2023男子団体選手権の見どころ

2日間にわたるユースチャンピオンシップ(男子)の熱戦は、昨年の全日本ジュニアでほぼ手中にしていた優勝を最終種目でのまさかのミスで逃すという悔しさを味わった山本響士郎選手(高田高校)が全種目で1位という完全優勝! この上ない「全ジュニのリベンジ」を果たしました。

所属するLeo RGの大先輩でもあり、現在は高田高校で指導も受けている堀孝輔さんを彷彿とさせる多彩で複雑な手具操作とその安定感抜群の演技は、まさに堀孝輔の後継者とも感じさせます。まだ高校1年生ということを考えると、この先はもっと自分の個性が出てきて、果たしてどんな選手に化けていくのだろう? と楽しみしかない選手です。

山本選手の優勝はまさにぶっちぎりでしたが、2位以下は、非常に僅差で、そんな中にも4位に中学生の村山颯選手(国士舘中学/国士舘ジュニアRG)が入ると言う大躍進を見せ、近年のジュニア選手にとっては高いハードルとなっている全日本選手権出場を決めました。中学2年生の中澤陸選手(シンドバット新体操クラブ)も予選上位20人しか進出できない決勝に進むなど、中学生の活躍も目立った大会となりました。

 

そして、大会3日目。

本日13時から始まる男子団体選手権でも、多くの中学生の活躍を見ることができそうです。

男子団体選手権の出場資格は、小学4年生~高校3年生のため、従来は高校生のチームが上位を占めていました。

上位3チームには全日本選手権の出場権が与えられるため、高校生にとってはインターハイを待たずに全日本選手権出場のチケットを手にするチャンスでもありました。昨年優勝の鹿児島実業高校(鹿児島県)なども、それ以前は「コミカル演技で人気だけど点数は出ない」と思われていたチームでしたが、前回大会ではいわば封印してきた「まじめ演技」を凄まじい精度で披露し一躍「強豪チーム」に化けて見せ、全日本選手権の出場まで決めてしまいました。

そんなサプライズもあり、な今大会ですが、今年は、例年よりも高校生の参加が少なくなりました。5月下旬には各地方の高校総体が行われており、日程的に出場が難しい場合もあり、涙をのんだチームもあったのかもしれません。例年は団体選手権にも出場している青森山田高校(青森県)も今回は個人種目でのユース出場のみ。5位に入った誉士太陽向選手をはじめ、出場選手は活躍し、チーム力は証明しましたが団体演技の披露はインターハイまでお預けという形です。

出場チームは、17チームですが、この中で高校生のチームは、清風高校、光明学園相模原高校、大垣共立銀行OKB体操クラブ(クラブチームでの出場なので中学生も混じる可能性はあり)、高田高校、熊本県立芦北高校、山梨県立甲府工業高校、埼玉栄高校、鹿児島実業高校の8チーム。もちろん、ジュニアチームでも力のあるチームはあると思いますが、上位争いとなるとやはり高校生チーム有利かと思われます。

この8チームの中で優勝候補筆頭と思われるのは、やはり選手層の厚い大垣共立銀行OKB体操クラブではないかと思います。個人にも出場し決勝進出していた選手たちがゾロリと並ぶこのラインナップで弱いわけがありません。個人では強い選手が多く育っているOKBですが、団体での評価は今イチ、という時期も続きましたが、現在の選手たちは、はじめから団体もずっとやってきているので、団体としての合わせ方、見せ方も十分心得ています。かつての「バカ強い選手」が多かった時代は「個人の寄せ集め」感が否めなかったOKBの団体ですが、今は団体としてのまとまり、一体感、同調性も各段に上がってきています。指導にあたる坂本コーチは以前、「個人が強いから団体は勝てなくてもいいなんて思ったことは一度もない」と言い切り、なかなか結果が出ない時期も、粘り強く団体も強化してきました。以前のOKBではやや弱点と思われていた「線の美しさ」も、今の選手たちはしっかりと見せることができます。

力を出し切ることができれば、NPOぎふ時代までさかのぼってもまだ立ったことのない「団体選手権の頂点」に、今回は届く可能性がおおいにあるように思います。

OKBの団体初優勝を阻むとすれば、昨年度優勝チームであり、3月の高校選抜でも6位(選抜1~5位のチームは今大会不参加)の鹿児島実業高校。もちろん、演技内容にもよるかとは思いますが、今年もガチ演技ならば十分優勝争いに絡む力はありそうです。

また、昨年のインターハイは5人編制での出場で12位ながら「6人いれば優勝争いできたのでは」という高い評価を得ていた熊本県立芦北高校も侮れません。昨年は部員不足でインターハイに6人揃えることができませんでしたが、今年は昨年の全日本ジュニア団体2位のJKA芦北ジュニア新体操クラブから新入生も入ってきています。チームの中心となる木下直生選手は、個人でも活躍。チームの充実ぶりが感じられます。

光明学園相模原高校(神奈川県)も、伝統的に団体の強いチーム。昨年のインターハイでも団体6位となり全日本選手権出場、過去の団体選手権では表彰台の経験もあり、今回も虎視眈々と狙ってきているのではないでしょうか。

2014年にはインターハイでの団体優勝も経験している埼玉栄高校も、今回は登録選手8名と層に厚みが出てきているので団体では底力を見せてくれそうです。山梨県立甲府工業高校も、近年は毎年部員も多く昨年はインターハイにも出場しています。清風高校も選手登録8名と部員の多さが想像できます。

そして、その団体としての実力は未知数ながら、注目間違いなしなのは高田高校(三重県)です。

ユースチャンピオンとなった山本響士朗選手をはじめ、ユース決勝進出の関戸銀児選手など、Leo RG育ちの力のある選手が増え、ついに「高田高校団体」としての出場を果たしました。「高田高校」としての団体キャリアは浅いものの、Leo RG時代には団体経験もある選手が多く、個人で起こした「高田旋風」が団体でも再び! となるか注目したいです。

 

ジュニアチームでも、ユース7位となり全日本選手権進出を決めた谷口央弥選手を輩出した丹後ジュニア新体操クラブ(京都府)、

青森山田高校のカブチーム的なチームで、昨年ユース2位の葛西麗音選手を輩出している BLUE  KIDS、BLUE TOKYO KIDS(青森県)、

ユース5位の誉士太陽向選手を輩出したsynchression(東京都)、

男子新体操クラスまだ日が浅いながら、レジェンド・福士祐介さんの指導を受け、今大会も登録5名ながら団体にも挑戦するベルーガすぽーつくらぶ(静岡県)などは、活動している地域は違っても青森山田高や青森大学出身の指導者たちが活躍し、「青森の流れ」を感じさせるチーム。

ユース決勝進出を果たし17位となった島田倫太朗選手を輩出している阿久比新体操クラブ(愛知県)は、歴史的に新体操が盛んな愛知県を今、おおいに盛り上げています。

「おかあさんといっしょ」の新しい体操のおにいさん・佐久本和夢さんの出身クラブ・君津新体操クラブ(千葉県)、

田中兄弟をはじめ数えきれないほどの名選手を育ててきた新体操ファミリー・華舞翔新体操倶楽部(福島県)、

そして、高田高校の大躍進を下支えするLeo RG(三重県)と、今までの男子新体操、これからの男子新体操の立役者たちが揃っています。

小学生から高校生まで、幅広い男子新体操の形を見ることができる団体選手権に注目! です。

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