豊田国際体操競技大会/1日目レポート

本日12月14日、スカイホール豊田にて豊田国際体操競技大会、種目別選手権の前半種目が行われた。本日12月14日、スカイホール豊田にて豊田国際体操競技大会、種目別選手権の前半種目が行われた。
 

男子はゆか、あん馬、つり輪の3種目、女子は跳馬、段違い平行棒の2種目。結果としては男女全ての種目で日本人選手が表彰台に上るという、日本チームとしては素晴らしい成績を残した。
 

●ゆか

優勝:白井健三(日本)16.325

2位:内村航平(日本)15.500

3位:パク・オジン(韓国)14.800

まずは男子ゆか。最初の種目から世界王者内村選手と、ゆか世界トップの白井選手がエントリーしており、注目を集める。他にもロンドン五輪と、この秋の世界選手権種目別つり輪で優勝したブラジルのArthur NABARRETE ZANETTI選手や、同じく世界選手権種目別跳馬で銅メダルを獲得したイギリスのKristian THOMAS選手もエントリーしており、個人的にはこの選手らにも注目していた。 

まずは2人目に内村選手が登場。視線が集まる中、いとも簡単に演技を終えてしまう。しなやかで、いつもの内村選手だった。着地が少しずつ跳ねてしまっていたが、それもごく僅かだった。むしろ、気になるところはそのごく僅かなズレのみという、素晴らしいできだった。彼があまりにも完璧すぎるために、小さな着地でも気になってしまうのかもしれない。実際、会見後のインタビューでも、本人も「全コース着地が決まらないと、いい出来とは言えなくなっている。」と言っていたぐらいだ。観客の大歓声を受けて終えた内村選手の直後の演技は韓国代表のパク・オジン選手だったが、とても自分の演技に集中し、高さのあるタンブリングを見せる。着地も狙いにいっていることがわかり、14.800のいい演技。続くはブラジル代表のZANETTI選手。日本人には見られない宙返り系の技を連発する。まさに国際大会ならでは、という会場の雰囲気。つり輪の体つきで繰り出す技に見惚れてしまった。特に力技で見せた中水平に会場はどよめいた。かっこいい演技を見せてくれた。
そして白井選手。あったまった会場が、彼の背中を押す応援をする。4回ひねりは少しひねり不足だったが、世界選手権のときよりかなり綺麗な演技になっていたという印象だ。Eスコアを上げようとしていることが感じられた。
イギリスのTHOMAS選手はやはり高さのあるタンブリングで引きつける。しかし、しりもちやラインオーバーが続き、得点は伸びなかった。
 

 

●あん馬

優勝:亀山耕平(日本)15.300

2位:加藤凌平(日本)14.925

3位:キーティングス・ダニエル(イギリス)14.375

 

2種目目のあん馬は落下の続く展開となった。イギリス代表であん馬を得意としているDaniel KEATINGS選手も、序盤は腰が高く綺麗な演技だったが、崩れてお尻があん馬に触れてしまい、その後に落下してしまう。

 

その後の選手も落下が相次ぐ。そんな緊張感のある中で、ノーミスの完璧な演技を見せたのは加藤選手。終止とてもいいリズム。構成を少し変えてきており、それについては「Dスコアは変わっていないが、Eスコアをあげるために試行錯誤した。」と語っていた。今シーズン最後の大会で、来シーズンを見越した演技が見られたのはとても良かった。

 

そして世界王者となった亀山選手。セア倒立では片手がポメルから外れてしまったあと、倒立でも反れてしまったが、それ以外は亀山選手の安定した綺麗な旋回が見られた。本人も「正直なかなか調整が上手くいってなく、でもお客さんがきてくれる、というモチベーションで挑んだ。」と語っていた。

 

 

●つり輪

優勝:ナバレッテ・ザネッティ・アルトゥール(ブラジル)15.875

2位:山室光史(日本)15.625

3位:グエン・マルセル(ドイツ)15.375

 

3種目目のつり輪は世界のトップ選手の争いが日本で見られるという形になった。注目は先ほども紹介した五輪、世界選手権チャンピオンのZANETTI選手や、つり輪を得意とするMarcel NGUYEN選手。そして山室選手である。

 

なんといってもZANETTI選手。つり輪スペシャリストの演技をこの日本で見られたことに感動した。上水平も中水平も、力技がとにかく動かない。倒立の決めも素晴らしく、「動かない」ということにここまで感動させられたのは初めてだった。それに、身体だけではなく、器具であるつり輪自体と作られている全体のラインが美しい。ひとつの芸術作品を見ているようだった。まさに彼の身体とつり輪が化学反応を起こして作られている造形美のようだった。静と動のメリハリも明確な輪郭線を引けるほどはっきりとしており、誰にも真似できない、まさにスペシャリストの演技で15.875をマーク。

