「やっぱり町田RG!」~2023全日本ジュニア女子団体優勝
諸事情あり、今年はかつてなく生観戦ができていない。
なので、生観戦したサンプル数はかなり少ないのだが、今回の全日本ジュニア女子団体で優勝した町田RGの演技を見たとき、「2023女子団体演技ベスト3」にこれは入るな、と確信した。
それくらい、隅から隅まで素晴らしい演技だった。
聞けば、5人中4人は、昨年の全日本ジュニアで惜しくも準優勝となったときのメンバーなのだそうだ。
昨年も町田RGの演技は素晴らしく、「限りなく優勝に近い準優勝」だった。そのわずかの差での準優勝という悔しさから、この1年間、彼女たちはずっと「優勝」を目指して、努力に努力を重ねてきた。
インタビューしたわけではないが、聞かなくてもわかる。
それくらい、今回の町田RGの団体演技は、「とてつもない練習量」「妥協のない練習」を感じさせるものだったのだ。
まず、音楽と動きの一致が、とてつもなかった。
曲の緩急と動きの緩急が完璧にシンクロし、曲の中でアクセント的にボーカルが入っているのだが、そのボーカルと動きの融合は見ていて本当に心地よかった。どうしたらこんな風に、音楽をそのまま動きに変換できるのだろう。
もちろん、振付もうまいのだとは思う。が、それだけでこうはならない
選手たちが、この曲を本当に「自分のモノ」にしているんだろうな、と思う。まるで自分が曲を奏で、歌っているかのように彼女たちは動き、表現していた。
突出していたのは表現力だけではない。
その技術の正確さもまたとてつもなかった。
演技序盤に入っている連係で、床の上を転がってきたボールを寝そべった選手が足の裏で蹴り上げるところがある。それも3回連続で。
これは、派手な技ではないが、どう見ても3回ミスらずにやるのはとても難しそうに見えた。しかし、それが本当に寸分の狂いもなく3回連続で行われ、キャッチする側もほぼ移動がないのを見たときに、この確実性を手に入れるために、どれほど練習したのだろうかと気が遠くなった。
その後、フェッテに入る前に、5人揃って床でボールを一度突くのだが、これがまたぞっとするほど5人が揃っていた。
床に落ちたボールが同じ高さとタイミングで5人の選手の手元に戻り、そこに狂いがないからこその完璧にシンクロしたフェッテターン。
それも、ばらつきがちな回り終わりも、完璧にコントロールされており、鳥肌モノだった。
そこからも曲に合わせた細かい動きでも、リスクや交換での投げ受けでも、その同調性は冴えわたった。
投げたボールの高さも同じ、キャッチするのも同時になるタイミングでボールが落ちてくる。
投げ受けを「落とさず、移動がなければOK」で練習していたら、こんな風にはならないはずだ。
揃えるべきところはとことん揃える。その執念にも似た練習を、彼女たちはずっとやってきたんだと思うと、1つ1つの技が尊く見えた。
あまりにも、すべてのことが練習でやってきた通りにコントロールされており、ミスの出る気配がなかった。
そして、その予想通り、町田RGは、この作品を完璧なノーミスで演じ切った。
今大会での町田RGは試技順5番とかなり出番が早かったが、「これを超えるのはかなり大変だ」と思わせる演技であり、26.800というジュニア離れした高得点をたたき出した。
結果、その後に登場した17チームはいずれもこの得点を超えることはできず、町田RGは1年前の雪辱を果たすことに成功した。
もちろん、嬉しかったに違いない。
しかし、おそらく優勝できたこと以上に、嬉しかっただろうと思うのは、「予定していた演技内容を1つも抜いたり変更したりせずにやりきれたこと」ではないかと思う。
ジュニアでも上位争いをするようなチームの演技構成だと、高度ゆえにミスも出やすい。得点に響くような大きなミスにならないために、本来なら手以外でキャッチするところを手で取る、視野外のキャッチを、視野外ではなく撮る、など臨機応変に変えることも団体選手にとっては能力のうちだ。
しかし、今回の町田RGの演技は、どう見てもすべてが、練習通り、予定通りに進んでいるように見えた。
これならば、「やり切った」と思える演技だったに違いない。
町田RGは、私が新体操を本格的に見始めた25年前、すでに強豪クラブだった。
あの頃の町田には、個人選手としても全日本ジュニアや全日本選手権に進むような選手がゴロゴロいた。
それだけ選手がいるのだから、当時から団体も強かった。が、全日本ジュニアでの優勝にはなかなか手が届かなかった。
それが、2017、2018年と連続して全日本ジュニアで団体準優勝となり、2019年にはついに団体初優勝。
そして、昨年がまた準優勝、今年は2度目の優勝だ。
一体、町田でなにが起きているのだろう。
失礼な言い方になるが、10年以上前の町田RGに比べたら、今の選手たちは、そこまで「ずば抜けた素質をもった選手たち」ではないように思う。ちょうど3年前、彼女たちがまだ駆け出しの選手だったころに基礎練習を見学したことがあるが、驚くほどの柔軟性をもった子はいなかった。みんな普通に苦労しながら柔軟をやっていた。
ただ、そのときも「正しい形で」とは繰り返し指導されていたことはとても印象に残っている。
持って生まれた素質が飛び抜けたものではなかったとしても、「正しい努力」を、あきらめずに長く続けていれば、こんな風になることができるんだ! むしろ「跳び抜けた素質」なんてないほうがひたむきに努力を重ねることができるのかもしれない。近年の町田RGの選手たちを見ているとそう思う。
「優勝」という結果だけでなく、その演技の素晴らしさ、心地よさで、町田RGはそんな希望を見せてくれた。
私が新体操に夢中になったのは、25年前に町田RGの選手たちの演技を見たからだった。
今では、町田以外にも素晴らしいクラブがあることも、素晴らしい選手がいることも十分わかっている、わかってはいるが、今回のような演技を見てしまうと、こう言わざるを得ない。
「やっぱり町田RGが好き!」
<写真提供:町田RG>