2013国際ジュニア体操競技大会~種目別決勝女子後半種目

 
 
【平均台】
 
 
Andreea MUNTEANU選手(ROU)は、ジャンプ系の技が多い演技構成。
組み合わせも多くとっており、難度が高いのにもかかわらず、高さのある素晴らしい実施をする選手。
終末技も組み合わせで3回ひねり。これも足先までまっすぐで美しいひねり。演技に対するこだわりが強く感じられた。
 
前日の個人総合での平均台は唯一あまり得点が伸びなかったBailie KEY選手(USA)。
しかしこの種目別決勝ではほぼふらつきのない実施を行った。決めなければならないところではきちんと決めてきた。
ここにきて安定感抜群の演技をする!さすが、としか言いようがない……!
それも無難に安定させたのではなく、技を盛り込んだうえできちんと脚の伸びた美しい演技をしている。
素晴らしい実施で14.625と前日の14.000に比べ、0.625点も得点を上げる。
 
本田美波選手はやはり他の選手に比べると少し難度の低い構成。
しかし、とても丁寧に演技をしている印象だった。振付けの動きもしっかり大きく腕や脚を動かしているように見えた。
途中ふらつく部分があるも、着地はピタリと止める。
平均台の演技で記憶に焼き付いているのは、Maria BONDAREVA選手(RUS)。
彼女は途中で大きくふらついてしまい、会場にいる誰もが落ちてしまうのではないかと思うほどだった。
しかし、コーチや客席からの掛け声もあり、なんとか持ち直したのだ。しかも、平均台を手で押さえることもなく、立て直したのだ。
なかなか安定せず、ふらついている時間が長かったので、相当体力も消費してしまったと思う。しかしその後は着地まできちんとまとめた。
ただ、ふらついて時間を使ってしまったためタイムオーバーをしてしまう。難度が高かっただけに惜しい。
しかしあれだけのふらつきをこらえた気持ちの強さは素晴らしい。もはや技術ではなく、気持ちの強さが勝ったんだと感じた。
 
前日トップ通過でふらつきがほとんど見られなかったYan WANG選手(CHN)だが、この日は途中でふらつくところがいくつか見られ、着地にも乱れがあった。
この種目でKEY選手を抑えるとしたら彼女だと思っていたのだが、それは実現しなかった。
それでも落下なくまとめたのはさすがだ。6.4とDスコアの高さも群を抜いていたが、Eスコアで多く減点されてしまい、もったいなかった。
しかしジュニアでこのDスコアの演技ができるのは大変素晴らしいこと。今後がとても楽しみであり、また日本にとってはこわい存在になると思う。
 
脚の長さを生かした演技で印象に残っているのはAleea YU選手(CAN)。特に交差輪とびのときの脚の高さやラインが素晴らしく、見とれてしまった。
落下があるも、ターンなどは美しく演技全体を通して脚のラインがとても素敵な選手だった。
 
 
【ゆか】
 
 
この種目は、日本から杉原愛子選手と宮川紗江選手が出場。そして宮川選手は見事銅メダルを獲得した。
その宮川紗江選手の演技は、高くてキレのある実施。小柄な選手だが、それを感じさせないほどの大きなタンブリングを披露した。
特に終末技の伸身ダブルは高さだけでなく、姿勢もとても美しかった。
日本人選手はあまりやらない技で、国内大会ではなかなか見られない技を演技に入れていたので、視覚的にもとても楽しめた。
宮川選手は、この演技について、「8月の全日本ジュニアからやっている演技で、タンブリングにばかり意識がいってしまいっている。
まだ表現はあまりできていないので、これからは表現力もつけていきたい。」と言っていたが、そうは思えないほど踊りこなせていたように思う。
これでやり込んでいって完成度が上がってきたらどんな演技になるのか、今からワクワクしてしまう。
また、宮川選手は、今大会は「ゆかでメダルをとることが目標だった」と、試合後のインタビューで語り、
「メダルがとれてよかった」と、とても嬉しそうな表情を見せた。
 
杉原愛子選手は着地が少し乱れる演技となった。1本目のタンブリングでは、少し弾んでしまい、2本目は低い着地となってしまう。
しかし、ターンは決まり、後半の演技はきちんとまとめていた。特にダンス系は素晴らしく、
前半の2本のタンブリングのミスを引きずることなく、きちんと切り替えていい表現ができていたと思う。
話題のLauren HERNANDEZ選手(USA)は、今回もキレッキレの演技。やはり曲と振りが彼女にとても合っているように感じた。
かといって、曲や振りでごまかしているのではなく、彼女がきちんと表現し、演技しているのである。そこが彼女の素晴らしいところ。
彼女のもつ雰囲気と、あの強い世界観、そしてインパクトのある曲と振りを自分のものにしてしまうのだ。引き込まれないわけがない。
ラインオーバーはあったが、終末技の着地はしっかりと止めた。
そして、演技を振り返ると彼女の構成にはひねり系の技がひとつも入っていないのだ。
そういったところにもこだわりを感じた。
 
全体を通してとても高い着地をしていたのがKim JANAS選手(GER)。
ダンス系でも体を大きく使い、よく動いていた。途中足をとられてしまい、よろけてラインオーバーをするという珍しいミスがあったが、
それ以外はいい実施。もったいないミスをしてしまったせいか、演技終了後にはとても悔しそうな表情をしていた。
次の機会ではこの経験をもとにしたいい演技を期待したい。
やはりBailie KEY選手(USA)はここでも強かった。個人総合・種目別とここまで全てで金メダルをとる演技をし続けての最終種目のゆかだが、
これといったミスはなく、圧巻の演技。組み合わせを多くとる構成で、かなり盛り込んでいるにも関わらず、だ。
実際にDスコアは出場選手の中でダントツに高い6.1。もちろんゆかでも金メダル。
改めて、恐ろしい選手だということを実感させられる。こんなに素晴らしい選手と一緒に競えた他の選手たちも、きっととてもいい経験になったのではないか。
 
Andreea MUNTEANU選手(ROU)は小柄な選手だが、体全体を使って動いており、とても大きく見える演技をしていた。
タンブリングもかなり高さのある実施。小さな体でもこんなに迫力がでるものなのか……と正直とても驚いた。
空中姿勢も一切乱れることなく、見とれてしまう演技だった。
 
閉会式後に宮川選手に話を聞くと、「国際試合の経験はあるが、日本での国際試合は初めてだったので、たくさんの応援が嬉しかった」と語ってくれた。
やはり選手から見ても、この大会は、かなりあたたかい大会だったようだ。
宮川選手は今年の3月にカナダ国際に出場しており、「2度目の国際試合だったが、初めてのときより外国人選手と話ができた。」と嬉しそうにしていた。
確かに今大会では、ローテーションの合間合間で選手が楽しそうにやりとりする姿が、男子にも女子にも見受けられた。
お互いライバルではあるかもしれないが、こうして仲よくなりながら切磋琢磨できるのはとても大切なことだと思う。
文化や言葉の違いだけでなく、おそらく選手同士では、体操に対する取り組み方や練習の仕方の違いなどにも触れられたのではないだろうか。
数年後にオリンピックや世界選手権で同じメンバーが顔を合わせることが楽しみだ。
 
宮川選手は今後の目標については「来年行われるユース五輪に日本代表として出場すること」と答えてくれた。
その目標が達成できるように、これからの活躍に期待したいと思う。
 
PHOTO by  Yoshinori SAKAKIBARA   TEXT by umi