、村田、中澤、山本が全日本選手権の個人に出場する。
力もあるうえに、彼らには、まだ「怖いもの」がない。プレッシャーよりも、山本以外はその場に出られている喜びのほうが大きいに違いない。
そして、山本は、昨年の7位から、今年はさらに上を目指す覚悟はできているように感じる。
高校生でここまで全日本での上位が期待できるのは、おそらく2016年の安藤梨友(当時・済美高校/OKB体操クラブ)以来ではないか。
そんな彼らが大学生、社会人を相手にどこまでいけるのか。どこに食い込んでいくのか。
楽しみで仕方がない。
<写真提供:naoko>