国スポ男子・台風の目「三重選抜」に注目!
週明けの9月23~24日、今年から「国民スポーツ大会」と名称を改めた国民体育大会で、2008年以来に男子新体操競技が行われる。
1日目には個人競技(各チーム4種目×1人)、2日目に団体競技が行われるが、男子は全国のブロック大会を勝ち抜いてきた10チームが出場するが(女子は23チーム)、その出場チームは以下のとおり。
① 三重県(三重選抜)
② 富山県(新湊高校)
③ 大阪府(清風高校)
④ 岡山県(井原高校)
⑤ 北海道(恵庭南高校)
⑥ 佐賀県(神埼清明高校)
⑦ 神奈川県(光明学園相模原高校)
⑧ 青森県(青森山田高校)
⑨ 鹿児島県(鹿児島実業高校)
⑩ 香川県(坂出工業高校)
開催県にははじめから出場権があるため、九州ブロックからは佐賀と鹿児島の2県が出場するが、ほかはブロックから1県しか出場できないため、出場チームはわずか「10」という狭き門だが、一時は休止に追い込まれた男子新体操が国スポの舞台に戻ってくることは、本当に喜ばしいことだと思う。しかも、開催地は男子新体操強県の佐賀、会場はピカピカのSAGAアリーナ!
国体からはずされ、存続の危機と言われた2000年代からその炎を消さないために、男子新体操界をあげて様々な努力を重ねてきた、その集大成が今回の国スポであり、ここが男子新体操の新しい時代の幕開けになるに違いない。
その記念すべき大会で、旋風を巻き起こしそうなのが個人試技順1番の「三重選抜」だ。
男子はほとんどの県がその県の強豪校が単独で代表チームになっているが、東海代表の三重県だけは「三重選抜」、つまり1校単独ではなく複数の所属による混合チームだ。が、混合とはあくまでも「1つの高校ではない」という意味で、三重選抜は1つのクラブチームおよびそのクラブチーム出身者によるチームだ。
三重選抜のメンバーの多くは、高田高校の選手たちだが、Leo RGのジュニア選手も混じっている。だから「三重選抜」なのだ。
高田高校は、2021~2022年全日本チャンピオン・堀孝輔が監督を務め、近年めきめきと力をつけてきているが、高校単独での団体ではまだ目立った成果は出せていない。しかし、今回、国スポ出場を志し、ジュニア選手を含めたチームを組み、「三重選抜」として、5月の全日本男子新体操団体選手権に出場。そこで、2位になりすでに全日本選手権への出場権を獲得している。
堀監督をはじめ、今年のインターハイを制した山本響士朗など、Leo RGの選手たちは、個人競技での実績は申し分ない。後に続く選手たちも育ってきている。が、団体では2021年までさかのぼらないと全日本ジュニア出場がなく、この年も15位。団体での実績は十分とは言えない。
ルール改正を重ね、徐々に改善されてきてはいるが、男子新体操の団体競技は、実績やブランド力がものをいう傾向がある。高得点を出すのに必要十分な演技内容を最小限のミスで演じるだけでは、長年、評価されてきたチームのような得点がいきなり出ることは少ないのだ。三重選抜が、今年の団体選手権で出した14.600は、そんな思い込みを覆すものだった。
14.600の内訳をみると、構成7.750、実施6.850で、構成点は出場した23チームの中で4番目だが、実施は2位。それも3位のチームに0.550という大きな差をつけている。点数から想像するに、ジュニア選手も入っているだけに無理な構成にはせず、正確・確実な実施で点数を取りこぼさない、という戦略なのだろう。
さらにこのチームが侮れない! と感じさせるのは、個人競技での平均値の高さだ。
先日、岐阜で行われた男子クラブ選手権に、三重選抜の選手が7名出場しており、この中から4名が国スポに出場すると思われるが、インターハイ覇者・山本はすでに17点台をたたき出す力をもっている。関戸銀次は14.800(スティック)、村田駿は14.250(リング)、佐川玄太もリング、クラブで13点台をマークする力がある。
しかも、岐阜では全員が4種目に出場している。国スポでは個人は1種目でよいため、得意種目にしぼって練習すればさらに得点の上積みも期待できるだろう。
なんと言っても、彼らの演技の思い切りのよさ、難しい手具操作にも果敢に挑戦しつつ、単なる技の羅列ではないものを志しているところなどは、まさに堀孝輔を生んだLeo RG育ちならでは、と感じる。よい意味で彼らの本質は個人選手なんだと思う。そんな彼らが、団体でも評価を得て、岐阜、愛知などがひしめく東海ブロックを勝ち抜いて国スポに駒を進められたことが、快挙であり驚異なのだ。
伝統的に、高校生の男子新体操は団体メインで取り組む学校が多く、個人競技も必要になる国体が休止していた間、ますますその傾向は強くなっていた。団体では常に優勝を争っている神埼清明、井原、青森山田でもそれは同様で、インターハイに出場する個人1名だけはそれなりに強くても、他の選手は手具をもっての演技をほとんどしたことがない、というケースも多かった。
が、今年は、ついに国スポ復帰ということで、開催県である佐賀の神埼清明を筆頭に、ここ数年は、かなり個人種目にも力を入れてきている。九州国スポでの佐賀県は個人が全員15点台にのせ、強化の成果を見せつけたが、それでも、高校生にとっては14点台も簡単に出せる点数ではない。個人競技に関しては年齢以上に経験も積んできている三重選抜の選手たちが、まず個人種目で彼らの力を出し切ることができれば、有力視されている佐賀、岡山、青森などにも食らいつくことができるかもしれない。
男子クラブ選手権で見た「三重選抜」の選手たちの演技は、そんな期待をもたせるものだった。
個人競技での三重県の出番は、不利といわれる1番だが、これもうまくすれば有利になる可能性もある。三重選抜レベルの演技を最初にガツンと見せられると、続く選手たちはかなり良い演技をしないと、それを超える点数が出にくい。
後に続く選手、チームにプレッシャーをかけるためにも、試技順1番の三重県がやることはひとつ。
ベストを尽くす。
それだけだ。
<写真提供:naoko>※2024男子クラブ選手権にて撮影
※国スポは以下の「国スポチャンネル」でライブ配信されます。
豪華な解説も聴けるみたいです。お楽しみに!
https://japangamestv.japan-sports.or.jp/kyougi/gymnastic/page/5