光明学園相模原高校団体に見る「光明」~2020新体操フェスタ岐阜

2020新体操フェスタ岐阜で行われた第5回全日本男子新体操クラブ選手権の団体競技の部【全日本選手権大会予選の部】において3位に入り、見事、全日本選手権の出場権を獲得した光明学園相模原高校(神奈川県)の演技には驚いた。

もちろん、素晴らしい演技だった。

かねてより光明相模原は、シュッとした美しい線の選手が多く、演技もどちらかというと「美しい印象」の年が多かったように思う。

練習の取材にも以前、何回か行っているが、年にもよるが「勝ち気」に満ちた練習という雰囲気ではない。

試合直前になっても、非常に丁寧に細かい部分を修正したり、揃えたりしている。

貝瀬監督の指導はいつも、目の前の試合よりももっと先を見ているようだった。

だから、と言っては失礼かもしれないが、1998年にはインターハイ団体2位、個人でも優勝者を出している伝統校である光明相模原は、近年はインターハイにこそ連続出場を続けてはいるが、団体の優勝争いからは遠ざかっている。(個人はその後も、インターハイ優勝、入賞選手をたびたび出している)

それなりに強い選手が揃っている年もあり、大学に進学した後、大きく開花する選手も少なくないのだが、高校生のうちの結果だけを見れば、全国の名だたる強豪校には及ばない、と言わざるを得ないだろう。

新体操フェスタ岐阜の1週間前に行われた男子新体操オンライン選手権にも光明は出場していたが、ここでの演技もかなりよかった。8位に入った坂出工業高校とは0.025という僅差での9位。その演技は点数以上の印象を残していた。

それが、この新体操フェスタ岐阜で見た、リアルな演技では、当然オンライン以上の迫力があり、男子新体操としては画期的に華麗な衣装が、ある意味、相応しくないように見えかねないほどのダイナミックでパワフルな演技だった。

光明がここまで「強い!」と感じさせる演技を見せたのは、全日本選手権に進出した2017年以来ではないかと思う。

比較的、線の細いまさに「シュッとした」選手が多いのに、体型からは想像できないほどのスピード感、キレのある演技を見せたのだ。

 

改めて、団体メンバーの選手名を確認してみたら、胸がいっぱいになった。

小学生のころから、テレビ信州杯や東京ジュニア、関東ジュニア、全日本ジュニアなどで見てきた名前ばかりだったのだ。

 

ほんの10年前まで男子新体操は高校始めが珍しくない競技だった。

中学生から始めていれば早いほう。それだけに、中学3年生まで出場できる全日本ジュニアは全国から予選を勝ち抜いてきたと言っても、手具を投げれば落とす子が続出。普段は団体の練習しかしていないような選手でも、とりあえず手具をもって個人競技に出て、それでも全日本ジュニアくらいは出られる、ジュニアはそんなレベルだった。

しかし、2010年あたりから状況は大きく変わり始めた。各地にジュニアクラブが発足し、ジュニアが出られる大会も増えてきた。小学生から出られるキッズ競技も始まった。

このころ小学生で新体操を始めた子ども達がすでに大学生になっている。そして、高校生は、「小学生から新体操をやっている子」の比率が飛躍的に上がってきている。

もちろん、競技開始年齢が早ければ、それだけ競技のレベルは上がる。今の男子新体操の演技は、個人も団体も10年前より格段にレベルが上がっている。しかし、選手として過ごす期間が長くなれば、それまでとは違う問題も出てくる。

故障が起きやすいこともそうだが、早くから結果が得られたことによる燃え尽き症候群などもある。

そして、かつて女子の新体操でよく見受けられた、「見切りをつける」(主に親が)ケースが多くなるのだ。

小学生から大会に出たり、ハードな練習を重ねていれば、高校生になる前には、ある程度、競技での結果が見え始める。

ジュニア時代から華々しく活躍する子もいれば、そういう脚光にはあまり縁がないままの選手もいる。

もちろん、ジュニアまでで結果が出ない子には「見込みがない」ということではない。が、幼いころからひとつの競技に打ち込んでしまうと、そういう思ってしまいがちだ。ましてや、男子には、小学生から競技を始めた選手のロールモデルがまだ少なかった。

女子ならば、全日本ジュニアに出られないジュニア選手は山ほどいる。が、男子はかなり高い確率で全日本ジュニアに出られていたために、小学生からやっているのに全日本ジュニアにも出たことがない、または全日本ジュニアには出たが、上位ではなかったとなると「見込みなし」と烙印が押されたように感じてしまいそうな環境だったと思う。

今年の光明のメンバーにはそういう子たちが多い。

小学生から新体操をやっていて、大会にも出ていた。やってきた年数分は確実にうまくはなっているが、それがまだ結果には結びついていない。そんな風に見えていた選手たちだ。

しかし、それでも彼らは、高校生になっても新体操を続け、まさにさなぎが蝶になるように、大化けしてくれた。ジュニア時代から名前の売れた選手たち、ではない。が、彼らのジュニア時代の指導者はきっと「先にいって大きく咲けるように」と育ててきたのだ、と感じられる選手たちだ。

そんな選手たちのチームが、こんなに強く、こんなに美しい演技を見せてくれたこと。

そして、全日本選手権に出場することが、嬉しくてたまらない。

おそらくこの先もずっと、小学生のときに男子新体操を始める子は増え続けると思う。

増え続けてほしいと思う。

そうなってくれば、かつての「高校始め」の選手たちとは、いろいろなことが変わってくることを、指導者も親も知っておいてほしい。

知名度も上がり、レベルも上がってきた今の男子新体操は、「ちょちょっとやったら全日本ジュニア出場」なんて甘い競技ではなくなっている。小学生からずっとやっている、ずっと練習している。それでもなかなか光が当たらない、そんな思いをたくさんしながら、それでも「男子新体操が好きだから」と粘り強く続けていく先に、理想の自分があり、結果もついてくるのだ。

 

競技人口の少なさゆえに、男子新体操には「功を急ぐ」傾向が見られるように感じていたころもあった。

指導者にも「短期間で習得できる=素質がある」とするむきもあった。

しかし、今はそうではなくなった。

長い時間かけて大きな花を咲かせる、そんな育て方が重要な時期に男子新体操は差し掛かっており、光明相模原の今回の演技はそれを体現して見せてくれていたと思う。

幼いころから男子新体操を選び、頑張り続けてくれた子たちが、こんな風に育ってくれたということは、男子新体操界のまさに「光明」だった。

おそらく、「ジュニアでの結果ではなく長い目で育てる」を実践している指導者たちに、おおいに勇気を与えてくれたと思う。

光明相模原の選手たちは、総じて線が美しかった。男子新体操にしては、内股になる瞬間も少なく、つま先や膝も伸びていた。

幼いころから背伸びさせるのではなく、年齢相応に大切なことを教え、丁寧に育てられてきたのだと思う。

優勝ではなくても、強豪ではなくても、「こうありたいと思わせるチーム」、それが今の光明相模原だ。

 

TEXT:Keiko SHIINA      PHOTO:Ayako SHIMIZU