第69回全日本体操団体選手権~男子決勝<前半種目>

第1ローテーション~波乱の幕開け

昨年優勝のコナミスポーツクラブ体操競技部と2位の順天堂大は正ローテーション(ゆかで始まり、鉄棒で終わる)となった決勝。

先に演技をする順大にまず思わぬミスが出る。

第2演技者の谷川航は、精度の高い着地を強みとしている選手。着地の多いゆかはもっとも彼の力が発揮できる種目のはずだった。が、第2タンブリングでまさかの背中落ち。

13.700という谷川としては信じられない得点に終わってしまう。

「6-3-3制」(6人のエントリー選手の中の3人が演技し、その3演技の得点がすべて生きる)では、1つ大きなミスが出ると、それが命取りになることが多い。加藤凌平、野々村笙吾という二枚看板にとっての「順大最後の団体戦」をなんとしても優勝で終わりたいという思いは強かったはずの順大だが、1種目目から危険信号が灯ってしまった。

続いて演技に入った王者・コナミにも異変が起きる。内村航平、白井勝太郎と15点台を連続して出すも、今大会での引退を表明していた沖口誠が、いかにも沖口らしいキレのある演技は見せたが、終盤のシリーズでミスが出て14.400に終わってしまったのだ。

優勝候補の筆頭・コナミと対抗と見られていた順大ともにミスが出て、やや騒然となった第1ローテーションのゆかだったが、その傍らのあん馬では、日本体育大学がよいスタートを切っていた。

トップバッターの佐藤匠が力強い旋回のノーミス演技で14.450、続くキャプテン・岡準平は、しなやかで美しい演技で14.750。そして、今年の世界選手権で演技をすることは叶わなかったが初の代表入りを成し遂げた長谷川智将が登場。世界選手権の公式練習で傷めた股関節の故障も驚異の回復力でねじふせ、大学最後のこの大会に間に合わせてきた長谷川は、やや危ない局面はありながらも「あん馬職人」の意地を見せる演技をなんとか通しきり15.100。一番よいときの長谷川のあん馬の得点を思えば物足りないが、世界選手権で長谷川が負っただろう心身の傷を思えば、十分すぎるほどの復活演技だった。

日体大に続いてあん馬を行った徳洲会体操クラブは、山本雅賢がおり技を上げきれないというミス、さらに3番手で登場したあん馬のスペシャリスト・亀山耕平が圧倒的に美しい脚のラインを見せつける。しかし、この日は、細かいミスが散見する安定性を欠いた演技となり14.650という亀山のあん馬としては低い得点で終わってしまう誤算が生じた。

第1ローテーションを終えた時点で、岡村康宏、長野託也というつり輪のスペシャリストがスタートダッシュをかけた朝日生命が44.850でトップ、次いでコナミが44.750、3位には小倉佳祐の跳馬で得点を稼いだ44.600の早稲田大学、4位が44.300の日体大というスタートとなった。

 

 

第2ローテーション~日体大、首位に!

1種目目でミスの出たコナミと順大はあん馬、日体大はつり輪に進む。

コナミは山室が安定感のある演技を見せたあと、白井も途中までは堅実な演技を見せるが、演技終盤であん馬の上に座ってしまう形での落下。最終演技者の内村は、圧倒的に美しい演技を見せ貫録を示すがチーム得点は42.350とのびず。続く順大は、加藤、野々村としっかり演技をまとめ、加藤14.800、野々村14.500とよいスコアをそろえ、頼れるルーキー・萱和磨につなぐ。

世界選手権でも銅メダルを獲得した安定感抜群の萱のあん馬で、1種目目での出遅れを挽回する絶好のチャンス到来だった。ところが、ここで萱がまさかの落下。得点14.400は、この1年間、萱のあん馬では見なかった数字だった。結果、順大のあん馬は、43.700。日体大のあん馬の得点を超えることができなかった。

一方、つり輪に進んだ日体大は、第1演技者の鈴木康平が、力強く確実な演技で着地までピタリと止めて15.000をマークすると、続く佐藤匠も中盤でわずかな乱れはあったものの着地はピタリと止めて14.750。さらに神本雄也は演技中盤での力技の見せ場を決めて場内をどよめかせ、着地はやや動いたものの15.350のハイスコアをマーク。

2種目を終えた時点で、日体大がチーム得点を89.400とし、一気に首位に躍り出た。順大は87.800まで得点を伸ばし3位、コナミは87.100でまさかの6位。2種目目にして予想だにしなかった展開となった。

 

 

第3ローテーション~徳洲会が跳馬の猛攻で3位に上がる

順大のつり輪は、加藤、市瀬達貴、野々村というオーダー。加藤と野々村は大きなミスなく演技をまとめたが、倒立のわずかな揺れなどもあり、やや点数を伸ばしきれない。とくに野々村のつり輪が14.900と15点台にのせられなかったのは順大にとっては計算外だったのではないか。しかし、このつり輪が最初の登場となった市瀬が、筋骨隆々とした上半身がだてではないことを示す圧巻の演技を見せる。力強さがあると同時に、足先まで神経の行き届いた美しさも見せつけ15.300をたたきだし、順大のつり輪の得点を44.850まで押し上げた。この時点で順大のチーム得点は、132.650となった。

順大のつり輪と並行して行われた日体大の跳馬では、最初に鈴木康平が余裕ある跳躍をきれいに決めて14,700。鈴木はつり輪と跳馬のみのエントリーだったが、どちらの種目もきっちりと自分の役割を果たした。続く岡は着地でラインオーバーがあったものの減点の少ない美しい跳躍で14.950を出し、跳馬が最初の種目となる白井健三につなぐ。白井は、先輩たちの頑張りに応えるかのように、「ユルチェンコ3回ひねり」をすばらしい実施で跳ぶ。着地はわずかに一歩弾んでしまったが、15.450をマーク。3種目目までのチームの合計得点を134.500とした。

第3ローテーションで圧巻だったのは、徳洲会の跳馬だ。白井健三にも負けじとばかりに齋藤優佑がヨー2、佐藤巧がロペスを見事に決める。どちらも着地はわずかに動いたものの齋藤15.300、佐藤15.500と跳馬でのチーム得点ではトップに立つ45.400を獲得。3種目終了時点でのチーム得点は、132.850となり、この時点で順大を抜いた。

苦しい展開となったコナミは、山室光史が登場するつり輪で巻き返したいところだったが、山室は15.600と期待とおりの高得点をあげたものの、白井の着地で手をつくミスがあり、つり輪のチーム得点は43.850と伸びず、3種目終了時の得点は130,950で5位と予想だにしなかった順位にあまんじることとなる。

前半種目を終えて、1位日体大、2位にはつり輪の岡村康宏が15.600、平行棒で山本翔一が15.200を上げ、ほかの選手にも大きなミスなくここまでの9演技をまとめてきた朝日生命が踏みとどまっていた。3位に順大、4位が徳洲会。そしてコナミが5位という、戦前の予想を大きく覆す展開となり、後半種目を迎えることとなった。

PHOTO:Yuki  SUENAGA       TEXT:Keiko SHIINA