2020高校選抜大会情報①~鹿児島実業高校(男子)

昨日(2月9日)に発表された、全国高校選抜大会の試技順を見て、「おっ?」と思った方もいるかと思う。

当初は、出場予定ではなかった鹿児島実業高校の名前が団体競技にある。

九州地区で出場辞退があっての繰上げ出場ということだが、このところ、鹿児島実業はこういう幸運にも恵まれることがままある。

部員不足に悩む学校も多い男子新体操部の場合、1~2年生だけでチームを編制しなければならない高校選抜においては、「まず団体が組めるか?」が最初のハードルとなる。鹿児島実業も10年前には、そこで苦労をしていた時期もあったが、今は違う。

インターハイまでで3年生が引退してもすぐに次のチームが組める。

春先には3チーム分の人数がいる年も珍しくない。そして、初心者であっても、基礎練習と並行してどこかのチームに入れて演技の練習もさせるという実践的な育成を樋口監督は行っているのだ。

だから、繰上げ出場が決まれば、ありがたく受ける。

選手たちに大きな舞台を経験させることにはおおいに意味があるからだ。

チームにとっては次のチャンスがあっても、選手によってはこれが最初で最後のチャンスになる場合もある。

それを無にするようなことを樋口監督はしない。

強豪校のように、「出るからには優勝」というチームではないからできることかもしれない。

「カジツだから」少々チーム力が落ちている時期だったとしても、出られるのだという人もいるかもしれない。

しかし、そんなことはない。

「カジツ」だから、フロアに出てユニークな振り付けで踊れば、観客は喜ぶ。動画も再生数を稼ぐ。

というものではないことを樋口監督は知っている。おそらく選手たちも。

優勝争いするようなチームではない。

難度の高い構成をこなせるチームではない。

それでも、実施が伴わない演技では、観客を笑わせることなどできない。

だから、鹿児島実業は、いつだって必死に練習している。

選手たちの能力は年によって違う。それでも、そのときの選手たちなりに、少しでも向上しようという努力をしている。

「これは男子新体操ではない」

「邪道だ」

と謗りをうけることもある鹿児島実業の演技だが、振り付けや選曲、衣装などで物議をかもすことはあるにしても、男子新体操として本来やるべきことにもきちんと取り組んでいるということが、あまりにも評価されていないように感じることは少なくない。

観客にウケればいいというものではない。

それはわかる。

だが、少々笑いに走った演技だったからといって、不当に低く評価することもないと思う。

(減点にあたる事項があった場合の減点は当然だと思うが)

鹿児島実業でも、強い選手がいた年もある。

素晴らしいタンブリングを見せてくれた年もある。

なによりも、じつはつま先や指先の伸びや、足の向きなどはそんじょそこらのチームには負けない美しさだと感じることが多い。

「見せる演技」に対する樋口監督のこだわり、がそこにあると思う。

減点されないようにつま先を伸ばせ、内股にするな、ではなく、演技をよりよく見せるために、観客が気持ちよく演技を楽しめるように、でき得る限り「完成度」を上げていく。だから、揃え方へのこだわりも半端ない。

審判も観客も他のチームの指導者も選手も、「カジツだから」という目ではなく、鹿児島実業の演技をきちんと見てみてほしい。

鹿児島実業は、面白さだけを追求しているわけでは断じてない。

それが、鹿児島実業が鹿児島実業であるゆえんだ。

今年の選抜大会には、昨年のインターハイで披露した演技で出る予定だという。

K-POPの曲と振りを多用した昨年の演技は、普通に踊るだけでもかなり難しい。

それをバッチリ決めてこそ、笑いにもつなげられる。

2月9日に、鹿児島実業高校の体育館で練習を見た。

そこには久々に頭髪もスッキリしたいでたちで、必死に練習する選手たちがいた。

細かい部分にこだわり抜く、樋口監督の言葉を聞きもらさぬように耳を傾け、動画をチェックし、お互いに指摘し合って。

チームの5番手、6番手争いが熾烈らしく、メンバーを入れ替えながら、昨日よりも今日、今日よりも明日と、成長していける練習を、彼らは積み重ねていた。

高校選抜大会で、鹿児島実業の演技を見られることを、楽しみにしておいていいと思う。

TEXT  &   PHOTO:Keiko SHIINA