唯一無二~亀山耕平(徳洲会体操クラブ)
あん馬の強い選手が増えた今の日本では、亀山耕平よりも高いD得点を出せる選手もいる。
亀山よりも高いE得点を出す選手もいる。
しかし、亀山のもつ、バレエダンサーさながらの美しい脚のラインをもった選手はいない。
日本にはもちろん、世界にもいない。
そんな唯一無二の存在である亀山が、ほぼノーミスの演技をしても、五輪には届かなかった。
それは、「体操競技」という枠の中では、決して不当な判断ではないと思う。
それでも、亀山のあん馬を五輪では見られないのだ、という現実を受け止めるのは難しい。
あん馬の強い選手はほかにもいる、これからも出てくるだろう。
しかし、亀山耕平は一人しかいない。
この先もずっと「伝説」となり語り継がれる「究極の美しさをもったあん馬」。
それが亀山のあん馬だった。
全日本種目別選手権決勝で見せた、亀山耕平の人生を懸けたあん馬は、悲しいまでに誇り高く美しかった。
結果は、残酷なものだったかもしれないが、あの演技を見ることができたことに感謝している人はたくさんいる。
そして、誰もがあの演技を忘れないだろう。
PHOTO:Yuu MATSUDA TEXT:Keiko SHIINA