第7回ローザカップ

今年の高校総体で団体2位、4位と大活躍だった静岡県。

その静岡の強さは、広い静岡県の中に力のあるクラブ、学校が点在していることに起因している。

県西部にあるローザ新体操クラブも、静岡の底上げに貢献しているクラブで、すでにジュニアでは全国レベルの選手を輩出しているが、

年に1回開催しているローザカップも、今年で7回目を迎え、県西部の新体操選手たちのモチベーションアップに繋がっている。

ローザ新体操クラブの佐々木梨加代表によると、「浜松市では新体操という競技すら知らない方達がたくさんいるため、新体操というスポーツをまず地元の方に知って頂きたいという気持ちがずっとありました。県西部の底上げと新体操の知名度を上げていくこと、普及を目的としてローザカップを始めました。」とのこと。

 7回目を迎えた今回は、幼児からシニアまで、県内外から22チーム450名が出場する規模の大会となったローザカップ。


「新体操が好きな気持ち、頑張る気持ち、継続する力があれば、誰でも上達できるチャンスがあると思っています。ローザカップが選手たちの成長の助けになっていれば、本当に嬉しいです。

 同じ思いと志でクラブの域を超えて手伝ってくれる浜松市のジュニアクラブの若手コーチ達と、支えてくださるローザの父母会があるからこそ、続けてこれた大会です。支援してくださっているみなさんには、とても感謝しています。」

 9月1~2日に行われた今年のローザカップでも、幼児さんたちのかわいらしい演技から、シニア選手の風格ある、レベルの高い演技まで数多くの演技を見ることができた。とくにシニア(高校生)は、見ごたえのある演技の応酬となった。

 

 優勝は、高校総体にも静岡県代表として出場し、3位入賞を果たした海野晴子(アンジュ)。

 不安をかきたてるような曲調がスリリングなクラブでは、演技序盤で安定を欠き手具の落下もあったが、揺るぎないフェッテや雄大なジャンプなどを決め、後半に向けてはどんどんのってきたのがわかった。ラストにはリスキーなキャッチも決めて、貫禄の笑顔が見えた。ボールにいたっては、高校総体やユースなど全国大会で見るよりも、一回り大きく伸びやかで笑顔がはじけた演技を見せた。難しい操作もまるで楽しんでいるかのように軽やかな演技で、動きのアクセントのつけ方も絶妙。限りなく実力を発揮できたときのこの選手の魅力を、改めて思い知らされる演技だった。

 2位の鈴木結名(ローザ新体操クラブ)も、ボールの演技はすばらしかった。勢いがあり、巧拙以上に、演技に込めた思いが伝わってくる演技で、フェッテターンのスピード感、演技終盤に向けての盛り上がりが非常に印象に残った。クラブでは落下が重なってしまい本人も残念だったと思うが、ミスが出ても表情が曇らなかったのは立派だった。起きてしまったミスは仕方がないが、そのことによって演技全体をダメにしたくないという強い気持ちが感じられる演技だった。

 3位の富村柚子(ローザ新体操クラブ)は、フロアに出てきた瞬間から光をまとっているような華のある選手。ボールではバレエ曲と思われるクラシカルな曲で、バレリーナのようにエレガントな演技を見せた。衣装、振り付け、選曲ともに選手の個性を最大限に引き出していたと思う。クラブでも、バレエ「くるみわり人形」のこんぺいとうの踊りを使っていたが、こちらは少し独特なアレンジをされていて、ボールとは違う雰囲気が出ていた。それでも、何回か落下はあっても艶やかな笑顔が絶えなかったところが素晴らしかった。

 

 上位3選手はいずれも、表現力豊かな演技を見せていて、ぜひ高校卒業後もなんらかの形で新体操を続けてくれれば、と思った。

 現在の新体操は、手具操作の比重がかなり上がってきているので、どうしても操作に追われてしまいがちだが、高校生の段階で、ここまで「表現する力」をつけてこれた選手たちであれば、さらに熟練度が上がってきたときは、より自由に、自分の表現したいものを描き出せるような選手になっていくのではないかと期待が膨らんだシニア選手たちだった。

