「2022年、女子新体操はこんなに変わりました!」~世界選手権観戦のススメ

2022年8月26~28日、ホワイトキューブで行われた「全日本インカレ」。

女子の個人総合優勝は、喜田純鈴選手(国士舘大学)。それはもう素晴らしい演技を4種目揃え、文句なしの優勝だった。

9月14日からブルガリアで始まる世界選手権への出場が決まっている日本代表選手が、インカレに出場すること自体、あまりないことなうえ、そこでかなり完成度の高い演技を見せてくれたこと。日本の新体操界への貢献はかなり大きいと思う。

この喜田選手の演技を見られただけでも、価値ありの大会ではあったが、今大会を盛り上げたのは、決してトップ争いをした選手たちだけではない。

下位の選手も含めた多くの選手の演技が魅力的だった。正直に言えば、こんなことは数年ぶりだった。

▼篠原 涼(日本体育大学2年)

もちろん、昨年までの大会でも、ワクワクハラハラするような妙技の連続に手に汗握ることはあった。

とにかく技の数が多く、表現する隙間のないルールではあったが、それでもそこに表現を織り込んでくる選手たちの創意工夫には胸をうたれたし、10年前とは隔世の感のある手具技術の高さには目を見張った。

しかし、やはり、去年までのルールでは、多くの選手が「技に追われていた」。

それだけに、技術以外の良さが影を潜めていた感があった。「この曲でこんな風に踊りたい、表現したい」という気持ちはほとんどの選手がもっていたとは思うが、なにしろ余計な振りを入れている余裕がない。

そして、余裕のない演技では表情にも余裕がなく、必死さが表に出てしまう。そんな演技が多かったように思う。

▼青木もも花(福岡大学1年)

それが今年。

ルールが刷新され、手具難度(DA)の数に上限ができた。このため、大学生レベルになると多くの選手が去年までよりも減らしていると思う。

さらに、去年までは1回でよかった「8秒以上のステップ」を演技中に2回入れる必要ができた。「波動」を演技中に2回は入れなければいけなくなった。

また、芸術のジャッジが実施から独立したため、今まで以上に「音楽との一致」や「ストーリー性」などの評価が得点に占める比重が高くなった。

これらの変更の成果は、春先の大会から感じてはいたが、この全日本インカレではそれが顕著だった。

▼若松芽育(宮崎産業経営大学2年)

もちろん、実施でのミスや不正確さがあれば、しっかり実施が引かれるので得点は下がる。

その結果、上位にはいけなかった選手たちでも、なんとまあ素敵な演技を見せてくれたことか。

動きひとつひとつから、その曲の旋律だったり、感情を表現しようとしていることが感じられたり、

技をやっているときでさえ、しっかりと曲調やストーリーに合った表情を見せる選手たち。

「女優ですか?」と言いたくなるような、そんな素敵な選手たちがたくさんいた。

▼上杉永遠(北翔大学3年)

楽しいときには弾ける笑顔、悲しみが伝わってくるようなせつない表情、

何かに立ち向かうような凛とした表情、観ている側に感情が伝わってくる演技が飛躍的に増えたのだ。

もちろん、今年になってから演技を作り直した選手が多いだろうから、おそらくみんな道半ばの演技だったかと思う。

本当はもっともっと「魅せられる演技」を目指しているんだろう。

それでも、この夏に見せてくれた彼女たちの演技は、「ああ、そうだった新体操ってこういう魅力があったんだ」と思わせてくれた。

▼津末悠乃(日本体育大学2年)

長年、新体操を見てきているし、おそらく新体操が、新体操をやっている選手たちが好きすぎるので、どんなルールのときでも、楽しみどころを見つけてしまう。なので、「こんなのは新体操じゃない!」と切り捨てるようなことは言ったことがないと思うし、言いたくない。

新体操には国際ルールがあるので、競技として取り組む以上はそのルールの中で「できる限りのこと」をやるしかないのだから。

「本当はもっとこうしたい! このルールでは自分の良さは出せない」と思ったところで、やはり競技選手である以上は、ルールにのっとり点数を取りにいくしかない。上位を争う選手になればなおさらなのことだ。

それを思うと、去年までのルールでの演技を「技ばかりだな」と感じることはあっても、それをこなそうとしている選手たちは尊いと思っていたし、

新体操に魅力がなくなったとは思っていなかった。

「芸術性の高い新体操とは違う面白さがある」ととらえていたのだ。

▼長尾日乃花(同志社大学1年)

しかし、いざこうしてルール変更によって、見ていて楽しい演技がこうも増えてくると、ルールは本当に大切だなと思う。

女子の新体操はオリンピックサイクルでルールの見直しがあるので、こうして軌道修正されることがあり、対応する選手も指導者も大変ではあるが、よい方向に変わることもあるのだ、と今回のルール改正で改めて感じた。

今のルールもいずれは変更されるだろうが、私個人としては「ずっとこのままでもいいのに」と思うくらい、今回のルールを私は気に入っている。

▼高緑真菜(中京大学2年)

これだけ見ごたえのある演技が増えてきた以上、今年の全日本選手権(10月27日~30日)が楽しみで仕方ない。

さらに、その前には、世界選手権もある。喜田選手、山田愛乃選手の活躍も期待したいが、海外の選手たちの今年のルールでの演技もおおいに楽しみだ。

去年の東京五輪や世界選手権で、「あら? 新体操ってこんなだった?」と感じてしまった人も、ぜひ今年の新体操を見てほしい。

そこにはきっと、イメージに近い「新体操」があるから。

▼川瀬葵ら里(立教大学2年)

世界選手権は、テレビ朝日がCSと地上波(団体のみ)で放送するほか、おそらくFIGの公式チャンネルでもライブ配信があるかと思う。

情報を確認できたら、ライブ配信の情報もアップするので、今年の世界選手権はぜひ!(時間がな~~~ですが)

TEXT:Keiko SHIINA      <写真提供:日本ビデオアルバム協会>