第71回全日本新体操選手権男子団体優勝/青森大学

第71回全日本新体操選手権男子団体は青森大学が制した。

これでインカレ17連覇に加えて、全日本選手権5連覇となった。

全日本インカレでも優勝している青森大学が優勝したこと自体には、驚きはなかったが、今大会でのその演技内容には度肝を抜かれた人が多かったのではないか。

全日本インカレ後にキャプテンの井藤は、「今回(全日本インカレ)は、組み技をひとつおとしてやらざるを得なかった」と、すっきりしない表情で語っていたが、あのとき、封印を決断した組み技が、今大会ついにベールを脱いだのだ。

青森大学の代名詞ともいえる「ブランコ」は、年々進化し、「ダブルブランコ」ついには「スーパーブランコ」とでもいうべき、凄まじい技になっていたが、今回はそれとはまったく違う新しい「ブランコ」を見せたのだ。

「タワーブランコ」と呼べばよいのだろうか。土台となる2人の4年生の上に井藤が立ち、その下にぶら下がるような形で2年生に江上がぶら下がり、スイングして飛ぶ。見るからにリスキーな、そして大学生の団体としては意表をついた高さのある組みに、会場は沸いた。

そして、その組みのインパクトだけでなく、いつもの青森大学らしいスピード感のある隊形移動。重みのある体操も健在。今大会は予選、決勝ともに大きなミスもアクシデントもなく、危なげなく王座を守ったように見える。

ただ、決してそこに至るまでは平たんではなかった。

今回も、青森を発つ数日前からこの組みが狂い始め、何回も失敗を繰り返していたという。このままなら、また組みははずすか、という選択肢も中田監督にはあったそうだ。しかし、ブランコの土台を務める4年生2人は、昨年まではレギュラーには入っていなかった選手たちだ。近年の青大のメンバーの中では抜きんでて身長が高く、体躯もしっかりしていた。この2人の土台あってこその組みでもある。

常々、中田監督は「4年生には自信をつけさせて卒業させたい」と言っているが、そのためにも、この全日本選手権ではどうしてもこの組みを成功させたかった。出発直前まで試行錯誤して、今までとは違うやり方で安定感を増すことに成功できた。

果たして本番での組みは揺るぎなかった。

この演技、大会を通じて2人が得たものは大きい。

そして、青森の連覇のたすきは、次の世代に繋がれた。

近年は、ブランコの凄まじさに注目が集まりがちだったが、来年以降は、また違った青森大学の凄みを見せてくれるのではないか。そんな予感もある。

いずれにしても、次はまた、こちらの予想の斜め上をいく進化を、きっと青森大学は見せてくれるに違いない。

 

【選手コメント】

 

●井藤 亘(4年)

「今の率直な気持ちは“ほっとした”というだけです。

組み技をどうしてもやりたかったのですが、練習でも安定感がなく崩れていたので不安しかなかったです。

そのまま会場入りして4日間過ごして、ずっと不安を抱えたまま過ごしていたので、無事にすっきりと決まった安心感でほっとしているのと、ついてきてくれた仲間に感謝しかないです。

全体としては倒立で少しミスはありましたが全体的なまとまりはあり、良かったと思います。

 

今年はメンバーが固定しないなかでやってきて、月日をかけて実施が上がってくるのですが、人が変わるとそれがまたそこからやり直しになり、めずらしく朝練もしましたし時間をかけてきました。その甲斐あってしっかりまとまることができたと思います。

4年間のなかで今年が一番つらかったと思います。

でもまた来年も強い一年生が入ってくるはずなので引き続いてしっかり連覇を繋いでほしいです。

きっとやってくれると思います。」

●村松景介(4年)

「昨年は補欠で、今年何としても(全日本選手権に)出たかった。不安も抱えつつも今日出ることができ、本番もばっちりできてほっとしましたし、嬉しかったです。」

 

●内村志朗(4年)

「A団体として初めての大会でプレッシャーはあり緊張しました。案の定、不安定な箇所が出てしまったのは悔いがありますが、他はこらえて乗り切れたし、組はしっかりはまったのでほっとしました。

個人総合で優勝した福永(国士館大)とはジュニアの頃から同期で一緒にやってきて、いつかは優勝してほしいと思っていましたが、同時に自分も優勝することができ、いい報告が地元の鹿児島へ出来ることがめちゃくちゃ嬉しいです。」

 

●五十嵐涼介(2年)

「3月下旬に怪我で手術、入院も経験してメンバーから外れ半年間ほとんど動けませんでした。

復帰しても思うようには動けず、先生にもダメだと言われて一度はメンバー落ちもあったんですが、仲間の支えがあって上がってこられました。

亘さんと自分の二人は去年からのメンバーなのでなんとしてでも次に繋ぎたい、と。どうしてもこのJAPANに出たかったんです。

まだ痛みと相談しながらですが、その自分を使ってくれたことには感謝しかありません。

4年生が抜けても、この2年間でチームの引っ張り方もみているので出来る、と思います。

来期は今年落ちた、といわれている徒手の強化を考えていて、今年を超えるような作品を作っていきたいです。」

●江上駿祐(2年)

「新体操を始めたときから日本一を目標にしていて、高校で叶うことなく、それが悔しくて日本一になりたくて青森大に来ました。

中田先生の指導を受けてついにここまできたんだな、と。

実感はまだあまりないのですが、高校の頃のことを思い出すと、今は憧れだった青森大学でこうやってできていること、JAPANで演技できたんだなということ、4年生に優勝カップを持たせることができたことが本当に嬉しいです。

自分も高校生の頃、上の代の先輩をみて、福岡大学の栗山巧さんなど凄くて、ああいう選手になりたいなと思っていました。自分もそういう存在に近づけたらと思います。

来期は自分たちがしっかり引っ張っていくことになると思いますが、学年や年齢は関係なく自分がやるんだという強い気持ちをもってやっていきたいです。」

 

●武藤翼(1年)

「一年でレギュラー入りして、まわりがうまい人ばかりで緊張もしていましたが先輩たちのサポートもあり、ここまでやってこられました。

ジャパンでは組み技が難しくてその練習で迷惑もかけましたが、本番ではちゃんと通せたのが本当に嬉しかったです。

徒手の見せ場のセンターを任せられていますが、練習ではできていたことで、今日うまくいかなかった箇所もあり、その点もこの冬でしっかり練習して徒手の面でもみせられる選手になっていきたいです。

4年生に優勝を、というのが青大の中にあるので、その重責を果たせてほっとしたのと、嬉しい、その両方が今の気持ちです。」

PHOTO & INTERVIEW:Ayako SHIMIZU      TEXT:Keiko SHIINA