「三重の妖精」、日本代表入りなるか?~岡村真(相好体操クラブ/四日市大学)
世界選手権、五輪でも常に金メダルを争う位置にいる男子に比べると、注目度は低いが、女子の体操競技もこのところ、めざましい進化を見せている。
2021年東京五輪のメダリスト・村上茉愛や、長年日本代表として活躍してきた寺本明日香、杉原愛子らがそろって一線から退いた2022年、日本の女子体操はぐっとレベルダウンするかと思われた。全日本選手権やNHK杯の上位の顔ぶれもがらっと変わり、パリ五輪の出場を危ぶむむきもあった。
が、すっかり日本の女王に成長を遂げた宮田笙子(順天堂大)を中心に、若い力が一気に伸び、パリ五輪にもかなり楽しみなメンバーで出場できそうだ。
全日本選手権で上位につけているのは宮田笙子、岸里奈(戸田SC/クラーク)、中村遥香(なんば体操クラブーngc/相愛学園)、岡村真(相好体操クラブ/四日市大学)、杉原愛子(TRyAS)※いったん引退を宣言したが昨年から現役復帰、畠田千愛(セントラルスポーツ)、相馬生(バディ塚原体操クラブ)らだが、この中でもとくに注目したいのが岡村真選手だ。
昨年のアジア競技大会の体操女子個人総合で銀メダル、種目別平均台で金メダルという実績をすでに持っている岡村選手だが、世界選手権の代表経験はまだない。今年、大学生になったが、体操競技の強い大学への進学ではなく地元の大学へ進学し、クラブチームで競技を続ける選択をしているという点でも独自の道を進んでいる感のある選手だ。
その独自性は演技にも表われている。
日頃は新体操を見る機会が多い私にとって体操競技はどうしても「美しさ」という点では粗が見えることが多い。が、この岡村選手の演技は隅から隅まで本当に美しい! と感じるのだ。そして、その表現力は体操競技の域を大きく超えている。
「もう大学生?」と驚いてしまうほど、可愛らしく、可憐な印象の選手だが、そのイメージままの演技は、キラキラしている。彼女がふわっと腕を動かすと、その指先から金粉が宙に舞うような錯覚さえ起きてしまう。小柄な選手だが、いわゆる「空気を動かす」ような動きをするため演技中は小柄さを感じさせない。
今の女子選手たちは、10年前に比べると表現力豊かな演技を見せる選手が増えたと感じるが、岡村選手は中でも、抜きんでた存在のように感じる。そしてそれを支えているのが、どんな瞬間でも緩むことのないつま先、膝。姿勢の美しさだと思う。おそらくバレエなどの素地があるのだろうか。ゆかや平均台で見せるバレエ的な動きがとてつもなく美しく、自然で、「こんな体操選手見たことない」と思った。
アジア競技大会のテレビ中継で、彼女の演技を見たときあまりにも可憐だったので「妖精か?」と感じたが、今もその雰囲気に変わりはない。
NHK杯は、最高に熾烈な戦いになりそうだが、フロアに上がったら自分の表現する世界に没頭して、自分らしい演技を全うしてほしい。そうすれば、パリ五輪という最高の舞台で踊る岡村選手を見ることができるかもしれない! 私はそう期待している。
※ ↓ 5/16から始まるNHK杯の情報はこちら。女子競技は16日、18日の2日間。
http://gymlove.net/gl/topics/pr/2024/05/14/516nhk/index.html
<撮影:岡本範和>※全日本体操選手権にて