2013国際ジュニア体操競技大会~日本男子、種目別で3つの金!

本日行われた2013国際ジュニア体操競技選手権種目別決勝で、あん馬、鉄棒で萱和磨選手、跳馬で谷川航選手が優勝を果たした。

 

あん馬では、昨日は珍しくバランスを崩す場面が見られた萱選手であったが、今日はいつも通り、もしくはいつも以上に完璧な実施だった。
腰の位置が高く、スピード感のある旋回。おり技に持っていくところでも全く停滞が見られず、旋回かのようなスピードでスムーズにあげており、
あっという間に着地。昨日のミスは引きずらず、ガッツポーズ!
 
 
そしてこの種目、なんと日本人ワンツー!
2位の荒屋敷響貴選手も腰が高く、なめらかで綺麗な旋回をしていた。危なげなく通し、その美しさにうっとりしているうちに演技が終わってしまっていた。
驚いたのは中国のXuwei HU選手(CHN)。力強い演技でブスナリなど難度の高い技をいくつも盛り込むが、かなり力を使っており惜しくも落下。
それでも終末技の難度を下げずにやりきった姿勢からは、あくまでも自分の演技をやるんだという気持ちが伝わってきた。
これで完成度があがってくると恐ろしい存在である。
 
種目別は、同時進行ではなく1人ひとり演技を行うため、海外の選手が演技をするときも客席から声援がかかるような雰囲気だった。
このあん馬は落下の怖い種目。演技をしている選手がバランスを崩しそうになると、客席からも声がかかり、そのおかげかどうかはわからないが、
もちなおす場面がいくつか見られた。その光景や空気はとても温かく、素晴らしいと感じた。
 
 
跳馬では、個人総合2位の谷川航選手が優勝。
昨日の跳馬の得点も14.700と萱選手と並んで1位だったが、今日は昨日よりも綺麗にまとめ、14.950という実施。
助走からスピードにのり、その勢いを上手く跳躍に生かした高さのある力強い演技だった。空中姿勢も大変綺麗で着地も1歩にまとめた。
 
 
昨日同率1位だった萱選手は着地1歩で綺麗にまとめるも、ひねりが半分少なくなり難度をひとつ下げてしまう形になった。
2位のFabian DELUNA選手(USA)も高さのある跳躍で着地を止める。
Angelo ASSUMPCAO選手(BRA)も大きくて高い実施。着地を1歩にまとめて3位。
また、予選5位のRene COURNOYER選手(CAN)だが、なかなか日本人選手のやらないローチェを実施。勢いがあってよかったが、
着地で尻もちをついてしまい、残念だった。今後に期待したい。
日本ではなかなか見る機会のない演技なので、こういうところは国際大会のいいところである。
 
そして、萱選手は鉄棒でも優勝を果たした。
萱選手の演技はかなりスピードに乗っており、流れのある実施だった。着地もピッタリ止めて、応援団に向けて今日1番のガッツポーズが出た。
それもそのはず、昨日は個人総合で6種目、今日も種目別6種目全ての種目に出場したのである。
その12種目やって最後の演技でパーフェクト!優勝する演技だったのだ。
 
 
2位のXuwei HU選手(CHN)もスピード感のある演技。ひねり系の技から離れ技などと組み合わせ加点を取ってきたり、技をたくさん盛り込んだ演技だった。
そのせいか少し体が崩れているように見られた。が、しかしさすがの難度(6.0)で、14.450という高得点。
3位のArtur DALALOYAN選手(RUS)は倒立やひねりがとても上手な選手。離れ技も高さがあり、倒立も綺麗で、大きく美しい演技だった。
着地もピタリと決めたこともあり、かなりの好印象だった。今後注目していきたい。
この種目に出場したもう1人の日本人選手倉島大地選手は、昨日の演技では日本人トップ・全体2位で決勝に通過するも、途中停滞してしまい車輪が戻ってしまう場面も。
全体的に雄大な演技だったが、着地も大きく1歩。
しかし、ミスがあっても応援団はとても温かく声をかけており、そのやりとりがやはり素敵だった。当たり前のことかもしれないが、とても大切なことだと思う。
 
最終演技者のNile WILSON選手(BGR)が演技の途中、伸身のトカチェフでバーから少し離れてしまい、掴めずに落下したときも、客席から「ガンバ」の声と拍手が起きる。
もう一度伸身のトカチェフにチャレンジするも2度目の落下。それでもナイスチャレンジと言わんばかりの拍手が湧く。とても素敵な光景だった。
WILSON選手は始めの技のコールマンで、少しバーに近づくも上手く掴み場内を湧かせた。ひねりも上手く、いい実施だっただけにもったいなかった。
しかし失敗してもまたチャレンジするその勇気は素晴らしく、点数は低かったがとても輝いていた。
このWILSON選手に対する大きな拍手に見られるように、今日の場内は全体的に温かく、とても良い雰囲気だった。
 
競技終了後のインタビューで、萱選手が、
「初めての国際大会だったが、地元開催ということもあり、応援が力になった。いつも通り上手くやれて良かった。」と語っていたことからも、会場の雰囲気が伺える。
個人総合とあん馬以外の種目でもたくさんメダルをとった萱選手だが、「やはり個人総合を1番とりたかった。海外の選手も強かったけど、上手く集中できた」と言い、
個人で優勝できたことがとても嬉しそうだった。
自分の良さは「どんな状況でも失敗しないで、安定した演技がいつも通りできること」だと答えた萱選手だが、やはり「跳馬でひねりが少なくなってしまったのは残念だった」と言っていた。
あん馬で昨日のミスを引きずらなかったのは「先生にも自信をもってやれと言われ、自信を持って集中して振り切った。」と答えた。
 
これからきっと国際大会に出場することも増えるだろうが、遠征になったときもしっかり自分のペースで試合を運ぶ事ができるかどうかが重要になってくると思う。
今回のように、跳馬でひねりが少なくなったりしても次の演技に引きずらないところや、あん馬での気持ちの切り替えの早さからも、
精神面のコントロールに長けていることが感じられ、今後もとても楽しみな選手である。期待したい。
 
PHOTO by Tatsuya OTSUKA    TEXT by umi