2014体操ワールドカップ東京大会 記者会見/美濃部ゆう&寺本明日香

練習ぶりからも、会見での受け答えからも、好調ぶりがうかがえた男子選手に比べると、女子選手の会見は、それぞれの事情からくる準備不足に若干の不安を残しながらも、「できるだけのことはしたい」という強い覚悟を感じさせるものとなった。

 

海外の選手達の棄権が相次ぎ、間近になってワールドカップへの出場が決定した美濃部ゆうは、開口一番、

「今回も急遽出場が決まったのですが。」と言った。

しかし、その後は、ベテラン選手らしい落ち着いた様子で、「せっかくもらったチャンスなので、できるだけの自分の演技をしたいと思います。」と続けた。

昨シーズンから肩を傷めていたため、シーズンオフは肩を休ませ、今年はスロースタートになっていたという美濃部。5月の全日本選手権に合わせて調整していくはずだったが、今回の急な出場となり、正直、不安はあるに違いない。

それでも、「今年は、少しあぶないところがあっても、とどめられる、安定した演技を目指します。」と言う美濃部は、今回の出場を、本気で、「せっかくもらったチャンス」ととらえているのだと感じた。準備不足を言い訳にする気なんかない、のだ。

公開練習では、曲をかけてゆかの練習をしていたが、新しい曲と構成だった。そのことについて聞かれると、

「振付はアリーナ先生で、ゆかは毎シーズン変えてもらっています。

前の曲をとても気に入っていたので、今回の曲を探すのはかなり苦労しましたが、今の曲も気に入っています。」

と回答。今シーズンから解禁になったボーカル入りの曲をさっそく取り入れ、この選手らしい表現力を感じさせる作品になりそうだ。

日本人選手の中では、ベテランと呼ばれる年齢になった美濃部は、「4年スパン(次の五輪出場)では考えていません。1年ずつ、です。」

と言う。

公式練習を見る限り、得意の段違い平行棒や平均台などは、キレのよい動きを見せていて、とても急遽出場が決まった選手には見えなかった。

「1年ずつ」と言う美濃部だけに、「目の前の試合」に向けて、そのときの全力を尽くす。そんな姿勢が見てとれる練習ぶりだった。

●美濃部ゆう

 

2日前に中京大学の入学式を終えたばかりの寺本明日香は、大会への抱負を、

「ワールドカップは去年優勝した試合なので、今年も、という気持ちはありましたが、ここまであまり順調に練習できていないので、どのくらい復活できているか、を試す試合にしたいと思っています。」と控え目に語った。

昨年末の豊田国際のときに脚を傷め、3か月間は、「フルに練習できない状態だった」という寺本は、ワールドカップに出場するかどうかも、1か月前までは迷っていたという。

 

しかし、出ると決めてからは、モチベーションがあがり、思った以上に回復し、痛みも感じることが減っていたそうだが、Dスコア6.2の技に挑戦していた跳馬の練習中に再び脚を傷めてしまった。そのため、今回の跳馬は、5.6の技におとすことにしたというが、その痛みから他の種目にも影響が出てしまっているという状況だ。

「試合にはなんとか合わせたいと思います。」

毅然として覚悟を口にする寺本だが、万全のコンディションとは言えないことは否定できない。

だが、思い返せば、1年前のワールドカップも故障明けで、決してよいコンディションとは言えないなかでつかんだ優勝だった。

あのとき、「(寺本は)やると決めたからには、という責任感がものすごい」と、寺本を長年指導する坂本コーチが言っていたことを思い出す。

たしかに公開練習でも、脚に不安がありそうには見えたが、寺本は、非常に集中したよい練習をしていた。

跳馬は、かなり精力的に跳んでいたし、昨年から使用している大人っぽい曲のゆかでも、味わいのあるよい動きを見せていた。

 

入学式を終えたばかりの寺本には、「どんな大学生活をおくりたいか?」という質問がとんだが、

「大学生になると、ジュニアとは違って、大学の先輩方についていくことが求められるし、インカレなど大学で出る試合も大事になってくると思っています。リオ五輪まであと2年なので、そこまでの2年間は、勉強よりも体操優先でいきたいと思っています。」

と、寺本明日香は、いかにも寺本らしく、きっぱり回答した。

今大会は、「自分がどこまで復活できているか」を試す試合かもしれないが、それでも今できる全力を尽くしてくるのが、この選手だ。

リオに向けての2年間のスタートダッシュにもあたるこの試合で、寺本明日香の粘りと根性を見せてもらいたい。

 

●寺本明日香

 

PHOTO &  TEXT  by  Keiko  SHIINA