体操ニッポン、緊急事態!~女子~

いよいよ明日開幕となる第46回世界体操競技選手権大会。すでに会場ではポディウムトレーニングが行われているが、ここにきて日本チームは、いくつかの変更を余儀なくされる緊急事態に陥っている。

 

まず、23日から団体予選が始まる女子では、内山由綺’(スマイル体操クラブ)が、エントリーからはずれ、補欠として帯同していた村上茉愛(日本体育大学)が出場することになった。

内山は、4月の全日本選手権では個人総合2位、5月のNHK杯ではミスが多く順位は後退したが5位に入り、初の世界選手権代表の座を得た期待の若手選手だ。段違い平行棒では実施がよければ15点台を出せる力があり、「段違いのポイントゲッター」を期待されていた。

7月の体操アジア選手権でも、個人総合で5位にあたる得点をあげ(各国上位2名までしか個人総合の順位がつかないため順位はなし)、日本の団体優勝にも貢献した。

しかし、その後、左かかとの怪我で練習がままならなかった時期があり、会場でのポディウムトレーニングの様子から、村上との交代が決まった。

体操選手としては珍しい長身で線の美しさでは群を抜く内山は、今大会での世界デビューには大きな期待が寄せられていただけに、日本としても痛手であり、本人や関係者の無念さははかりしれないものがある。しかし、まだ高校生。まだ先はあるし、リオ五輪は来年だ。ここは焦らず、しっかり治療を優先して來シーズンに備えてもらいたい。

補欠からの繰り上がりでの出場となった村上は、今シーズンはスタートが悪かった。全日本選手権では10位、NHK杯でも8位で代表入りには届かなかった。最後の望みをかけた6月の種目別選手権では、大本命視されていた宮川紗江(セインツ体操クラブ)を退けゆかで優勝し、意地を見せたが、代表最後の1枠にはその宮川が入り、補欠となっていた。

もともとは日本の弱点と言われていたゆかと跳馬でのポイントゲッターとして期待されていた選手だが、宮川がまったく同じポジショニングで上がってきたため、得意種目のかぶる村上にはやや不利な状況となっていたが、「年下には負けたくない」と公言する負けず嫌い。

8月の全日本学生選手権でも、個人総合2位(優勝は寺本明日香)、種目別跳馬2位、ゆかでは優勝。それもゆかでは15.000をマークするなど、宮川に劣らぬ得点力があることを証明して見せた。

目の前で世界選手権出場が消えた内山のことを思えば胸が痛むが、故障のある内山から村上への選手交代を決断できたのは、村上が十分な準備をしてきた結果といえるだろう。

個々の想いは様々だろうとは想像するが、今大会は、来年のリオ五輪の団体出場枠のかかった試合だ。その条件となる「団体8位以内」を死守するために、今は、チーム一丸となるしかない。

今回、涙をのんだ内山が、リオ五輪にこそは出場するためにも、選手たちは力を合わせ、内山の分まで必死になってくれると期待したい。

同時に、NHK杯優勝の杉原愛子(梅花高等学校)も、故障のため段違い平行棒と平均台のみの出場の見込みだという。体操アジア選手権でも安定感のある演技で個人総合優勝を果たし、今シーズン絶好調だった杉原がフル出場できないこと、さらに選手交代もと、ピンチには違いない。

当初の予定とおりの戦いはできないかもしれないが、こんなときこそ底力が発揮されるもの、のようにも思う。

前回、ロンドン五輪の出場枠のかかった2011年の世界選手権(東京開催)のときもそうだった。あのときは、代表選手だった飯塚友海選手が、跳馬の直前練習で負傷し、初代表だった寺本明日香が、ぶっつけ本番に近い形で跳馬をこなし、チームのピンチを救ったのだった。

五輪前年の世界選手権は、なかなかすんなりとはいかない。

しかし、そんな困難をも乗り越えるだけの力を、きっと彼女たちはもっているに違いない。体操アジア選手権での、中国とのギリギリの戦いに競り勝った日本女子の強さ、しぶとさを信じたい。

【参考記事】体操アジア選手権女子団体記事

<前編> http://bylines.news.yahoo.co.jp/shiinakeiko/20150802-00048082/

<後編> http://bylines.news.yahoo.co.jp/shiinakeiko/20150804-00048169/

PHOTO:Norikazu OKAMOTO/Yuu MATSUDA     TEXT:Keiko SHIINA