鈴木菜巴が止まらない!~2023全日本インカレ&全日本クラブ選手権優勝
きた、ついにきた!
全日本インカレ女子個人総合で優勝した鈴木菜巴(武庫川女子大学)は、まだ1年生。
ルーキーながらの優勝という快挙を成し遂げたが、この優勝はむしろ「来るべきものがやっと来た!」という印象だった。
鈴木は、小学生のころから全日本チャイルドなどでも活躍する有望な選手だった。
チャイルドでは、4年生のとき12位、6年生のときは2位になっている。
中学生になってからも、全日本ジュニアの常連となり、中学2年生で9位、中学3年で3位。
そして、高校生になると、全日本選手権にも駒を進め、高1で5位、高2で3位とまさに世代トップ選手というべき躍進ぶりだった。
しかし、高校2年生の3月。
優勝の最有力候補と目されていた全国高校選抜大会を直前で棄権。
かなりギリギリまで出場を目指していたと聞くが、それは叶わなかった。
しかし、この年のユースチャンピオンシップでは、見事初優勝を遂げ、その勢いのままインターハイも?
と思われたが、インターハイでは惜しくも準優勝に終わり、2022年の全日本選手権では5位。
今年のアジア競技大会やユニバーシティーゲームスなどでの代表入りも濃厚という位置につけていたが、2月に行われたコントロールシリーズ第1戦には出場できなかった。2月の時点では松葉杖が必要なほどの故障をしていたと聞き、「今年の代表入りは無理かな」と思ったものだ。
しかし、3月に行われたコントロールシリーズ第2戦には、なんとか間に合わせてきた。出場できるところまでもってきただけでも凄い! と思ったが、まだ万全ではない中でも、1~2戦通しての3種目ベストスコアで4位に入り、ユニバーシティーゲームズへの出場権を獲得したのだ。
幼い頃から、能力が高く、しっかりと結果も手に入れてきた選手であることは間違いないが、案外「ここ一番」のタイミングで怪我をしたり、あと一歩のところ、欲しかっただろうタイトルを逃したりしてきているのが鈴木だ。
だが、こうなってみると、その「ほんの少し足りなかった」という悔しい経験が、鈴木の向上心を培ってきたのではないかとも思う。
7月に開催されたユニバーシティーゲームズでは、松坂玲奈が個人総合3位でのメダル獲得という快挙を成し遂げたが、鈴木は松坂に次いでの4位入賞と、これも快挙だった。国内の大会ではなかなか破れなかった30点の壁を、このユニバで、鈴木は軽々と超え、フープでは31.700という高得点をマーク。松葉杖からスタートした2023年だったが、それさえもバネにして大きく飛躍を遂げたのだ。
全日本インカレの前の週には、全日本クラブ選手権にも出場し、シニアの部で優勝。このときもフープでは30.750と30点超えを果たしている。
そして迎えた全日本インカレでは、フープ、ボールともに30点超え。4種目合計114.250は、2位に13点差をつける圧巻の優勝だった。
鈴木が在籍する武庫川女子大学にとって全日本インカレ個人チャンピオンが出るのは初めてのこと。
また、西日本からのチャンピオンも初だ。
兵庫県のクラブチーム、高校で活躍してきた鈴木だが、依然として東高西低な大学の勢力図を考えると、西日本の大学への進学には不安もあったと思う。それでも、地元に残ることを鈴木は選択した。
「西日本でもやれる」ことを証明する。
そんな挑戦でもあったと思うが、1年目にしてそれを叶えてしまった。
思えば、鈴木はこうやって常に逆境にあっても負けない、ビハインドをはね返す選手だった。
小柄でもフロアでは大きく見えるように動く、小柄な分、スピード感では負けない!
怪我をして出られない試合があっても、その期間を必ず次に生かす!
そんな鈴木がまた一つ。「西日本では勝てない」という思い込みをぶっ飛ばしてくれた。
まだまだ得点も伸ばし続け、演技の魅力も増してきている鈴木菜巴。
彼女はまだティーンエイジャーだということがなんとも頼もしい。
次は、所属クラブから出場するイオンカップ(9/28~10/1)、そして全日本選手権(10/27~29)が控えている。
どこまでいけるのか? どんな演技を見せてくれるのか?
楽しみでしかない。
<写真提供:アリシエ兵庫>
※全日本インカレの映像は、以下で購入できます!