「一徹」満仲進哉(青森大学)~2020新体操フェスタ岐阜

新体操フェスタ岐阜1日目、試技順55番でスティックに登場した満仲進哉(青森大学)は、とても落ち着いているように見えた。

いい意味で、完全に自分の世界に入り込んでいる、そんな空気を彼はまとってフロアに上がり、そして「さくら」の美しい旋律にのせて踊り始めた。

重力を感じさせないふわりとしたジャンプ、とがった美しいつま先、そして随所で宙に浮いているのか? と見えるほど高い位置に保たれたかかと。

男子新体操では欠如しがちな部分での美しさを「これでもか」と見せつける演技は90秒間澱みなく演じられ、17.250という高得点をたたきだした。

続く2種目目・リングは、お馴染みの曲「Roundtable Rival」。

満仲にとっては演じ慣れた作品で、手具操作に少々の狂いが生じても慌てずに対処できる手練れの演技で、余裕がある。余裕がある分、自らの強みである柔軟性や音をなぞるように粘ってみせる動きの繊細さなどが際立った。表示された得点・17.400は、出場選手中上から2番目の高得点だった。

 

終わってみれば、ジュニア時代の同朋であり、今大会の優勝候補だった堀孝輔(同志社大学)に次いでの暫定2位。

1日目から堀の強さは抜けていたが、そこにもっとも迫ったのは間違いなく満仲進哉だった。

2020年8月。

青森大学の個人選手たちの練習を取材した。

現在、青森大学は多くの個人選手を抱えており、そのときは3つのグループに分けてフロアでの練習を行っていた。

満仲は、いわゆる「インカレ組」。昨年度インカレチャンピオン・安藤梨友、2位の城市拓人、佐藤兄弟ら錚々たるメンバーが揃っている。

しかも、このグループには4年生が多いため、どんどん後ろに延びてしまった全日本インカレ、全日本選手権に向けての思いをぶつけるかのような引き締まった練習が行われていた。黄金世代と呼ばれる今年の4年生たちは、すでに素晴らしい実績を得てきている。しかし、彼らの練習を見ていると、まるで「まだ何も手にしてない」かのような必死さがある。

何もかもなくなってしまいそうだった今年。

インカレと全日本選手権は開催予定にはなっているが、今後の状況によっては中止の可能性もゼロではない。

そんな不安定な中で、なぜこんなにもひたむきになれるのか? 見ていて少し胸が痛くなる。そのくらいの熱が彼らの練習にはあった。

 

どの選手も必死で、どの選手もうまい。レベルが高い。

そんな中で、ひときわ目を引いたのが満仲だった。

なぜ彼が目を引いたのか、そのときは分からなかった。しかし、岐阜での彼の演技を見たときに、あのとき彼の演技からは、「このままでは終わらない」という思いが伝わってきていたのだと思った。

8月の青森で、彼は、

「次の試合(新体操フェスタ岐阜)での目標は、次の大会に進める順位に入ること。

 ただ、今それを考えると余分な力が入るので、考えないようにして1つ1つの大会にしっかり出て、やり切ることだけを目指しています。」

と言った。欲がないわけではない。が、それを極力そぎ落とそうとしている状態だった。

だから、あのとき彼の演技に惹きつけられたのは、彼が人一倍ギラギラしていたから、ではない。

孤高感。

が、彼にはあった。

勝敗を超えた何かに向けて一心不乱すぎて、人を寄せ付けない空気をまとっていて、その空気ゆえに彼から目が離せなかったのだ。

「ここまで新体操をやってきて、近いうちに“これが最後”という時を迎えます。

 そのときに、“他の人とは違うもの”を見せたいと思っています。」

その彼の言葉で、彼が何を求め、何を目指しているのかストンと納得できた。

 

そして、この1か月半後、岐阜で愛ドームで、彼はその思いを成し遂げた。

 

満仲進哉は、ジュニア時代から「そこそこ強い」選手だった。個人選手として全日本ジュニアにも出ているし、青森山田高校に入学して高校2~3年時は個人代表としてインターハイにも出場。高3のときは、ユースチャンピオンシップ6位、インターハイ7位と入賞もしている。

ただ、いかんせん同級生には強い選手が多く、強すぎる同級生たちの中で、自分を高く評価することはできなかっただろうということは想像に難くない。

黄金世代と呼ばれることをどう感じている? と訊いてみたとき、彼は、

「自分は含まれていないと思っている。

 黄金世代と言われている選手たちはすごいな、羨ましいなと思うこともあったし、自分もそこに混ざれるようになりたいというモチベーションに繋げるようにしていました。」

と答えた。

 

だからこそ、なのだろうか。

彼は「他の人とは違うもの」を求め続けた。

その結果、最後の年、きっと誰もが忘れないだろう、というような演技にたどりついた。

 

大会2日目。

クラブは、高校時代から変わらない。高校、大学の先輩である松田陽樹(2012年全日本チャンピオン)のおさがり演技。

「最後の年だからいい加減変えろ」と松田からは言われていたらしいが、満仲はガンとして変えなかった。

「陽樹さんのおかげで、自分は成長できたと思っている。今でも、陽樹さんの動画を何回も見て、音のとり方とが勉強しているが、いつまでたってもあの人には敵わない。クラブだけは最後までこの演技で通したいんです。」

そんな思いがいっぱいつまったクラブの演技は、限りなく松田の演技を踏襲しながら、紛れもなく満仲進哉そのものだった。

ミスするような気配すらなく、会場の空気を支配したこの演技は、17.600。3種目すべてを17点台にのせた。

そして、最終種目のロープ。男子ではミスが多く減点されがちな種目だが、満仲のロープには隙がなく、この種目も17.600。

なんとこの種目ではトップの高得点だった。

満仲進哉は、魅力的な選手だ。

身体能力にも、表現力にも独特なものがあり、ポテンシャルを感じさせる選手だった。

が、決して「強い選手」ではなかった。

「自分はイレギュラーなことに対応するのが苦手。」と本人も言う。

それでも「最近やっと精神的な面が整ってきた。」と感じているそうだ。

たしかにそれは今大会の演技を見ればわかる。持っている力を、安定した状態で発揮できさえすれば、これだけの演技を見せ、これだけの評価を得られる選手なのだ。

それをコンスタントにはできなかった。

今までの彼が「強い選手」とは言えなったのは、その一点ゆえだ。

 

この先、全日本インカレ、全日本選手権と大会が続く。

そこでも今回同様の力を出すことができるかは分からないが、まずはこの新体操フェスタ岐阜で、ここまでやれたということに意味がある。

ある意味、もうこれで十分。そう思える演技を、彼はこの大会で見せてくれた。

残りの試合は、怖いものなしでいけばいい。

自分らしく、自分にしか見せられないもの、を見せる。

ただ、それだけを目指して。

 

TEXT:Keiko SHIINA     PHOTO:Ayako SHIMIZU/Keiko SHIINA(練習)