堀 孝輔(高田RG)、社会人大会連覇達成!

まるで「当たり前」のことのように堀孝輔は落ち着き払って「社会人大会連覇」を成し遂げた。

大会1日目の序盤、B班で登場した堀の最初の種目はリングだったが、相変わらずのリスク満載の演技を難なく演じ切る。

このところの男子の大会では多く見かけるようになった連続投げだが、この堀のリングではそのお手本を何回も見ることができる。

連続で投げること、キャッチすることだけに神経が集中するのではなく、さらりと演技の流れの中で行われる連続投げは堀の真骨頂だ。

加点になる前からずっと彼はこういった手具操作をふんだんに取り入れていた。それは強豪選手がひしめく学年、そして東海ブロックの選手だった彼が見出した「戦い方」だったのだと思う。

昨年はついに全日本チャンピオンになった堀だが、インターハイやインカレなどでの優勝は、2015年(高校2年)のときのインターハイのみ。

同期に強い選手が多かったため、なかなかトップをつかみ獲ることができなかった。そして強い同期たちは、それぞれに個性があり、「自分にはないもの」を持っている選手たちが多かった。そんな中で、決して練習環境には恵まれているとは言えない堀が勝っていくためには、「他の選手にはない強み」が必要だった。彼の巧みで独創的な手具操作は、そういう競争の激しい環境で生み出されたもののように思う。

1日目のリングでは、18.075。続くスティックでも18.100。スティックでは、3回前転にすることもある投げ受けを2回前転にしていたが、そういう冷静な判断も社会人ならでは、だ。

暫定首位で迎えた2日目。

いつもと変わりない様子でフロアに向かった堀だったが、クラブでは一度、投げが大きく狂った場面があった。やや体制をくずしながら大きく腕を伸ばしてキャッチ。

しかし、目に見えるほころびはそこだけだった。このクラブでも18.025と、18点台を3種目並べた。

社会人選手としては驚異的なことだ。

最後の種目となったロープでも、予定通りではないのでは? と思われる手具操作になっているところはあったが、それでもミスにはしないしぶとさと技術が堀にはあった。減点されやすく18点台が出ることは稀なロープでもさらりと18.125をマークし、2位の吉田和真(BLUE KIDS)に総合得点で6点以上の差をつけての圧倒的な優勝。吉田も決して悪い演技でなく、とくに後半種目では現役時代さながらの見事な演技を見せたが、堀の優勝は揺るぎないものだった。

今大会での堀の演技を見ていて、改めて感じたのはその技術や独創性だけでなく、音楽性の高さだった。

堀は構成や曲をあまり変えない選手で、同じ作品をずっと踊り続ける。今回のクラブなどはもう何年も見てきた演技だが、彼はそうやって長いこと同じ作品を演じ続けることによってその作品の精度を極限まで上げることに成功しているように思う。精度はなにも手具操作やタンブリングだけを指しているのではない。自分の中で練りに練ってもっているだろう演技のイメージ、とくに曲の旋律や強弱に合わせた動きが、じつに気持ちよく行われているのだ。

堀の演技は、手具操作が複雑なため、慌ただしく見えてしまう可能性もはらんでいる。が、彼の動きがあってこそ、曲が成立しているようにも見えるこの音楽性の高さがあるから、技の羅列に見えない。学生時代からそういう能力には長けた選手ではあったが、社会人になってからのほうがそれは顕著になったように思う。

昨年、悲願だった「全日本選手権制覇」を成し遂げたことによって生まれた心の余裕、があるのかもしれないとふと思った。

彼は、「ずっと打ち込んできた新体操で日本一になりたい」という思いに真摯に向き合い、努力してきた。「準優勝でもよくやった」と自分で折り合いをつけることなく、「勝てなかった悔しさ」と常に向き合い、そこから逃げずにやってきた。

そして、「日本一」という夢をかなえた今だからこそ、この演技がある。

良いものを見せてもらった。心からそう思える、堀孝輔の社会人連覇であり、4種目だった。

PHOTO:Ayako SHIMIZU      TEXT:Keiko SHIINA