頑張れ! 東福岡高校男子新体操部!

SNSで「東福岡高校男子新体操部の廃部の撤廃を!」という署名活動の情報が回ってきた。
それを見て、もう13年も前のことになるが、東福岡高校に取材行ったことがあることを思い出した。

あのときも、決して恵まれた環境ではない中で、彼らは練習していた。
その後、何回か大会で演技を見る機会はあったが、おそらくあの頃と状況は変わっていないか、より悪くなっていたんだろうと思う。
だから、「廃部」という話も出てきているのだろうが。。。

東福岡高校の男子新体操部と言っても、「どこ?」という人も少なくないと思う。
これは2011年の記事であるが、東福岡高校の男子新体操部の様子がうかがえると思うので、再掲しておく。

この記事を書いた2011年に比べれば、男子新体操の注目度は何倍にもなっている。
しかし、東福岡高校のように今まであった部が廃部になるなど、実際にやる人が減ってしまえば、
男子新体操はあっという間にまた消滅の危機に瀕してしまうだろう。

ぜひ東福岡高校の男子新体操部には、頑張ってほしいと思う。


~以下は、2011年の記事です。3月に行われるはずだった高校選抜の出場チームを取材していたのですが、
東日本大震災で高校選抜が中止になってしまったため、「幻の高校選抜」シリーズとして当時運営していた
「新体操研究所」に、掲載した記事です。~


幻の第26回高校選抜大会特集⑬ 東福岡高校(福岡県)
 
サッカーの長友佑都選手の出身校として一躍有名になった東福岡高校だが、今回の選抜大会には男子新体操部が出場することになっていた。

正直、東福岡高校に男子新体操部があるということも、あまりよく知らなかった。そこで、今回、学校にお邪魔させてもらうことにした。
 
まず、建物を見て驚いた。
ものすごく立派だ。この校舎は、最近建ったものということだが、空中庭園まであるこの豪華な建物は、かなりすごい!
これだけ校舎が立派だと、体育館もさぞかし・・・と思ったのだが、顧問の湯浅先生は、「うちはバレー部の横で練習させてもらっているので」と言われる。
バレー部と新体操部が隣同志で練習できる体育館ということは、やはりかなり大きな体育館なんだろうな、と思いながら湯浅先生に連れられて体育館へ
向かった。

ひと目見て驚いた。「バレー部の横」って、こういう意味だったのか!
体育館を半分ずつ使っているという意味の「横」ではなく、まさにバレー部のコートの脇、が新体操部の練習場所だ。
タンブリング板が1本だけ。部員達は、この狭いスペースでタンブリング練習をするのだという。
 
今回、私は、決して練習場所に恵まれているとは言えない学校もいくつか取材してきた。しかし、今まで見たなかでも、東福岡高校の練習環境は
ダントツに厳しい。ここまで狭いところで練習しているチームは初めて見た。
さらに、東福岡高校の新体操部員は、ほとんどが高校から新体操を始めている。バク転ひとつできない状況から、この環境で練習して、なんとか
団体演技ができるところまでもっていくというのだから、おそれいる。
 

本来なら、自分の番を待つ間は、補強運動をしたりしながらのほうがいい。清風高校ではないが、一度タンブリングをして戻ってくるときも、倒立したり、

甲歩きしたりするほうがいい。しかし、ここにはそれほどのスペースがない。タンブリング練習では、自分の番を終えたら、粛々と戻ってくるほかない。

順番を待つ間は、仲間に声援をおくるくらいしかできることがないのだ。

 
この日は、選抜大会が目前に控えているということで、途中から団体メンバーは団体演技の練習に入った。
この狭いスペースでどうやって団体練習をするのか? と思いきや、メンバーは体育館前方のステージにあがってそこで練習を始めた。たしかにタンブリング

板よりは広い。しかし、当然、マットもなければ、広さも足りない。
さらに、顧問や副顧問の先生はいるのだが、ずっとついて指導をしてくれるわけではない。彼らはほとんど自分たちで演技をチェックし合い、修正していく。
写真の中で、きちんとポーズをとっていない選手がいるが、それはさぼっているわけではない。上級生である彼が、自分も演技しながら、全体を見る役目
をしているのだ。椅子に座って演技チェックしている生徒もいたので、マネージャーかと思えば、彼も団体メンバーの1人だった。演技を見る人がいないので、
今日は自分が見ているのだという。

 

さっきまで演技をチェックしていた選手も、「次は俺も入るから」と言って入って通す。でも、そうすると演技を見る人がいない。
彼らはそんな練習をしている。体育館のステージの上だから当然タンブリングも入れられない。
湯浅先生によると、「ときどきは、レスリング部のマットを借りて練習したりもします。あれは12メートル四方だからちょうどいいんです」と言うが、それにしても、
これではなかなか練習がままならないだろう。
それでも。
いや、それだから、か。
彼らはじつに楽しそうに、部活動の新体操を謳歌しているように見えた。彼らは、高校で男子新体操に出会い、仲間とともにそこで成長し、自分たちで
演技をつくりあげている。
その1つ1つの過程がとても楽しそうだ。
 
団体のまとめ役を務めていた2人に話を聞くことができた。
脚の靭帯を傷めているとのことで、この日は指導役に回ることが多く、セーブしながら練習をしていた2年生の満田くんは、
「東福岡高校に入ったら部活をやろうとは決めていました。新体操にしたのは、部活紹介のときに目に留まったからです。家族からも向いてるんじゃない?
 と勧められて入部しましたが、最初は思ったよりも大変でした。ただ、やっているうちにだんだん技ができるようになってくるのが楽しくなってきて。団体は、
 6人で合わせるのが大変だけど、協力し合って完成させていくところに魅力があります。うちのチームは、決して強いチームではないし、九州には他に強い
 チームが多いけれど、気持ちでは負けない! いつかは超えるぞ! というつもりでやっています。新体操を通じて、仲間との関わりも深くなり、信頼も
 得られたし、人間的な成長もできたと思います。」と語ってくれた。
 

リーダーの小山田くんは、「学校ではこういう練習しかできないので、週末には福岡大学で練習させてもらうことも多いです。そこではマットを使った練習を

させてもらったり、大学生に演技を見てもらうことができるので。」と言う。普段自分たちでチェックしているときには、「OK」と思っていた動きも、大学生に見て

もらうと「まだまだ」だったりするが、そこで成長できると言う。

小山田くんが新体操を始めたのは、やはり「バク転へのあこがれ」からだそうだ。普通の人にはできないことができる、という男子新体操のおもしろさにまず
ひかれ、団体演技をやるようになってからは、「6人でまとまって何かをやる」ことがおもしろくなった。
「チームとしては、強くありませんが、個人個人の能力では負けてないぞ! という気持ちもあるので、なんとか九州大会で上位に入って、インターハイを
目指したいです。」と力強く語ってくれた。
 

私が、「明日は神埼清明に取材に行く」と言うと、「そうなんですか~。神埼はすごいですよ~。みんなうまいし、新体操専用の体育館もあるんですよ」と、

親切に教えてくれた。

同じ九州に、神埼のようなチームがあることを誇らしく思っているんだな、ということが伝わってきた。ライバルというには、まだ差は大きいが、そうやってあこがれ、
目標にできるチームが身近にあることが、高校から始める子の多いこのチームにもおおいに刺激になっているのだろう。
 

おそらく。
選抜大会に出場予定だったチームの中で、もっとも練習環境に恵まれていないチーム。それが東福岡高校だ。
それでも、新体操はやれるんだ! ということを、選抜の舞台で見せてほしかったが、それはインターハイまでお預けだ。