 

NGUYEN選手はその直後。会場の空気を根こそぎZANETTI選手に持っていかれてしまった後だったが、彼も素晴らしい実施を見せた。特に倒立のラインが素晴らしく、この日の倒立はZANETTI選手よりもはまっていたかもしれない。着地ではそのまっすぐな脚がマットに突き刺さるかのように止める。素晴らしい実施だったが、ZANETTI選手には僅かに及ばず15.375。
 
そして最終グループには山室選手、内村選手と続く。

 

山室選手の今シーズンは怪我から復帰したシーズンとなったが、復帰以降ではベストの演技なのでは、と思わせる素晴らしい実施。本当に復帰してきたことを演技から実感した。力技のポジションもとても綺麗で、倒立も完璧におさめる。ラストの着地もしっかり決めて、先ほどのNGUYEN選手を超える15.625の実施。特に力技の精度はかなり元の山室選手に戻ってきており、この1年間、着実に進んでいることを感じた。

 

続く内村選手。やはり注目が集まる存在。しかし序盤から倒立のはまり方がいつもと違っているように感じた。と思っていたら、スイング系の技に入るところでまさかの落下。自ら止めたように見えたので、場内はざわつく。どうやら目を気にしているらしい。「演技中にタンマ(滑り止めの白い粉)が目に入ってしまって落下した。」とのことだった。その後も演技続行し、まとめた。着地では難度を上げてきたが手をついてしまった。試合終了後の話でも「つり輪は急遽出場することになったのだが、(アクシデントが起こって)きっと神様が出なくてもいいって言ったんだと思う」と苦笑い。しかし「急遽決まったが、どうせ出るなら来年に繋がる技をしたくて、下り技を変えた。」と来シーズンに向けてまた更に進んでいこうとする点ではさすが「絶対王者」だと感じた。

 

男子選手だけでなく、女子選手も世界各国から素晴らしい選手が集まってきており、わくわくする展開となった。

 

まず、出場予定だった寺本選手は当日の直前練習で左足首を負傷してしまい、棄権となった。連戦続きの疲れもあったのではないだろうか。とにかく、大事に至らないことを願う。

 

●跳馬

優勝:ファン・ティ・ハ・タイン(ベトナム)14.550

2位:村上茉愛(日本)14.400

3位:ド・ティ・バン・アン(ベトナム)13.650

 
その寺本選手と一緒に跳馬の練習をしていた村上選手。少し不安もあるかと思っていたのだが、彼女は彼女の演技をやってのけた。1本目のユルチェンコ2回ひねりは、いつもほどの高さはなかったが、着地は小さく1歩にまとめる。2本目は着地を止めて2本の平均が14.400。やはり寺本選手の影響はあったのか、という質問が報道陣からもあがったが「明日香の分まで頑張って表彰台に乗ろうと思ってやった。心配はしているが、惑わされないようにしようとしていたので、あまり影響はなかった。ただ、2本同じ技でいいと言われていたのだが、直前で違う技を跳ばなきゃいけなくなり、練習は補助ありでしかやってなかったが、なんとか成功できて良かった。」と答えていた。

 

2011年の東京世界選手権の跳馬3位だったPHAN選手はさすがの演技。1本目も2本目も、どちらもとても高い跳躍だった。特に1本目はふわっと高く余裕のある演技で、着地も止めた。やはり世界のトップ選手は違うということを目の当たりにした。

 

 

●段違い平行棒

優勝:ムアーズ・ビクトリア(カナダ)13.800

2位:ホ・ソンミ(韓国)13.600

3位:井上和佳奈(日本)13.500

 
段違い平行棒で注目なのは、ゆかが強いカナダのVictoria MOORS選手。とにかく大きな実施に驚かされた。あんなにも大きな段違い平行棒は初めて見たかもしれない。上のバーと下のバーの移動が多く、それも全体を大きく見せている要素のひとつなのかもしれない。倒立も歪みなくはめて、着地は小さく1歩。完璧な実施だった。日本選手にはない、豪快さに目を引かれた演技だった。

 

次に続く選手は井上選手。MOORS選手とは違い、繊細な演技をする選手。倒立がとても綺麗だった。ずっと追いかけていたくなるつま先がなんとも言えない。着地も止めて、笑顔がこぼれる。

 

倒立の美しさでは、韓国のホ・ソンミ選手も負けていなかった。彼女も足先まで美しい。もちろん着地も止め、井上選手を上回り2位となった。

 

 
後半種目も日本選手だけではなく、国際大会らしく様々な選手に注目したい。

 

PHOTO by Katja  TEXT by umi