第46回世界体操競技選手権/内村航平、個人総合6連覇達成!

ゆか、あん馬、つり輪と内村の演技にはまったくほころびがなかった。

得点は。15・733、15・100、14・933。

「Eスコア、引けるものなら引いてみろ」と言わんばかりの足先まで神経の行き届いた演技が続く。

団体予選、決勝ですでに12回の試技を行っている内村。それも最後の鉄棒では落下をしているということで、さすがのキング・内村にも疲れはあるのではないかと案じるむきもあった。

しかし、前半3種目を終えた時点で、そんな危惧は無用だったな、と誰もが感じたに違いない。

あまりにも危なげない。団体で念願の金メダルをとったあと、気が抜けたり、ゆるんだりすることもなく、淡々と冷静に、「やるべきことをやっているだけ」という空気の中で内村は「世界選手権6連覇」に向けて粛々と儀式を進めているかのようだった。

 

4種目目の跳馬の前だけ、少し様子が違った。

やはり「リシャオペン」という今年から試合で使い始めた大技への緊張感があるのか、そこまでの3種目に比べると、表情が硬いような気がした。

しかし、ここでも内村は神レベルの跳躍を見せ、15・633。Eスコアは9・433という素晴らしい出来栄え。表情が硬く見えたのは、緊張ではなく闘志ゆえだったのか。そう感じる跳馬だった。

 

今大会は、他の選手だちもかなり健闘を見せ、ラルデュエト(キューバ)、デン・シュウディ(中国)などが急追してきていた。今までの大会では、平行棒、鉄棒を残した時点で圧倒的な点差をつける独走態勢だったこともあった内村だが、今回はそうはいかなかった。4種目目まで終了した時点での2位との点差が1点以内。内村に疲労がたまっているだろうことや、団体決勝での鉄棒での落下などを考えると、わずかではあるが不安もよぎる。そんな展開になっていた。

 

が、5種目目の平行棒で内村はまた神レベルの演技を見せる。ぴたりとすいつくように着地まで決め、E得点9・033の15・833。最終種目を前にして、リードをぐっと広げる得点を、ここでたたきだした。

最終種目の鉄棒で、団体決勝で落下した「カッシーナ」を内村は抜いた。それでも、実施がよければ十分15点台は狙える地力が内村にはある。試合後のインタビューで内村は、「鉄棒では価値点(Dスコア)をおとして着地を止めるという作戦だった。森泉コーチからも、ここは勝ちにこだわってもいいのではと言われた」と言った。

「カッシーナ」を決めて見せたいという思いもあったかもしれないが、それよりも間違いなく優勝し、6連覇を達成するという決断をし、そのとおりにやってのけた。

鉄棒では目立ったミスもなく、最後の着地もマットに吸い込まれるようだった。

鉄棒の得点は、15・100。

この瞬間、6種目総合92・332という圧倒的な得点で内村は6連覇を成し遂げた。

 

海外の若い選手もたしかに伸びてきている。

いつかは内村航平も負ける日が来るのだろう、とは思う。

 

しかし、2015年。

26歳になった内村航平は、いまだ「世界最強のチャンピオン」だった。

念願の団体金メダルも手にした今、ずっと抱えていた呪縛から解き放たれた内村は、まだ進化を見せてくれるかもしれない。

そう思わせる圧巻の優勝だった。

 

PHOTO:Yuki SUENAGA ※国内大会のもの      TEXT:Keiko SHIINA