「2年目の奇跡」~福岡市立次郎丸中学校
かささぎ杯は、団体優勝した佐賀ジュニアだけでなく、準優勝の神埼ジュニア新体操クラブや、他にもぜひ記事を書いておきたい!
と思う演技、チームが目白押しだったのだが、どうしてもいち早く多くの人に伝えたい! と思ったのが、この福岡市立次郎丸中学の演技だった。
今年、地元テレビなどにも取り上げられ、話題になった次郎丸中学の男子新体操部は、創部2年目ときわめて歴史の浅い部だ。
※その放送はこちら ⇒ https://www.youtube.com/watch?v=cOROUvVEuyQ
メンバーは、3年生が1人。あとはすべて2年生だというが、みんな中学に入ってから新体操を始めた。
つまりキャリアは、1年半。部の歴史=選手たちのキャリアというフレッシュすぎるチームが、かささぎ杯に初出場を果たしたのだ。
そもそも。今どきの公立中学に「部を新設できたこと」自体がひとつの奇跡だ。
学校の部活動は限りなく縮小の方向にあり、廃部はあっても「創部」はまずあり得ない。それでも、次郎丸中学の顧問である中村優太(福岡舞鶴高校→福岡大学卒)は、その奇跡を起こし、さらに団体が組めるだけの人数を確保し、維持してきた。
そして、九州の強豪がひしめくかささぎ杯にまで駒を進めてきた! それだけでも十分に奇跡だった。
正直、彼らの演技に対して大きな期待はしていなかった。
なにせ、創部2年目、キャリア1年半の選手たちなのだから。
ところが、このかささぎ杯で彼らが見せた演技は、その期待を大きく上回るものだったのだ。
もちろん、それほど難易度の高い技は入っていなかったと思う。
細かいミスもあったかもしれない。
が、それを補って余りある「いっぱしの男子新体操」を、彼らは見せてくれたのだ。
キャリアの浅い選手たちにありがちな、「けっこういろんなことできているけど、動きが洗練されていない」という部分がほとんどなかった。つま先や膝など、意識することが難しくキャリアの短さが露呈しがちな部分も、とても美しかったのだ。
小学生のころからやっていても、なかなかこうはいかない。
次郎丸中の選手たちは、その「線の美しさ」で、また奇跡を見せてくれた。
なぜこんなチームを、こんな短期間で育てることができたのだろう?
思い当たったのは、中村が今まで歩んできた道のりだ。
2013年に福岡大学を卒業してから、中村は、母校である福岡舞鶴中・高校で教鞭をとっていた。
もちろん、男子新体操の指導にもあたり、2017年には福岡舞鶴高校を初の団体でのインターハイ出場にも導いている。
あのころの福岡舞鶴も、中学あるいは高校から新体操を始める選手が多かった。
それでも着実に力をつけさせ、たとえレベルは高くないとしても、そのチームなりの最高点までもっていくことに中村は長けていた。
選手個々の能力を上げていくことに注力しつつ、「今あるもの」でできる最適解を見い出す。
経験豊富な選手はいなかった福岡舞鶴で彼のその力は磨かれてきた。
その後、公立中学の教師として新しい道に進んだが、やはり中村が「やってきたこと」は何ひとつ無駄にはなっていなかったのだ。
次郎丸中学の団体演技を見て、そう確信できた。
また、この日、次郎丸中学には海谷燎摩氏が帯同していた。中村にとっては大学の後輩にあたる海谷は、現在、外部指導者として次郎丸中学で指導にあたっているのだそうだ。2024年度の西日本インカレチャンピオンで、その演技の美しさで多くの人を魅了してきた海谷氏という強力な援軍もあったことを知り、このチームのキャリア不相応なまでの美しい体操に合点がいった。
今年のチームから抜けるのは3年生が1人だけという次郎丸中学。
1年後、彼らがどう化けてくれるのか。大きな楽しみがひとつ増えた。
TEXT &PHOTO:Keiko SHIINA