芦北高校、さらなる高みへ~九州ブロック大会、明日開幕!

ジュニアとしては紛れもなく全国トップレベルにいるJKA芦北ジュニア新体操クラブですが、卒業生の多くが進学する芦北高校は、全国トップレベルの争いにはなかなか食い込めずにいました。

それが、突然インターハイで4位となり、世間をあっと言わせたのが2021年。

豪雨災害で体育館のマットが泥にまみれたあの日からわずか1年で彼らはついに「全国のトップ争い」まで駆けのぼってきたのです。

じつは芦北高校は、2021年春に、それまで監督だった牛迫大樹氏が異動になり窮地に陥るところでした。

しかし、そこに現れたのが水俣高校から国士舘大学へと進学し、大学卒業後もシルク・ドゥ・ソレイユのパフォーマーとしても活躍していた経歴をもつ出来田和哉氏でした。新体操の指導の現場の歴は短い出来田氏は、その経験の短さをおおいに武器にして、「怖いもの知らず」の勝ちたい気持ちを選手たちに植え付けることに成功したように見えました。

2021年の芦北高校は、たしかに「これは全国でも上のほうなのでは」と思う演技を練習でもしていました。そして、インターハイではその力を十分に発揮する気持ちの強さもある演技で4位という結果をもぎとりました。

2022年の芦北高校にもおおいに期待が集まっていましたが、残念ながらインターハイ本番を6人で迎えることができず、5人編成での出場となってしまい、「あるいはメダル獲得も」という夢には届きませんでした。それでもこの年のチームも「これは6人揃っていたら優勝争いをしたのでは」と多くの人が認めるだけの演技をし、しっかりと爪痕は残しました。

 

そして、今年。

昨年の全日本ジュニアでも大活躍だった芦北ジュニアから新入生も入り、いよいよ芦北の時代か?

と思ったところで、出来田氏が異動になりました。この2年間、一段階高いレベルにチームを引き上げた出来田氏の功績を思うと、これは痛い。選手たちも不安になってはいないだろうかと案じていました。

が、近年、体操協会審判部でトップレベルの大会の審判を数多く務めてきた清本大介氏が監督となり、現場のコーチには江口和文氏が入ることになったと知り、「これはおもしろいことになるかも」と思いました。

水俣高校から福岡大学に進学し、卒業後には福岡大学で監督を務めていた経験もある江口氏のこだわりのある指導ぶりは、彼が福岡大学の監督だったころから際立っていました。そして、そのころ、一時期は団体も組めないほど凋落していた福岡大学は再び団体を組めるようになり、廣庭捷平という伝説の個人選手も育ったのでした。

男子新体操の古豪・水俣高校が最後に優勝した年(2002年)のキャプテンだった江口氏は、団体作品に対するこだわり、美意識をしっかりと持っています。近年は芦北ジュニアのコーチとして指導に携わっていたものの、表舞台にはあまり名前が出ていませんでしたが、今回の芦北高校の演技には、いい意味での「江口イズム」が感じられました。

強くて、美しい。そして、どこか儚い。

江口氏が率いていたころの福岡大学の団体にはそんな雰囲気がありました。

とくに2011年の西日本インカレ、2012年の全日本インカレの演技は、今も語り継がれるほどの名作でした。

もちろん、選手に恵まれた面もあるでしょうが、江口氏に彼らの力を引き出す力があったとも言えると思います。

2021~2022年に芦北高校を「勝負できるチーム」にした出来田氏は、水俣高校1年生のとき、江口氏と同じ団体でインターハイ優勝を経験しています。さらに言えば、現在の芦北高校の中心選手である芦北ジュニアを指導しているのは、水俣高校時代には江口氏の1年後輩だった山田康光氏です。

あのころの水俣高校の栄光を知っているOB達が、長い時間をかけて育ててきた選手たちが、今、芦北高校として全国の舞台に飛び立とうとしている、そんな風に感じます。

そして、その芦北高校の監督である清本氏が審判の視点を知りつくしていること。これはチームにとって大きな力になると思います。

清本氏は、水俣高校が2001年にインターハイで優勝したときの監督で、当時の優勝メンバーには江口氏もいました。あのときの師弟が今またタッグを組んで芦北高校を「さらなる上へ」と導こうとしているのです。

熊本県総体の前の週に開催された全日本男子団体選手権で、芦北高校は見事優勝し、10月の全日本選手権の出場権も獲得済ですが、この大会には神埼清明や井原、青森山田などが出ていなかったため、手放しでは喜んではいないでしょう。

全日本団体選手権で勝てたからこそ、

「インターハイで勝ちたい!」

その思いは強くなっているに違いない芦北高校だけに、まずはこの九州ブロック大会で、神埼清明に食らいつきたいところです。

昨年、みんなが「見たい!」と願った芦北高校の6人揃った演技を、明日、そしてインターハイで、さらにはジャパンでも。

見られることがまず嬉しいです。そして、先があるからこそ、九州大会では恐れることなく思い切りの良い演技をしてくれることを期待したいです。