 

 中学生1位の鈴木希歩(ローザ新体操クラブ)は、全国大会でもよく見かける力のある選手で、今大会でもその力は存分に発揮されていた。この選手の特徴は、スピード感のあるシャープな動きと、思い切りの良い手具操作。クラブで見せたような「強さ」を感じさせる曲でも、踊り負けない雰囲気をもっている。リボンのような柔らかい手具を使った演技を見ると、身体の動きでもう少し柔らかさを表現できるようになると、シニアに向けてさらに表現の幅が広がり、さらに上も目指せるのではないかと感じさせる選手だ。

 中学生2位の冨田悠理香(ローザ新体操クラブ)は、ジュニア選手ながら、深みのある演技を見せる魅力的な選手だ。ボールでは、非常に大人びた「ジュ・テーム」という曲を使っていたが、曲負けしない雰囲気のある演技だった。演技の要所要所で、しっかり目線を前に向けることで、思いを伝える演技になっていたように思う。リボンでは、終盤ではもたつきもあったが、基本的にはリボンの軌跡も美しく、よい演技を見せていた。全般を通じてかかとの高さも目につき、これからが楽しみな選手だ。

 

 団体では、チャイルド団体1位のリボンRGの黄色いレオタードに負けない明るくかわいい笑顔にあふれた演技は、まさにチャイルドのお手本のような爽快な演技だった。身体難度をきっちりやっているだけでなく、難度以外の部分での動きが音楽によく合っていた。さらに、上体の動きが豊かで指先から肩までを大きく、表情豊かに使っていることで、表現の幅が広がっているように感じた。まだ手具をもっていない徒手演技だからこそ、こういった動きは大切にし、志を高くもって挑戦することは大切だと思う。この先、手具をもつようになったときに、どんな演技を見せてくれるのかが、楽しみなチャイルドさんたちだった。

 

 ジュニア団体1位のアンジュは、身体難度が明確に見え、さらにそれが5人揃っている。安心して見ていられる団体だった。前半の曲が、ジュニアではやや表現が難しいのではと感じたが、それでもひとつひとつの動きが美しいのでマッチして見えてしまう。後半の曲のほうがチームの個性には合っているように感じたが、この曲の変わり目で、動きや表情などでもっと変化を見せられると作品に深みや広がりが出るのではないかと感じた。実施では、交換や連係での移動もほとんどない正確さで、「さすが」としか言いようがない。

 

 シニア団体1位のアンジュは、高校総体団体2位の城南静岡高校メンバーが揃っていた。会場を興奮の渦に巻き込んだあの高校総体での演技がマックスかと思いきや、あのときよりもさらに勢いよく大きくのびやかな演技だった。つくづくこのチームのポテンシャルはまだまだ高いのだと感じられた。

 緊張度の差はあるのだろうが、のびのびと演技したときのこのチームには、交換や連係などの移動もほぼ見られなかった。少し動いているとしても、まったくそれがミスに見えないように巧みに演技が繋がっていく。強くて艶やかなこの作品は、リミッターがはずれたくらい思い切りよく演じられたとき、凄まじい爆発力を見せることを証明する演技だった。全日本選手権での演技を楽しみにしたいと思う。

 

 おそらくこのローザカップが初めての大会となる子ども達も多くいるのではないかと思うが、そういったまだ新体操の入口付近にいる子ども達が、全国でもトップレベルの選手、チームの演技を間近で見る機会となっていることも、この大会の大きな意義だろうと感じる。そして、そのあこがれのまなざしで見つめられる選手たちもまた、かつてはここがスタートだったのだろう。第7回を迎え、これまでに蒔いてきた種が花を咲かせ始めているのだ。そして、それはいつかきっと大きな実にもなるに違いない。

TEXT:Keiko SHIINA        PHOTO:ローザ新体操クラブ提供