東日本インカレ直前!~男子個人競技展望

いよいよ今週末。宮城県のホワイトキューブで東日本インカレが開催されます。

じつに2019年以来の有観客での開催。そして応援も解禁と聞いています(状況による変更などもあり得ますので現地での指示に従ってください)。

インターハイをはじめ多くの大会が中止になった2020年。あのとき高校1年生だった選手たちが今年は大学ルーキーとして東日本インカレにデビューします。試技順を確認したところ、男女とも個人に出場する1年生は6人。団体に出場する1年生は男子が4人、女子が17人。もちろん、今大会ではサポートに回っている1年生もいるでしょうから、昨年の高校3年生のかなり多くが「大学で新体操を続ける」という道を選んでくれたことがわかります。

希望に満ちて高校進学したとたんに緊急事態宣言で練習も満足にできず、大会も次々中止という、挫折しても無理もない環境に陥ったあのときの高校1年生たちが、その後も、一進一退を繰り返すコロナ禍で、気持ちを切らさず新体操を続けてきてくれたことが本当に嬉しく、ありがたく感じています。

そして、それは大学2年生以上にとっても同じことが言えます。

大学での新体操を1年間経験し、「これから!」というときにコロナ禍に突入した現在の4年生たち。

最後のインターハイがなくなってしまい、先の見えない中で大学進学を決めざるを得なかった現在の3年生たち。

一番フルに活動できるはずの高校2年生という時間がほとんどコロナに奪われてしまった現在の2年生たち。

だれもがそれぞれの立場で、多くのものを失い、我慢して過ごしてきたこの3年間でした。

そして、観客もまた、この3年間は新体操をリアルで観戦することがままならないことが多かったです。

2022年はかなり入場制限は緩和されていましたが、インカレやインターハイは一般の観客には敷居が高く、涙をのんだ人も多かったはずです。

 

それがついに!

晴れて、誰もが観覧できる東日本インカレ、が還ってきました。

ぜひ多くの方に足を運んでいただき、現地で見る新体操の迫力や美しさを体験してほしいと願っています。

今回が初の現地観戦となる方も多いかと思いますので、観戦を楽しむための手助けに少しでもなれば、と思い、まずは「男子個人競技」から展望を記します。あくまでも過去のデータに基づいたものなので、このシーズンオフ中に大伸びしている選手もいると思います。そこはご容赦ください。

 

【男子個人競技展望~2023東日本インカレ】

昨年の全日本インカレ(8月)、全日本選手権(10月)の結果を振り返ると、昨年は上位に4年生が多かったことに気がつく。その「強かった4年生」が抜けたあとの現在の大学生の中で、昨年の全日本インカレでトップだったのは5位の森谷祐夢(国士舘大学3年)だ。森谷は、2017年全日本ジュニアチャンピオンを経て、2019年のインターハイを高校2年生ながら制した選手で、2020年には連覇も期待されていたが新型コロナによる中止でそれを阻まれている。大学進学後、1年目はやや苦しんでいる時期もあったが、昨年は見事に復活。持ち味の美しい体操と表現力で観客の心を動かす演技のできる選手で今大会優勝候補の一角と言える。

また、全日本選手権での上位から社会人と昨年の4年生を抜いた場合のトップなのが田窪莉久(青森大学4年)だ。田窪は、鹿児島県のシュテル新体操クラブ⇒れいめい高校を経て、青森大学に進学した選手で、2019年のインターハイは鹿児島開催だったため、地元枠でインターハイに出場しているが、それが唯一のインターハイ出場。それでもそのポテンシャルの高さは当時から注目されていた。大学進学後は、徐々に頭角を現し昨年ついにブレイクした注目選手だ。そのタンブリング、跳躍力は東日本ではトップレベルにある。

全日本選手権での成績では、田窪に次ぐのが遠藤那央斗(青森大学4年)になる。この選手はキューブ新体操⇒名取高校と進んできたジュニア時代からずっと同世代の中では常にトップ争いを演じてきた。身体能力の高さ、手具操作の多様性、音楽と調和した動き、表現力。すべてが高いレベルで揃い、4種目それぞれで違う表情を見せるエンターテイナーだ。演技から受ける印象よりも、少し点数が低めに出る傾向があり、昨年までは表彰台になかなか上がれずにいただけに、学生最後の年に懸ける思いは強いだろう。奇しくも大会会場は、彼が育ってきたホワイトキューブ。台のりの可能性は十分、いや頂点獲りの可能性も十分にある選手だ。

「史上最強の4年生軍団」がいた2020年が終わり、上位争いが混沌としていた2021年の全日本インカレを制したのが当時2年生だった岩渕緒久斗(青森大学4年)だ。この選手は、ジュニア~高校時代から伸びやかで美しい体操が高く評価されてきた選手で、尼崎西高校時代は団体選手としても活躍していた。大学生になってからは個人に専念し、インカレチャンピオンになった年には、手具操作の安定感も増したことで体操の良さが際立っていた。しかし、昨年は考えすぎてしまったのかやや精彩を欠き、インカレでは6位と順位を落とし、10月の全日本選手権でも、田窪、遠藤、森谷の後塵を拝するという苦しい1年になった。それでも、この選手ならではの空気感は、ルール改正によってやや慌ただしく見える演技が増えてきた現在の男子新体操の中では独特の味わいがある。学生最後の年、思い切りその持ち味を発揮してほしい。

全日本選手権では、現大学生の中で5番目の位置につけていた森園颯大(青森大学4年)は、小学生のころから九州では無敵だった。シュテル新体操に所属していたジュニア時代から全力で振り切るような情熱的で表現力に溢れる演技を見せていたが、れいめい高校時代は、やや苦しんでいる様子もあった。手具操作でのミスが出て苦い思いをする試合も多く、3年生で迎えた地元鹿児島でのインターハイで入賞を果たしたときのホッとしたような笑顔を見て、彼の抱えていたプレッシャーの大きさを垣間見た気がした。大学進学後は、鹿児島を遠く離れ、ある意味、解放されたかのように新体操選手としての人生を生き直しているように見えた。そして、着実に力をつけてきた。挑むような強い視線が魅力的な選手。その強い思いを演技で発揮できることを期待したい。

以下、昨年の全日本インカレの順位では、野村壮吾(国士舘大学2年)、岡本瑠斗(国士舘大学3年)、大西竣介(国士舘大学4年)、鈴木孝之輔(青森大学3年)、大塚幸市朗(国士舘大学3年)と続く。

そして、ここに楽しみなルーキーたちが加わる。昨年の全日本選手権では、高校生トップの4種目合計64.625をマークしている葛西麗音(青森大学1年/青森山田高卒)、その葛西を凌いでユースチャンピオンシップでは優勝している貝瀬壮(国士舘大学1年/光明学園相模原高卒)、インターハイ優勝の本田歩夢(青森大学1年/盛岡市立高卒)、さらに全日本選手権では葛西に次ぐ高校生2位の得点62.750を出している太鼓真啓(国士舘大学1年/鹿児島実業高卒)らは、力を発揮できれば一気に入賞圏内にも飛び込んでくるだけの力はもっている。

 

東日本インカレは、5月12日(金)~14日(日)の3日間、宮城県ホワイトキューブにて有観客で行われる。(観覧無料)

※男子個人競技は、13日(土)スティック、リング、14日(日)ロープ、クラブが行われる。

シーズン開幕を告げる熱い戦いに注目したい。

PHOTO:naoko(森谷・田窪・遠藤・森園)