2021全日本インカレ女子個人TOP3

優勝:松坂玲奈(東京女子体育大学)

大会1日目、フープとボールでの松坂玲奈は、絶好調だった。

「これでもかっ」と詰め込んだ技をひとつひとつ確実に決めていく。

大学生になった当初は、少しばかり「借り物」感のあった音に合わせた表現も、この2年間ですっかり板につき、自分のモノになっていた。

ちょっと不思議な感じの曲、独特な振付で常人離れした技を次々に決めていく松坂は、なんというか「異星人」のようだった。

普通の人にとっては難しいことも、彼女にとっては楽しい遊びのよう。そんな風に見えるだけの余裕があった。

2種目とも20点を超える高得点をマークし、初日を暫定1位で終えた。

2日目。

「このままいけば勝てる」まだ勝ったことのない試合でのその状況はたいていの選手にとって大きなプレッシャーになる。

2番手につけているのは、東日本インカレでは松坂を上回り優勝している山田愛乃。山田はまだ大学1年生でいわばインカレに関しては怖いものなしだ。おそらく将来は日本代表選手になるのだろう、とも多くの人が思っているその選手が下から追い上げてくるのは、松坂もわかっていたはずだ。

「首位を守りたい」という気持ちになれば、体は縮こまる。そうなってしまえば、どこまでも攻め続けるクラブの演技では破たんが出かねない。

少しばかり不安な思いで松坂の3種目目クラブを見守ったが、まるで「守りたい」なんて気持ちはないかのように、彼女はのびのびと、魔法のようにクラブを操り続け、大きなミスなく演技をまとめた。この種目でも20.650。

初優勝が見えた。

最終種目のリボンは、ほとんどの選手が苦労する種目だ。

松坂よりも前に演技をした上位選手たちでも、15点台がやっと。その難しい種目が最後に残ってしまったが、おそらくこの日の松坂は順位を落とすようなミスはしないだろうな、と思いながら見ていた。

難しいリボンだけに、減点を免れない細かいミスはあったように思う。しかし、大きくは崩れなかった。

17.900は、松坂としては低いが、リボンとしては十分、優勝に王手をかけたと言える得点だった。

多くの選手にとっては、きつい、厳しいと言われる現在の「D得点青天井ルール」だが、松坂玲奈はそのルールを最大限味方につけることに成功した選手のように思う。しかし、もちろん、それだけでインカレチャンピオンにはなれない。

この選手の器用さは、持ち前のものかもしれないが、その強みがきちんと評価されるだけの「演技」をこの2年間かけて仕上げてきた。

その努力あってこその結果だ。

チャイルドのころから、巧みさは目立つ選手だった。ただ、申し訳ないが、そこまで際立って目立つ特徴はない印象だったと思う。

「うまいけどね」それが、ジュニア時代の彼女の印象だった。

それだけの選手がトップに立ってしまうのは、いかに今のルールであってもちょっと残念だが、彼女は、ただ「うまいだけ」の選手ではなくなっていた。大学生になってからの急成長には目を見張るものがあった。技術ももちろんのこと、かつては課題だった表現の面でも、じつに素直に自分の殻を破る挑戦を続けてきた。そして、おそらく今回のような「結果」がちらつく難しい試合でも、力を出しきれるだけのメンタル。気持ちと体をコントロールする力をじっくりと蓄えてきたのだと思う。

幼いころから上手な選手ではあった。もしかしたら早熟なのかな? と思う選手だった。

が、じつは「大器晩成」だったのだ。幼いころから上手ではあっても、「これ以上にはなれない」と思うところまでは届かない状態で大学生になった選手だったようにも思う。

だからこその「吸収力」が、この選手の最大の力になっている。「私はこうだから」と上限を決めず、助言に耳を傾け、素直に取り入れる。その力が半端ない。だからこその成長をこの2年間見せてくれたように思う。

チャイルド~ジュニア~高校~大学と進んでいく中で、モチベーションを保ち続けることが難しくなる例もままある。

とくに環境が大きく変わることで折れてしまう場合も過去には少なからずあった。だから、現在は、所属するクラブチームのままシニアでも活動する選手も増えてきている。それが向いている選手もいるとは思うが、松坂選手を見ていると、最後に環境を変えて大きく化ける場合もあるのだと感じる。

様々な成長の仕方があっていい。選手によって何がきっかけになってジャンプアップするかは違うのが当たり前なのだから。

ずっと東女に憧れながら、徳島で新体操を続けてきた少女は、憧れの東女に入り、そこで成長し、2014年の三上真穂以来の全日本インカレ優勝を、東京女子体育大学にもたらした。

2021年の全日本インカレ女子個人総合はそんな試合だった。

 

2位:山田愛乃(国士舘大学)

 

3位:柴山瑠莉子(日本女子体育大学)

 

TEXT:Keiko SHIINA      <写真提供:日本ビデオアルバム協会>

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今大会のライブ配信を担当した日本ビデオアルバム協会制作のDVDは、高画質、音楽著作権処理もされています。

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