2016全日本ジュニア直前企画①~JKA芦北ジュニア新体操クラブ

熊本県の芦北のジュニアクラブが九州で台頭してきた、と聞いたのは4年前だったろうか。

「JKA」という冠もなんのことかよくわからない謎のチームだったが、(のちにJはジャパン、Kは熊本、Aが芦北と判明)

ジュニアから育成しているクラブの少なかった九州、さらに一時期は落ち込んでいた熊本県に有望なジュニアチームが誕生!

と明るい話題となった。

芦北のジュニアクラブ自体は、もっと前から存在はしていたのだが、チームを組んで試合などに出るようになったのは、現在の中学3年生たちが最初の世代だ。

彼らは、小学生のころから、九州小学生大会で結果を残し、「熊本が強くなってきている!」と九州では知られる存在になっていた。

2014年には、初めての全日本ジュニアにも出場。

ほとんどの選手が中学1年生という若いチームにとっては、全日本の壁は厚く、18位に終わったが、その1年後、2015年にはひとまわり成長した演技を見せ、8位入賞を果たした。

かつては新体操強国であった熊本県の男子新体操にもう一度活況を! という熊本育ちの指導者たちの熱い思いは少しずつ実っていったのだった。

そのJKA芦北ジュニア新体操クラブをけん引してきたメンバーたちのうち5人が、今年は中学3年生になった。

全員が同じ進路ではないため、この5人でいっしょに試合に出るのは、今回の全日本ジュニアが最後になる。

小学1年生からずっといっしょにやってきた5人だと聞く。じつに9年間!

彼らはいっしょに成長してきた。そして、常に新体操がそばにあった。

 

彼らが小学6年生のときから指導にあたってきた江口和文監督に話を聞いてみた。

「去年までは、練習ではミスしても本番には強いメンバーだったが、心身の成長もあって、今年は本番でのミスが多くなった。

九州中体連でもかささぎ杯でもミスが出てしまい、思うような演技ができないでいる。

全日本ジュニアに向けて、調子は上がってきてはいるが、運動量の多い演技なのでミスが出てしまうと、大きなミスになりやすいのが不安材料。

それでも、9年間いっしょにやってきたこのチームの最後の試合なので、最後は自分たちの力を出しきれた! と思える演技ができることが大事だと思う。

やりきった~という思いで終わることができれば、それぞれの進路に向かっていけるし、どんな評価になっても受け入れることができると思う。

熊本地震による被害は、芦北はほとんどなかったが、震災後は学校方針で部活禁止の時期もあり、練習できない時期もあったが、

今回の使用曲は『王朝の復活』というタイトルなので、それにふさわしい演技を見せたい。」

練習中も江口は、選手たちに言っていた。

「ここで決めなん! というとこで決めきらんでどうすっとや?」

その口調は厳しかったが、それだけ、彼はこのチームに、全日本ジュニアで「最高の演技をさせたい」と思っているのだ。

 

18位⇒8位と、全日本ジュニアでの順位もきっちり上げてきているチームだ。

今年は表彰台、いや優勝も! という意気込みはもちろんある。

しかし、それはあくまでも自分たちの演技をしっかりとやりきってこそ、の話だ。

身体の成長にともなってより大きく見えるようになってきた動き、そして、力強さを増したタンブリング。

なによりも、長い年月をいっしょに過ごしてきたメンバーならではの抜群のチームワーク、一体感。

それらをあますところなく発揮し、ミスなく演技を通し切ることができれば。

このチームとしての最高成績は十分望めるはずだ。

力を出し切る! 彼らに必要なのはただそれだけ、だ。

 

TEXT & PHOTO:Keiko SHIINA