2022高校総体男子個人メダリスト

2位:貝瀬  壮(光明学園相模原高校/神奈川県)スティック17.000+クラブ16.900=33.900

今年のユースチャンピオンとなった貝瀬選手だが、ジュニア時代からどちらかというとおとなしそうで控え目な印象があったため、「高校総体でも勝つぞ!」と意気込んでいるだろうとはあまり思っていなかった。「平常心でできることをしっかりやる」そんな気持ちで臨んでいるのではないか。父であり監督でもある貝瀬先生ならおそらくそう言いそうだと思っていた。しかし、1種目目クラブの第1タンブリングで両足着地をピタッと止めた姿を見て、「ああ、勝ちにきているんだな」と感じた。ユースチャンピオンとして、2つ目のタイトルを獲る! そんな強い気持ちをもって練習してきたことが彼の演技から伝わってきた。元来は繊細で美しい演技をする選手だったし、その良さは変わらないながらも、動きはよりキレよくなり、手具操作はチャレンジングになっていた。2種目目の第1タンブリングではタンブリング中にこれでもかとスティックを回し、その軌道が美しい残像となって残った。その強さと美しさを兼ね備えた演技は鳥肌モノだった。結果は2位。惜しくも優勝は逃したが、限りなく優勝に近い、優勝にふさわしい演技を、彼は見せてくれた。

 

3位:岩田  隼(済美高校/岐阜県)スティック16.800+クラブ16.850=33.650

午前の試技を終え、2種目とも17点台をマークした本田歩夢が首位に立ち、午後からの6~8班では16点台にのせる選手が出てこなかった。やや試合は硬直状態となり、このまま本田優勝かという雰囲気になりかけた時間帯に、昨年度高校総体チャンピオン・岩田の出番が訪れた。1種目目のクラブ、オリジナリティーのあるタンブリングもしっかりと決め、盤石の演技に見えた。スピード感、巧さ、迫力、動きの大きさ、幅。申し分ないと思った。さらには、昨年の優勝以降、徐々に醸し出してきた艶も今大会の演技では強く感じられ、高校生とは思えぬ大人びた演技だった。保護者、関係者限定の多いとは言えない観客ではあるが、観客席にも「これは連覇しそうだな」という感嘆の空気があった。しかし、表示された得点は16.850。この得点が出た瞬間、会場がしんと静まり返った。「えっ?」という驚きが会場を支配していたのだと思う。17点にのらないとはほとんどの人が思ってなかったと思う。が、こんなことがあるのだ。岩田選手が次の演技の前にこの点数を知っていたのかは分からないが、知っていたとしたら演技に影響しないだろうかと案じてしまうほど、この点数は衝撃的だった。見れば実施点は8.500とそれまでの選手の中で最も高かった。が、構成点が8.350と伸びなかった。内容が薄いわけではないので、おそらく予定したとおりに加点されなかった(基準を満たしていなかった?)のだろう。得点を決定する前に審判が協議していたことからも判断も分かれていたのだろうと想像するが、大きなミスをしたわけではないのに思ったよりも点数が低い、そんなときに平常心で2種目目を行うことは難しいはずだ。

しかし、それは杞憂だった。岩田はスティックも難なくノーミスで余裕さえ見える演技をした。ジュニア時代から岩田が所属する共立銀行OKB体操クラブには、過去にも強い選手を数多く輩出しているが、これまでの選手たちは強さと巧さは申し分ないが、「体操」に関して物足りないと言われることが多かった。しかし、岩田あたりの世代からは、体操で見せられるようになった。岩田のように、高校生の段階で「艶」さえも出せていた選手は過去のOKBにはいなかったように思う。これは、本人の資質や努力はもちろんだが、どれほど多くの名選手を育ててきても、満足することなく驕ることなく、「どこが足りないのか」「どこが弱さなのか」と向き合ってきた指導者の努力の賜物だと思う。

今大会の3位という結果は、とても悔しいだろうと思う。もしかしたら納得できていないかもしれない。

しかし、このことで、岩田隼という選手は、きっともっともっと揺ぎない強さを身につけるだろうと私は確信している。あのクラブの点数が出た瞬間の会場の雰囲気。それが彼の演技に対する審判ではない人たちの評価なのだ。

「連覇にふさわしい」と思わせる演技をたしかに彼はした。結果がそうならなかっただけのことだ。

彼の演技の価値はなんら損なわれるものではないのだ。

PHOTO:Ayako SHIMIZU     TEXT:Keiko SHIINA