頑張れ! 花大ルーキーズ~関西学生体操新人戦

先週行われた全日本選手権の興奮もさめやらぬ、ですが、もう今週からは大会や演技会が目白押しです。

本当に今の新体操はシーズンオフがなく、選手や指導者は大変だな、と思いますが、見る機会が多くてファンにとっては嬉しいですね。

さて。

この週末のイベントといえば、多摩祭で開催される国士舘大学新体操部の演技会と、花園大学で行われる「関西学生体操新人戦」です。国士舘では、先日の全日本選手権でも活躍した4年生の個人選手たちの演技や、演技会でしか見られない集団演技も見ることができます。

そして、花園大学で行われる「関西学生新人戦」には、現時点での3年生以下の選手たちが出場するので、来年以降の注目株を見つけるのには最適な大会と言えるでしょう。

まだ、全日本選手権が終わったばかりで、気が早いと思われそうですが、来年のことを考えたときに、「絶対に注目!」してほしいのが花園大学の個人選手たちです。

花園大学には、今年、個人選手が3人入りました。

言葉を選ばずにいえば、高校時代には突出した実績は残していない選手たちです。

しかし、関西インカレ、西日本インカレ、全日本インカレ、クラブ選手権と経験を重ねるごとに、彼らの成長は著しく、熱心なファンたちの中でも「花大の1年生」は、ひとしきり話題になっていました。今年は、誰も全日本選手権に駒を進めることはできませんでしたが、いずれは、と期待させるものがある。そんな選手たちだと思います。

今日の新人戦は、9月のクラブ選手権以来2か月ぶりの試合です。全日本選手権で準優勝と大活躍した尾上達哉選手がコーチを務める現在の花大で、彼らは日々、尾上選手を見て、教えてもらい刺激を受けているはずです。高校時代には、目立った成績をもっていないことも、大きなのびしろと言えるでしょう。

今日の新人戦を見に行かれる方は、ぜひ花園大学の選手たちに注目してみてください。

 

▼大坪幸生(小松島高校出身)

 ※2023年インターハイ28位⇒2024年全日本インカレ35位⇒クラブ選手権50位

 

▼丸山和孝(松商学園出身)

 ※2023年インターハイ7位⇒2024年全日本インカレ25位⇒クラブ選手権34位

 

▼荒槇建太(広陵高校出身)

 ※2023年インターハイ25位⇒2024年全日本インカレ30位⇒クラブ選手権43位

 

大坪は、もともとは、高校までで新体操は卒業するつもりだったという。

それが、高校2年、3年のときに竹内陸監督から「花大で続けないか」と声をかけられたのだそうだ。

インターハイでは28位と奮わなかったが、このときは怪我を抱えての大会で、タンブリングも十分にできず、悔しさが残る大会となった。それでも、万全なコンディションではない中でもインターハイに向けて練習していたこの時期が、それまでで一番充実した練習ができ、そうして練習できることが楽しかったという大坪。

もとより、大村光星選手や石井龍平選手などにあこがれて、続けるならば花大で個人選手をやりたいと思っていたという彼の決意はこのインターハイでの経験で固まった。

自分が「無名の選手」だということは自覚している。

でも、そんな「誰?」と言われる選手が、大学での4年間で「やばい」と言われるようになり、全日本選手権に出場できるような選手になれれば、母校である小松島高校や、恵まれない環境で新体操をやっている高校生にとって希望になるんじゃないか、という思いも持っている。

尾上選手を間近で見ることができ、竹内監督から熱意のある指導を受けられる、投げの練習も存分にできる、そんな花大の環境で自分も成長できる手ごたえを感じることができている。さらに、大学で初めてできた「同期」の存在も大きい。3人で切磋琢磨しながら、やっていけばきっと。彼の持ち前の柔軟性や美しい動きは、いざ演技をノーミスで通せるようになったときには、おおいに評価されるようになるに違いない。

なによりも、「新体操大好き! これからだ!」という気持ちをもったまま大学生になれた。それが彼の最大の強みだ。

どこまで伸びるのか、楽しみで仕方ない。

 

丸山は、花大のOBである大村光星選手と同じ、長野県のWingまつもとRGで育ってきた選手だ。

テレビ信州杯や国士舘カップなど多くの大会にも出場しており、見る機会は多かった。

それなりにうまい選手ではあった。インターハイでも高3のときは7位。

新体操強豪県でもなく、強豪校でもない高校の選手としては十分立派な成績だが、おそらく、本人は不完全燃焼だったのだろう。

それは、大学生になってからの彼の演技を見てわかった。

高校時代の彼は、一言でいえば「小さくまとまっていた」。だからそれなりの点数と順位は得ていたが、印象に残るとまではいかない選手であり、演技をしていた。

ところが、大学生になったとたん、別人のように演技が変わった。

そこには、長野県の先輩である大村選手の影響が大きかった、と彼はいう。

「もともと花大の選手たちの演技が好きでした。他にないこだわりが感じられて。」そこに、2023年の大村選手の大ブレイクが大きな刺激になった。大村選手のような「記憶に残る選手」になりたい、そんな希望と刺激をもらった。

たしかに。

彼のもつ「強み」は、大村選手に似ている。基本に忠実で美しい体操、つま先の伸びやかかとの高さ、巧みな手具操作。

そのすべてが噛み合い、ノーミス演技ができれば、大村選手のような爆発力をもつ可能性が十分に感じられる。

本人も「自分には突出したものはないが、見ていて飽きない動きや操作で、自分らしさや意外性を出せるようになりたい」という。

それが完成したとき、彼はどこまでいけるのか? 楽しみだ。

 

荒槇は、東本侑也を輩出した広島県の広陵高校の出身だ。

しかし、広陵高校は決して練習環境には恵まれていなかった。それでも、東本と同じ広島ジムフレンズで育った彼もまた、タンブリングには自信をもっている。

その脚の強さを生かして「この選手、凄い」と言われるような選手になりたい。

そんな希望をもって進学してきた。

花園大学を選んだのは、竹内監督や尾上選手(コーチ)に教えてもらえるという環境に魅力を感じたから。

また、全日本選手権で優勝した2013年の花園大学団体の演技が大好きで、何回も見ていたからだという。

入学してみたら同期の個人選手2人にも恵まれ、練習量もぐっと増えた。

自分にはない良さをもった同期たちの動きや、尾上選手の動きを間近に見て、多くのことを学べているという。

 

10月19日、全日本選手権前に花園大学の練習を見学させてもらった。

全日本選手権を控えている団体や尾上コーチだけでなく、1年生の3人も熱の入った練習をしていた。

同期が3人というのも、まさに切磋琢磨という感じでよい環境なのだな、ということが伝わってくる練習ぶりだった。

そして、尾上コーチ、竹内監督の存在の大きさも感じられた。

昨年まで学生だった尾上コーチはもちろんこと、監督歴すでに4年目ではあるが、今でも学生に見える竹内監督も、選手たちにとっては頼もしい「兄貴分」だ。

選手たちにより多くのことを教えたい、伝えたいという熱意が伝わってくる指導者がいて、「学びたい!」「ここから伸びたい!」という思いをもった選手たちがいる。

一時期に比べると、人数も減り、競技成績も落ちているように見える花園大学だが、今の規模、今の状況だからこそ得られるものがあると思う。

「花園大学はこれからだ!」

このルーキー3人はそれを証明してくれるに違いない。