2022高校総体女子個人優勝/喜田未来乃(高松中央高校)

どれほどのプレッシャーを彼女は抱えていたのだろうか。

1年前には、姉である喜田純鈴は、東京五輪に出場した。

そして、今年。

喜田未来乃は、地元香川県で開催された高校総体に出場。地元での優勝に多くの期待が寄せられていたに違いない。

オリンピアンになった姉にも劣らない素質があることは、幼いころから認められていた。

しかし、小学生のころから連戦連勝を続けてきた姉の偉大さも苦労も近くで見てきたせいだろうか。

喜田未来乃は、どこか自分の素質を持て余しているように見えることのある選手だった。

正直、「周囲から期待されるのが嫌なのかな」と感じたこともある。

両親ともに新体操選手、姉は五輪代表。嫌になってもおかしくない環境に彼女がいることは想像に難くなかった。

優勝候補だった今年のユースチャンピオンシップでも、2種目ではトップにあたる得点をたたき出しながらもフープでミスを連発して4位に終わっている。

そんな彼女が少し変わったように感じたのは、ユースの後、姉と共に海外の大会に出場したときの演技を見たときだ。

5月27~29日に行われたWCCポルチマン大会に急遽出場が決まり、そこで総合14位という健闘を見せたのだ。

リボンのみ26点台、他3種目は27点台にまとめ、何よりもライブストリーミングで見たその演技は、国内で見る演技よりもずっと伸びやかで堂々としていた。

続く6月のアジア新体操選手権でも、姉とともに決勝進出し、個人総合8位となった。

この決勝では落下のあったフープが26点台、リボンは27点台、クラブ28点台、ボール29点台と出し得る得点も徐々に上がってきた。

やはり海外の大会での未来乃選手は、のびのびとしている。そう感じさせる演技だった。

 

日本での未来乃選手の演技を見るのは、ユースチャンピオンシップ以来だったが、この高校総体での演技は、海外で見せる演技にかなり近づいていたように感じた。

1種目目のボールは、未来乃選手の持ち味であるしなやかさ、美しい線をこれでもかと見せつける演技を落ち着いて堂々とやりきった。

ゆっくりした曲調のため、今まではともすれば、単調に見えたり無表情に見えることもあったが、それが「たおやかさ」に昇華した演技で、29.100。

国内ではめったに見られない30点台にあと一歩に迫る得点をたたきだした。

続く2種目目のフープは、ユースではミスを連発した苦い記憶のある種目だったが、今回はきっちりとノーミスで決めてみせた。

170センチを超える長身で手足も長い未来乃選手は、この精度で演技を通せば「たおやかさ」だけでなく「ダイナミックさ」も見せられる。

表示された得点は、30.750。会場をどよめかせた高得点だった。

その結果、姉ももっていない(ロシアに留学していたため)インターハイチャンピオンのタイトルを手にしたのだ。

女子個人競技での優勝は香川県では初の快挙でもあった。

現在、高校2年生だが、今までは見えにくかった欲や自信が少しずつ見えるようになった未来乃選手には、ここからの大化けも期待したくなる。

気が早いかもしれないが、2024年のパリ五輪。

変なプレッシャーをかけたくはないのだが、挑戦したいという気持ちになってくれればとても嬉しい。

そう思わせてくれた今回の優勝であり、演技だった。

PHOTO:Ayako SHIMIZU      TEXT:Keiko SHIINA