2025かささぎ杯男子個人優勝~内川史琉(神埼ジュニア新体操クラブ)
9月28日に行われた「2025かささぎ杯」の男子個人(リング・ロープの2種目)では、内川史琉(神埼ジュニア新体操クラブ)が優勝した。
昨年のかささぎ杯でも3位入賞している内川は、今大会のいわば大本命であり、その優勝には驚きはない。
が、「団体王国・九州」の多くの選手たちがそうであるように、翌日に団体競技を控えての個人競技に対して、十分な準備ができていたかといえば、決してそうではなかったのだろうと想像する。
それでも、内川は「さすが」の地力の高さと対応力で、2種目とも大きなミスなくまとめることができ、結果的には2位以下には大きな差をつけての完勝だった。
が、おそらく。
本人にとっては「大満足」の出来ではなかっただろうな、ということは透けて見えた。
徒手演技を見れば、その表現力には舌をまく、そんな選手だ。
個人演技をやる以上、その持ち前の表現力を存分に生かした演技をしたいだろうな、と思うし、できるポテンシャルはあると思う。
しかし、どうしても団体中心の練習になってしまうだろうし、中3となればチームリーダーとしての役割もある。
「個人の試合があるからその準備に時間をかけたい」という切実な思いはあっても、なかなか表には出しにくいのではないかと思う。
それは、なにも内川だけでなく、今大会の個人競技に出場していた選手たちの多くがそうだろう。
だから、正直に言えば、「ミスの多い試合」にはなってしまっていた。落下などのミスはなかったとしても、実施での引きどころはたくさんある、そんな演技が多かった。
でも、そのことを悔やんだり、恥じたりすることはない。
個人の練習を積めないことを不満に思う必要もない。
まだジュニアなのだから。
このまま新体操を続けていくのならば、時間はまだたっぷりある。
手具操作を伴っての演技の完成度を上げていくことはなかなか難しいかもしれないが、今はまだそれでいい。
内川の演技を見ていると、基礎的な徒手能力、タンブリング力などに揺らぎがない。
だから、難しいロープの扱いで少々乱れが出ても、大きなミスにつながらずに処理することができているのだ。
また、個人演技では「表現を磨く」というところまで突き詰める時間はなかったかもしれないが、それでも、そもそもの動きに宿っている表現力がある。
これらの力は、常勝・神埼ジュニアの団体メンバーとして、彼が積み上げてきたものだ。その力があるからこそ、本人としてはおそらく「不完全」と思っているかもしれない演技内容でも、優勝できるだけの評価を得られるのだ。
ジュニア選手は、男子でも女子でも、団体と個人を兼任している選手が多い。
そして、団体の強いチームの場合は、どうしても団体メインの練習になりがちだ。
「もっと個人の練習を積んで試合に臨みたかった」そう思っている選手は男子にも女子にも多いと思う。
だけど、団体を通して鍛えられる能力は、絶対に個人演技にも生きてくる。それは間違いないのだ。
個人に専念している(団体が組めず専念せざるを得ない選手も含む)選手のように個人演技の詰めた練習はできていなかったとしても、ジュニアはそれでいい。
今もっている力で、今できる演技を最大限にまとめた内川の優勝は、そういう意味であっぱれだった。
「不完全」でもここまでやれる! その力を見せつけることはできていたし、それこそが団体兼任の選手たちの強みなのだから。
TEXT & PHOTO:Keiko SHIINA