2013国際ジュニア体操競技選手権大会/男子種目別(ゆか・つり輪・平行棒)

男子種目別の1種目目のゆか。
この日最初の演技者はNile WILSON選手(GBR)。
種目別で1人目の演技はとても緊張感のある空気のなかで実施をしなければならない。
しかし、司会進行の池谷幸雄さんが盛り上げてくださったこともあり、海外選手からの演技順にも関わらず、
日本の応援団の「ガンバー!」の声が響く。ぴりっとしていた空気が絶妙に和らぎ、おそらく選手が集中しやすい空気に変わっていたことに気づく。
 
WILSON選手はとても丁寧な実施。最後は着地をぴたりと止め、日本の応援に応えるような実施。
演技終了後、応援団に向かって手を振るなど、1人目からとてもいい雰囲気でスタートできたと思う。
2人目のAngelo ASSUMPCAO選手(BRA)はとっても高いタンブリング。前の雰囲気を上手く利用した力強いタンブリングで、
今度は自らで会場の熱をあげる。ダイナミックな演技だが、しっかりと着地を止めてくる。後半は着地が低くなったり、
大きくはねたりと少し惜しかったが、日本では見られないパワフルな演技を見せた。それこそブラジルナショナル選手のSASAKI選手を思い出させるような演技。
 
日本の萱和磨選手は、やはり丁寧で美しい実施。特に体線の美しさが目立って見えた。
空中姿勢だけでなく、ひねりを解く姿勢までもが美しかった。まるでつぼみが開く瞬間を見ているような神秘的なものさえ感じられ、個人的にとても好きな動き。
やはり着地はどれも1歩程度でおさめる。
 
 
繊細で綺麗な空中姿勢で、なおかつ高さのあるタンブリングで優勝したのが、Di WU選手(CHN)。
ひねり系が多く難度も高い演技構成だが、綺麗な実施をしようとする意識が伝わってくる演技だった。
谷川航選手は力強く、かつ美しさもある実施だった。
例えるならASSUMPCAO選手と萱選手を足して2で割ったような演技。ダイナミックさと美しさをあわせ持つ選手。
後半はほとんど着地を止め、演技終了後には応援席にいた弟の翔選手から「お兄ちゃーん!」の声がかかる。ついついほっこりしてしまった。
Remi CERC選手(FRA)は前方系の技を多くやっていて、パワフルかつスピード感あふれる実施。
体格や雰囲気からもとてもジュニアには見えない選手だが、演技も勢いのある演技で、この選手はどの辺が「ジュニア」なのか?と思ってしまった。
ゆかでは優勝者はいなかったものの、谷川選手が2位、萱選手が3位と日本の2人が表彰台にのぼる結果になった。
 
 
今大会で唯一日本人選手のメダル獲得には至らなかったがつり輪。
萱選手はここでも美しい倒立を決める。ほぼ動かない丁寧な実施。着地も止めてガッツポーズ!
 
Fabian DELUNA選手(USA)は、力技と振動系の切り替えがはっきりしていて、とてもメリハリのある演技を魅せる。
静と動の差が見事に表れていて、つり輪とはこういうものか、とはっとさせられた。
 
 
やはりIlya KIBARTAS選手(RUS)は強い。身体も腕も手首もまっすぐな中水平。全てが同一線上に重なっていて、1本の線のような実施で驚いた。
振動系の技から倒立に収めるのがとても綺麗で、全くぶれない。迫力のある演技で、もちろんこの種目優勝。
 
力強さを一番感じやすいつり輪だが、その中でも美しさが光っていたのはBrinn BEVAN選手(GBR)。
静止しているはずの倒立や力技も含め、とても流れのある演技にただただうっとりしてしまう。着地も1歩にまとめた。
谷川航選手は、他の選手に対して、圧倒的に力技の静止時間が長い。それもあってか、とても丁寧に演技しているように見えた。
静止時間はたっぷりなのに少しも疲れを感じさせなかった。
Artur DALALOYAN選手(RUS)も同じロシアのKIBARTAS選手のように、力技では全くぶれない。
見事に動かないので、目を疑ってしまうほど。見ているといつの間にか引き込まれてしまうような演技。
着地もピタリと止め、2位。この種目、ロシアはワンツーフィニッシュとなった。
 
 
平行棒でも萱選手は表彰台にのぼる。やはりこの種目でも綺麗で正確な演技だった。
着地で重心が後ろにいってしまうが、どうにかこらえて大きく後ろに1歩。
 
 
Nile WILSON選手(GBR)はシャルロがとても印象的。姿勢も大変綺麗で、何より静止時間の長さに驚いた。
あんなに長いシャルロは初めて見たかもしれない。それがジュニアの大会というのにも驚く。
その後も足先まで非常に綺麗な実施で、この種目の優勝者となった。
今大会美しい演技をする、と話題になっているBrinn BEVAN選手(GBR)。
倒立が大変美しく、また静止時間を長めにとってゆっくり大きな演技をする。長い時間で美しい演技をするので、みとれてしまう。
もうたまらないのである。この平行棒では前日にも会場を湧かせたこともあり、応援席からも声がかかる。
前日よりは点が伸びなかったが、演技後に応援団に手を振る姿も印象に残る。
 
倉島大地選手は今大会少しミスが続いてしまっていた。この日初登場ということもあり、応援団も盛り上がる。
倒立に収めるときの動きが美しい。こしのある筆がしなるときのような繊細かつ線の綺麗な動き。
まさにその筆先(足先)から水滴を飛ばすような、「シュピッ」と音が聞こえてくるような、素晴らしくダイナミックな演技に魅せられた。
この種目はイギリスの2人に萱選手が挟まれる形に。つり輪ではロシアだったが、平行棒ではイギリスが強かった。
そんな中で萱選手は6種目中2種目で優勝、2種目で表彰台という素晴らしい成績を残した。
どうやらこれから日本を引っ張っていく選手のひとりになることは確実なようだ。
 
おそらくどの選手も、これから各国の代表になってくるような選手ばかり。
今回の成績だけでなく、会場で感じたそれぞれの選手の個性や雰囲気を忘れないようにしたい。
そして今後どのように成長して、どのように変化していくかを見届けたいと思わせてくれる大会となった。
 
PHOTO by Yoshinori SAKAKIBARA   TEXT by umi