「エンターテイナー」（日ノ本学園集団演技）～2023坂出フェスティバル
先日紹介した「男子新体操の祭典OGF存続のためのクラウドファンディング」は、すでに目標額の60％まで支援額が到達していて、達成の可能性がおおいに高まっています。
とても喜ばしいことだと思います。男子新体操の関係者が、この10年余り力を注いできた「見せるスポーツ・魅せるスポーツ」としての男子新体操の認知が高まってきたことの成果だな、と感じます。
そして、この男子新体操の「鑑賞するスポーツ」としての発展ぶりを見ると、いつもちょっと悔しい気持ちになってしまいます。
その悔しさは、「新体操は女子だって凄いのに」という思いからきています。
女子は、東京女子体育大学、日本女子体育大学が古くから盛大な発表会を行っています。代々木第二体育館を満員にするあの発表会はまさに「エンターテインメント」と言えるものですし、「魅せる新体操」そのものです。
ただ、発表会という性格上、新体操関係者以外に広げていくのはなかなか難しい部分があります（コロナ以降、配信が増えたのでやや希望は見えてきていると思いますが）。
先週末も、熊本県で行われた「りんどうカップ」を見てきましたが、今のルールになってからの女子新体操の進化は本当に凄いと感じました。とくに「見せる、魅せる」という部分に関しては、「りんどうカップ」に出ていたジュニアさんたちでも、数年前のジュニアとは隔世の感がありました。
ルールにおける「芸術性」の比重が高まったことで、こんなにも「見せ方」「表現」への意識が高まるものなのか！ と感動しましたが、それを如実に示してくれたのが、昨年のインターハイ団体優勝校・日ノ本学園の「007」だったと思います。そして、その日ノ本学園が昨年末、いくつかの演技会で披露した集団演技がまた素晴らしかったのです。
レディーガガの曲にのせた、エネルギッシュかつノリのよいこの集団演技は、徒手での群舞の素晴らしさを見せつつ、ときには手具も使って個人技も見せてくれるじつに贅沢なつくりでした。
インターハイ優勝レベルの選手たちの身体能力で、手具をもたずに踊ればそれはそれは最高レベルのパフォーマンスを見せることができます。身体難度がハイレベルなだけでなく表情豊かに曲を表現し、まるで彼女たちが体で歌っているようでした。
それでいて、手具での見せ場もしっかり作ってあり、ダンスではなく「新体操だからこそ見せられる」作品になっていました。
こういうものは、新体操を知らない一般の観客にこそぜひ見てほしい！ と感じる作品であり演技でした。
幸い、彼女たちが出演していた演技会は、井原フェスティバル、花園大学演技会、坂出フェスティバルなど、普段は新体操には縁のなさそうな地域の方たちもたくさん見に来られていました。本来は男子新体操がメインの演技会でしたが、「たまたま」そこであの日ノ本学園の演技を見た人はきっと「女子の新体操もすごかった」という感想をもってくれたに違いありません。
この演技、なにが凄いって、「スプリングのきいた男子のフロア」でやっちゃってる！！！
ってことなんです。普段の競技では当たり前に入っているフェッテバランスもフェッテターンも、あのふかふかしたマットの上でやるのは並大抵の難しさではないと思います。それを難なくやってしまう、彼女たちの実施力の凄さ！
いつもとは勝手の違うフロアでの演技には、たしかに「やりにくさ」はあったそうですが、それさえも「いいトレーニングになるね」と彼女たちはとらえていたと聞きました。その気持ちの強さがまた凄い。
男子新体操のファンが多いであろう会場をもっとも沸かせたのは、この倒立歩行。
曲に合わせてかなり長い時間、全員が倒立歩行するのです。スプリングマットでの倒立の難しさは、練習を重ねてきたはずの本番で鹿倒立のミスが出てしまうことを見てもわかると思いますが、彼女たちの倒立歩行は3回の演技会を見た限り、ノーミスでした。
（井原フェスティバルだけは女子用マットでの演技でしたが）
もちろん、こういった素晴らしい集団演技を見せられるのは日ノ本学園だけではないと思います。
今の女子新体操は、過去20年くらいの中でもっとも「魅せられるルール」になっています。だからこそ、競技作品ではない集団演技では競技のとき以上にみんな「表現」に力が入っているのでしょう。
ある意味、「やりたいことができる」！ それが集団演技。そこで見る女子新体操は、男子新体操にも負けないくらい「鑑賞するスポーツ」としての魅力にあふれています。
男子の「OGF」のように、女子でも、学閥、派閥などを超えて「新体操」というスポーツのもつ素晴らしさを一般の人たちに伝えるイベントができないかな。
そんなことを妄想してしまいます。
そんなことを考えてしまうほど、日ノ本学園のこの作品は素晴らしかったし、見ていて楽しかったのです。
どう？ 女子の新体操もすごいでしょ？
そう胸を張りたくなりました。
