「社会人の星になれ!」~三桜電気工業株式会社/小林秀峰OB

昨年ついに全日本選手権出場を果たした三桜電気工業株式会社の男子新体操部。

もともとは男子新体操などなかった会社で、小林秀峰高校OBが立ち上げた社会人チームだ。

はじめから団体が組めたわけではなく、現在、チームリーダーを務めている北ノ薗峻二も、当初は個人選手として社会人大会に出場していた。

 

会社の理解も得、応援も受けて、徐々に男子新体操経験者が社員にも増えていき、昨年はついに全日本選手権に駒を進めた。

すでに現役を離れていた選手たちも総出で勝ち取った全日本だった。

そんな三桜電気工業は、今年もかなりの強力メンバーで、再びジャパンを目指す。

いや、今年はそれだけではない。

「優勝カップ、ほしいですね」

と、北ノ薗は言う。

社会人チームの例にもれず、三桜の練習時間も十分とは言えない。

とくに、会社で出張の多い部署にいる青屋爵と前田春希は、休みが2週間に1回しかない変則勤務。

勤務地も転々としており、練習場所である宮崎市や小林市にはとても通えないため、練習に参加できるのは2週間に1回だけだ。

普段の仕事もかなり体力的にきつい現場作業だけに、たまの休みにはゆっくりしたいのではないかと思うが、

彼らにとってはその貴重な練習が、2週間に一度の楽しみになっているようだ。

 

この日は、彼らの母校である小林秀峰で練習が行われていたが、メンバーは4人しかそろっていなかった。

それでも、社会人大会本番が近づいているという緊張感と、社会人ならではの和やかさのある練習ぶりだった。

なんと言っても、彼らの練習を、小林秀峰の高校生たちや、秀峰での練習に来ているジュニア選手たちが、見つめている。

その空気がとてもいい。

かつて、岐阜にあったアルフレッサ日建産業。

日本初の男子新体操社会人チームのことを思い出す。

彼らが練習していた岐阜の体育館では、当時のNPOぎふ新体操クラブのジュニア選手たち、高校生たちが一緒に練習していた。

社会人選手たちが少ない時間をやりくりして、短時間の練習で集中して演技をまとめていく姿を間近に見ながら、多くの選手たちが育っていった。

 

男子新体操の技術向上を牽引してきた岐阜がもっていたあの空気が、今の小林秀峰にはある。

やっている社会人選手たちはもちろん大変だろう。

それでも、彼らには志がある。

「三桜という会社の名前で、新体操を続けていくことで、より多くの人に会社の名前を覚えてもらえるという利点と、会社の人や仕事関係の人達にも新体操を知ってもらえるという利点があります。

 自分たちが頑張ることで、次の世代の選手たちにも、三桜という会社で新体操をやっていくという道があると示すことができれば、次につなげられるかなと、それが自分の務めかなと考えています。

 それが、新体操をやってきた子ども達の地元での雇用確保にもなることが、ひとつの目標です。

 仕事と新体操を両立することには、苦労はありますが、6人でフロアに立つのは、とにかく楽しい。試合となれば緊張感もありますが、それも高校や大学のころを思い出させてくれて、その緊張感を味わえることがまた楽しいんです。」

 と北ノ薗は、語る。

 「三桜や、宮崎はもちろんですが、全国どこでも、社会人になっても新体操を続ける子が増えてほしいな、と思います。」

 多くの人がはじめは「無理」と思うことも、志を捨てず、努力を続ければ、叶うことがある。

 それを教えてくれる三桜電気工業新体操部は、まさに「社会人の星」だ。

 

 今年は、メンバーに、前田春希(今春、青森大学卒業)や、高校を卒業したばかりの若手・吉村光正、さらに、青森大学OBの柳文人が加わった。

昨年からの残留メンバーは北ノ薗、青屋、そして岩下涼志の3人だけだが、戦力は決して落ちていない。

 小林秀峰のDNAの濃いメンバーならではの、同調性は社会人チームとしてはかなり高いレベルにあり、大会を盛り上げる演技を見せてくれることは間違いない。今年もぜひ全日本選手権でもその演技が見られることを期待したいと思う。

PHOTO & TEXT:Keiko SHIINA