映画「バクテン!!」公開へのカウントダウン企画㉙~2012男子キッズ選手権

「男子キッズ選手権」の始まり
(スポーツナビセレクトブログ「新体操研究所」2012年1月13日掲載)
 
 
2012年1月8日、ついに、男子新体操界悲願の「男子キッズ選手権」が長野カップの中で開催された。
 
あまりにもかわいらしく、一生懸命かつ個性あふれる演技の数々は、確実に会場中の注目を集めたし、空気を和ませた。それでいて、トップレベルの選手たちの演技は、「小学生でもこんなに?」と感嘆させるだけの美しさもあり、表現力もあった。
 
男子キッズ選手権は、大成功だった!
そう言っていいと思う。
このブログでも前から言ってきたように、男子新体操の新しい扉が開く瞬間、だったと思う。
 
困難もあったし、主に長野県の多くの方々に迷惑や負担もかけてきたけれど、「やってよかった!」ことは間違いない。
 
そのことは、この写真たちが証明してくれている。
きらきらした子どもたちの表情。
男の子らしく、わかりやすく「がんばるぞっ!」と張り切っている顔。
真剣そのもののまなざし。
それでいて、遠足の日の朝のような、わくわくうきうきもあり。
 
私は、公式練習のときから、「この光景が見られただけでもう満足・・・」という気分だった。
 
子どもたちがなにかを続けていくためには、夢をもつためにはこういう時間がやっぱり必要なんだよ、と確信できた。
 
 
いや、じつは、このキッズ選手権の様子を見ていて再認識したことがもうひとつあった。
こういう場が必要なのは、子どもたちだけではなかった、ということだ。
指導者にとってもこれは絶対に必要だ。
 
キッズ選手権を通して、目についたのは、指導にあたっている先生方や先輩たちの熱さだった。
そして、彼らもまたじつに楽しそうだった。
 
ここ数年、男子新体操を深く見るようになって改めて感じるようになったのだが、この世界はじつに狭い。
 
その狭い世界のなかでの少ないパイの取り合いをしているようなところがある。それだけに、若い世代や新しい力が出ていきにくい面をもっているように思う。
 
インターハイやインカレにいけば、名門校、強豪校ばかり。そして、指導者を見れば、それなりの実績を持った「名監督」といわれる人たちばかりだ。もしくは、若い監督でも、現役時代には名だたる選手だった人たち。
そうでなければ、強いチーム、強い選手は育てられないかのような雰囲気はあると思う。
転じてキッズ選手権。
小学校高学年にもなれば、キャリア6年以上という選手もいることはいるが、キャリア2年未満くらいの子も多い。
指導者も若い。全日本ジュニアでは、まだ見たことのないクラブもある。
それでも、やれることはあるし、やれることで魅力的な演技を作ることはできる。
 
有名な選手や学校に対して萎縮することもなく、のびのびとやれるのは子どもだけでなく、指導者もではないかなと思った。
 
思えば女子のチャイルドもそうだった。
チャイルド以前、ジュニア、シニアの強い選手のほとんどは有名クラブに所属していた。たいていは有名な監督のいるクラブだ。
ところが、チャイルド競技となると、聞いたこともないような新しいクラブ、若い指導者でも、上位選手を出すことができるようになったのだ。
 
 
新体操を始めてからの年数が少ない時点では、ネームバリューはあまり影響しない。女子のチャイルドが盛んになり、やや過熱した要因はそこにもあったように思う。
 
全日本ジュニアへの道は遠くても、チャイルドならチャンスがある!
そんな時期があったのだ(いや、それは今も変わっていない)。
 
しかし、そうやって「まずはチャイルド」で実績を作ることで、選手も指導者も自信をつけ、より強くなっていく、そんな図式はたしかにある。決して悪いことではない。
現在、女子の「有名クラブ」「強豪クラブ」と言われているチームの中にも、「まずチャイルドで名前が売れた」というクラブは少なくないのだ。
 
ジュニアでは、雲の上の人と思っていた名監督と同じ土俵で戦える。勝てる可能性だって十分にある。
 
そういうチャンスは、指導者を確実に成長させたし、女子新体操の新陳代謝をよくした。昔からある老舗クラブじゃなければ勝てない、なんてことはない! という空気が生まれてきたのだ。
 
それは、女子におけるチャイルド競技の大きな功績の1つだ。
そして、同じことが男子にも期待できるのではないかと、思った。
 
 
そう。
ここにいる子ども達が、「男子新体操の未来を担っている」のと同じように、若い指導者たちもまた「未来を担っている」ということを、実感でき自覚できる大会だったのではないかと思うのだ。
 
一方で、危惧も大きくなった。
それは、女子に一時期蔓延した「結果を急ぐ空気の増大」だ。
小学生のうちに、こうして大きな大会で結果が出てしまうということには、マイナス面も確実にある。
 
そういう意味で、最初が肝心なのだ。
今回のキッズでいい結果だった子も親も指導者も、舞い上がらないでほしい。
今回のキッズで結果が出なかった子も親も指導者も、落胆しないでほしい。
ここはまだほんの入り口なのだから。
 
若い指導者も、キッズでの大会を励みにはしてほしいが、最終的な目標がそこではないことを絶対に忘れないでほしい。
当事者である親や子どもはそうなりがちであることを理解して、フォローしてあげてほしい。
「キッズの成績が悪かったから、●●くんに負けたから」・・・そんなことでこの世の終わりみたいに感じることだってあるのだ。
 
それを「バカよばわり」しないでほしい。
そういうものなんだと理解して、でもそうじゃないからと諭してほしい。
 
あなたたちは知っている。
この先にクリアしなければならないことはたくさんあることを。
身につけなければいけない技術や能力もたくさんあることも。
 
キッズ演技がうまくできるかどうかと、将来いい選手になるかどうかは別ものだと競技経験者と指導者にはわかるだろう。
 
でも、やっているのは経験のない子どもであり、親だ。
今のアドバンテージも、今のビハインドも、ずっと続くんじゃないかと思ってしまう可能性はあるんだということを心してほしい。
 
まあ、それは杞憂かな。
杞憂だと思いたい。
 
だって、みんなこんなに楽しそうなんだから。
キッズはね、これが一番大事なんだよ。
 
「出られてうれしい!」
「見てもらえてうれしい!」
 
それ以外のもの、点数や順位はおまけにすぎない。
 
指導者も親も同じだ。
 
ともあれ、あまりにもかわいかった、ステキだった、そして笑いもあった男子キッズ選手権だった。
 
 
~映画「バクテン!!」公開まであと4日~

※映画公式サイトはこちら。 ⇒ https://bakuten-movie.com/

PHOTO:Ayako SHIMIZU    TEXT :Keiko SHIINA