九州小学生大会で見せた!「シン・神埼」の衝撃

8月12日、宮崎市総合体育館にて「第38回九州小学生体操大会<新体操>」が開催された。

九州の各県での予選を勝ち抜いてきたチーム、選手による九州チャンピオンを決める大会で、男女ともにハイレベルな熱戦が繰り広げられた。

この大会では、男女とも団体競技、個人競技が行われるが女子団体は、6人制の徒手団体(演技中に手具をもつパートを入れる独特のルール)と個人は2種目(今年はクラブ、リボン)、男子は5~6人制の徒手団体と個人は2種目(徒手とスティック)で競われる。全日本クラブチャイルドが始まるより前から九州の小学生たちにとっては大きな目標となってきた大会だ。

近年は、スポーツにおいて小学生のときから「全国大会」を開催することの是非が問われている。まだ成長過程にある小学生が、「小学生チャンピオン」を目指し、勝利至上主義に陥っていくことの弊害が指摘されているのだ。今回、改めて九州小学生大会を見て、そのことを考えた。たしかにそういった弊害はなくはないだろうと思った。しかし、小学生大会だからこそできること、もあるなと感じた。

とくに、男子において衝撃的だったのが神埼ジュニアの選手たちの演技だった。団体では、3,4年生中心の神埼ジュニア新体操クラブが優勝、2位も神埼RGと神埼がワンツーフィニッシュを決めた(ちなみに2年連続)。

男子新体操のレベルが高い九州での2年連続のこの成績が驚異的であることはもちろんだが、その演技内容も凄まじかった。3,4年生中心の神埼ジュニア新体操クラブの5人がフロアに立つと、フロアがやけに広く見えた。そのくらい小さな選手たちなのだが、いざ演技が始まるとその小ささも、スピード感をより増して見せるアドバンテージになった。体は小さくとも、動きはどこまでも大きく、思い切りよく、そしてタンブリングでは到底小学生とは思えない高難度の技を披露した。それでいて、まだ幼い選手たちながら、自分たちの演技で「見せようとするもの」がしっかり感じられる演技だった。技術も高いのだが、なによりもそのことに一番心うたれた。

※  ↓  九州小学生大会優勝の演技動画はこちら。

https://www.youtube.com/watch?v=I5-ooekps7A

 

2位の神埼RGは、以前から神埼ジュニアがやっている「おなじみの演技」だったが、今年の2月、6月に見たときよりもぐっと成長を感じられる演技だった。前に見たときは、県予選前で、他にも数チーム、県予選を勝ち抜いて九州小学生大会に出場することを目指して切磋琢磨している最中だった。その日の出来によってどこが勝つかわからないくらいの競り合いの中で、この大会を目指して頑張ってきた成果がこれなんだな、と思うと感動してしまう、そんな演技だった。小学生が、大会出場を懸けて競い合い、ときには出場かなわず涙するような姿を見ると、苛酷だと感じてしまうこともあるかと思う。しかし、女子の新体操の世界では、チャイルド競技が盛んになった20年以上前からあったことだ。まだまだ競技人口が少なく、やっているだけで大事にしてもらえることが多い男子新体操の中でも、こういった競争の中で成長していく選手たちが出てきていることも頼もしく感じた。

※  ↓  九州小学生大会準優勝の演技はこちら。

https://www.youtube.com/watch?v=BF92hU8LV8w

 

そして、小学生の大会の意味を改めて感じさせてくれたのは、個人競技だった。男子の個人は、まずスティックの演技を行ったが、こちらはどの選手もさすがにまだ拙さはあった。しかし、概ねどの選手も基本を大切にした丁寧な演技をしていて好感がもてた。小学生のうちは、無理はせず、でも手具には親しんで「手具をもった新体操」の楽しさも知る、「手具あっての表現」を経験するということはとても有意義だと感じた。

さらに、「徒手」の個人演技は、本当に見ごたえがあった。いや、じつを言うと、団体競技のときは「これが小学生?」と驚いたあの凄まじいタンブリングは、個人の徒手で見られなかった。そういう意味では一瞬、拍子抜けしてしまうような演技内容だったのだが、今度は別の意味で「これが小学生?」と驚かされる演技だった。

個人の「徒手」で最高得点を出した寺本悠人(神埼ジュニア新体操クラブ)は、まだ4年生ながら、男子新体操ファンなら「おっ」と思うあの名曲『秋桜』にのせて情緒的な演技を見せた。小さな体を精いっぱい伸ばし、ときには空気を巻き込むように体を縮める、指先、つま先まで神経が行き届き、全身で感情を表現するような、そんな味わい深い演技を見せてくれた。

※  ↓  九州小学生大会 個人「徒手」寺本選手の演技はこちら。

https://www.youtube.com/watch?v=cg1jsnAdDII

また、同じ神埼ジュニアから個人で出場していた宮田凰雅(小3)、浅田守(小4)の演技も、寺本選手同様の美しさがあった。彼らは、団体演技のときは年齢不相応なほどのタンブリングも見せていたが、個人徒手ではタンブリングはA難度に限定され、宙返りは禁止されているため(九州小学生大会独自ルール)、タンブリング以外の動きや表現を磨く必要があったし、本来彼らがもっていたタンブリング以外の強みがおおいに発揮された演技を見せることができたのだ。

※  ↓ 九州小学生大会 個人「徒手」宮田選手、浅田選手の演技はこちら。

●宮田選手 https://www.youtube.com/watch?v=GzIptrdKB7Q

●浅田選手 https://www.youtube.com/watch?v=9sasNg1vZZA

神埼といえば、ジュニアも高校生もそのタンブリングの強さで注目されることが多く、「強さ」で評価されているというイメージが強い。しかし、先日のインターハイでの神埼清明の演技もそうだったが、今、神埼の新体操はかなり変容してきているように思う。決してタンブリングだけではない、強さだけではない、全方位的に高いレベルにある新体操、穴が少ないからこそ到達できる表現の域に向かおうとしているように感じるのだ。

そのことを改めて感じさせてくれたのが、この先の神埼を支えていくことになるだろう小学生たちの演技だった。

10歳そこそこで、これだけの強さと美しさ、そしておそらく「新体操に対する強い気持ち」をもったこの子たちは、5年後、10年後にどんな男子新体操を見せてくれるのか。楽しみで仕方がない。

※神埼ジュニア新体操クラブはクラウドファンディングにも挑戦中!(今日まで)

 こちらもぜひ参照いただき、ご支援いただければと思います。

 https://camp-fire.jp/projects/766654/view?ctoken=E4tyvyfnBU7JivmZ