全日本選手権に向けて~青森大学編

9月19~21日に行われた男子クラブ選手権では、葛西麗音(青森大学3年)が個人総合優勝を果たした。

さらに、2位には高山蓮音(青森大学1年)、3位には本田歩夢(青森大学3年)が入り、「青森大学、強し!」という印象を残した。

しかし、大会後の斉藤監督は、

「全日本インカレがひどかったので、今回はなんとか持ち直せてよかったです。」

と、歓喜というよりはほっとした、といった表情だった。

改めて全日本インカレを振り返ってみると、高山はここでも2位(凄い!)だが、葛西は6位、本田は7位。しかも、2人とも前半種目ではかなり良かったのだが、後半2種目で崩れるという良くない展開の試合をしてしまっていた。

そして、その下は桒原碧都(4年)の12位、森園滉貴(4年)が15位。桒原は、東日本インカレでも11位だったことを思えば、力を出し切れていたと言えるだろう。とくにリングではこの種目では4位にあたる高得点をマークしている。

しかし、森園は東日本インカレでは6位だったのが、全日本インカレでは15位。全日本選手権出場枠には入ったとはいえ、喜べなかったのではないか。

結果、全日本インカレから全日本選手権に進める18位までに入っていたのは青森大学ではこの5人だけだった。昨年の全日本選手権には、青森大学からは8人の選手が出場していることを思えば、この「インカレからの全日本通過が5人」というのは、青森大学としては危機的状況だったのだ。

 

全日本インカレから男子クラブ選手権までの1か月弱。彼らがどんな思いで、どんな練習をしてきたのかはわからない。

が、クラブ選手権での演技を見れば、少しばかり想像はできる。

クラブ選手権は、ロープ、クラブが1日目、スティック、リングが2日目という変則的な日程ではあったが、全日本インカレでは後半種目で苦い思いをした葛西は、ロープで5位、クラブは1位。

本田も、ロープ2位、クラブ4位と「後半種目の悪夢」を払拭した。

高山は1種目目のロープで出遅れたが他3種目はきっちりTOP3に入る高得点をあげ、優勝争いに加われる力があることを証明してみせた。

さらに、森園もロープでは1位、リングでは7位と気を吐き、クラブ選手権では個人総合8位。

東日本インカレでは4位と「4年生の貫禄」を示しながら、全日本インカレではまさかの20位に沈んだ藤本太陽(4年)も12位で、全日本出場を決める。

全日本インカレでは19位という「もっとも悔しい順位」にあまんじた東凰雅(1年)も10位に入り、クラブ選手権からの全日本選手権出場権を獲得。

さらには、東日本インカレでは青森大学内での順位が9位だったため、全日本インカレに進めなかった誉士太陽向(2年)も15位となり、全日本選手権への出場を決めた。

結果的には、青森大学からは、昨年と同じ8人の選手が全日本選手権に出場するが、全日本インカレで7名の全日本出場が決まっていた昨年とはその道のりはかなり違う。苦しい思いをしてきた分、一回りしぶとく、強くなった青森大学の個人選手たちを、全日本選手権では見られるのではないか。そんな期待が膨らんでくる。

ちなみに、昨年は、青森大学から全日本インカレに出場した8人のうち、本田歩夢だけがインカレで全日本選手権の出場権を獲得できなかった。本田はどれほど悔しかっただろうと思うが、おそらくそれを糧にして彼は、1か月後のクラブ選手権では起死回生の3位入賞。見事、全日本選手権の出場権を獲得し、全日本選手権では個人総合8位と、昨年の青森大学の中では最高位となる成績をあげている。

あれほど練習してきたのに思うような演技ができなかったとき、望んでいた結果が得られなかったとき、誰もが絶望的な気持ちになるだろう。自分のやってきたことはなんだったのか? そんな思いにも苛まれるだろう。

だが、そこで立ち止まるのではなく、次に向かって最大限の努力をした者だけに「得られるもの」がある。

それが試合での結果という形ではなかったとしてもきっとある。

今年の青森大学の個人選手たちは、紆余曲折を経てきているからこそ、昨年の本田歩夢が見せてくれたような強さを見せてくれると期待したい。

<写真提供:naoko> ※桒原選手除く