森 夜梨子(大阪樟蔭女子大学/アリシエ兵庫)~第71回全日本新体操選手権

「新体操を見続けてきてよかった」

しみじみとそんな思いをかみしめる演技に出会うことがある。

今年の全日本選手権は、そういう思いにたびたびなった。

そんな気持ちにさせてくれた珠玉の演技たちのことを、いくつか書いていこうと思う。

 

彼女は、いつもとても爽快な演技をする選手だった。

なにもかもが思い切りよい、のだ。

動きも常に溌剌としていたし、表現もかなり濃く、表情もころころとよく変わった。

そして、なによりもその手具操作の思い切りの良さは特筆すべきものだった。

 

森 夜梨子。

大阪樟蔭女子大学所属なので、西日本インカレから勝ち上がってきるのだが、数年前まで西日本の選手は、ほとんど全日本インカレで上位に入れず全日本選手権に進めなかった。多くても年に1人、誰も進めなかった年もあった。

そんな中、彼女は、大学1年時こそは全日本インカレ20位で惜しくも全日本進出を逃したが、2年生からは3年連続で全日本選手権進出を果たした。

学生最後の年となった今年は、総合17位と自身の最高順位を上げ、有終の美を飾った。

西日本の選手たちにとっては、希望であり、目標。そんな選手だった。

 

ジュニア時代から、当時はそこまで評価されていなかった果敢な手具操作に挑戦していた記憶がある。失敗するときもかなりダイナミックだった。

彼女はきっとずっと前からそういう演技を志し、やり続けてきたのだ。そして、選手生活の後半になってから、時代も彼女に味方するようになってきた。

リオ五輪以降、手具操作による加点の重要度が増し、これでもかと技のつまった演技に点数が出るようになった。だからと言って、突然そういう演技に取り組めば、ミスも増えるし、いわゆる「技に追われる演技」になってしまう。が、森夜梨子にとっては、それは「今までずっとやってきたこと」であり、大学生になってからはその熟練度がどんどん上がってきていた。さらに、「技に追われる」のではなく、技をつめ込みながらも、表現することも彼女は放棄していなかった。ときにはAGGのチームにメンバーとして入っていることもあった森は、年々表現力も増し、数々の技も単なる加点稼ぎではなく、意味のある動き、表現の一環に見えるようになっていたのだ。

今大会、森にとっては最後の演技になるのだろうと思われた2日目のクラブの演技では、多くの観客が彼女の卓越した技の連続に見入っていた。

この日の彼女の演技にはそうさせる力があった。

「ここでこの演技を披露できるようになるまでに、彼女が積み上げてきた時間」を、明確に感じるとることができ、たとえこの選手を特別に応援している人ではなかったとしても、今、目の前で行われている演技の「凄さ」は十分理解でき、惹き込まれる。そんな演技だったのだ。

 

大学4年生。

これが最後の試合、だったのかもしれない。

が、彼女の演技がこれで見納めになるのはじつにもったいないと思わずにいられない。

どんな形でもいい。今までのように追い込んで試合に挑まなくてもいい。

それでも、自分が楽しみ、観客を楽しませる、そんな新体操をこの先もなんらかの形で続けてくれたらいいな、と期待したくなってしまう。

森夜梨子は、そんな選手だった。

PHOTO:Ayako SHIMIZU   TEXT:Keiko SHIINA