2018東海総体に向けて⑤~潤徳女子高校(東京都)

目前に迫った2018年の全国高校総体。女子団体の台風の目になりそうなのが、初出場の潤徳女子高校だ。

足立区のジュニアクラブTESOROで育った選手たちが、地元の公立中学・千寿青葉中の団体として全中でも活躍。さらに、高校は潤徳女子に集まり、ここ数年は毎年、「今年は(東京代表は)潤徳かも?」と言われてきたが、あと一歩及ばなかった。

昨年は、全日本クラブ団体選手権のシニアの部で優勝し、高校総体よりも先に、全日本選手権出場を果たし、満を持して挑んだ今年の東京都予選を勝ち抜き、さらに、6月の高体連関東ブロック大会でも優勝。今、もっとも勢いのあるチームと言ってよいだろう。

 

しかし、決して順風満帆ではなかった。

東京都予選で歓喜の「全国高校総体初出場」を決め、ここから! と意気込んだ2日後、レギュラーの一人が腕を負傷。高校総体までの復帰が絶望的となった。

本番まで3か月を切った時点でのメンバー変更。

それでも、関東ブロック大会では、17.500で優勝。2位の昭和学院には0.7差をつけ、「今年は潤徳で間違いなしだった」と言われる圧巻の演技を見せた。

7月22日に訪ねた潤徳女子の練習で、その強さの源を見ることができた。

 

この日の練習は、TESOROのジュニアと潤徳女子が合同で行っていた。

ジュニアたちも翌日に東京ジュニア選手権を控え、熱の入った練習をしていたが、潤徳女子のレギュラー以外の選手たちも、しっかりチームを組んで通し練習まで行っていたのだ。もちろん、高校総体を控えているレギュラーたちが通すときには、曲かけや応援などサポートに徹する。が、自分たちの練習にも余念なく、レギュラーメンバーと同じ作品を踊こなしていた。

潤徳女子の新体操部は、TESORO出身の選手ばかりではない。ジュニア時代の所属は違っていても、「潤徳女子で新体操を」と入ってくる選手は受け入れている。

今回のレギュラーメンバーでも、TESORO出身の選手は3人、東京都予選までは2人だった。

キャプテンの瀧井美緒は、ジュニア時代からずっといっしょにやってきたメンバーに、高校から新しい仲間が加わったチームをまとめていく難しさがあったと言う。

「頑張りたい気持ちが顔には出せない子もいるし、伝えられない子もいる。ジュニアから一緒だったメンバーは出せる子たちだったので、はじめはそうじゃない子のことを理解できていなかったと思います。

 でも、こちらが、じゃあいいよ、と切ってしまったらそこで終わってしまうので、気持ちを出せない子にも出させるように周りがしていくようにしました。ときには厳しいことを言うこともありますが、お互いに気持ちが出せるように、言いたいことは口にしよう、という雰囲気を作ってきました。」

 

たしかに、この日の練習を見ている限り、選手たちはお互いに声をかけ合い、意見を言い合い、アイコンタクトをとっていた。

フロアには上がっていない選手たちも、サポートに、応援に全力を尽くし、まさに「チーム一丸となって」そのものの練習風景だった。

この日、彼女たちが身に着けていた練習着は、白地に大きな花柄が目を引くものだったが、この花はプリントされているのではなく、吉田桃子監督がアップリケしたものだそうだ。

そのため、一人ずつ少しずつ花の柄も色も違っている。が、それでいて一体感がある。そして、その練習着はレギュラーだけでなく、部員全員で揃えてあった。

フロアに立つ選手とそうでない選手がいても一体感があるチームは、指導者がそう扱っている。そして、そういうチームだからこそ、レギュラーに故障者が出ても、その穴を埋めることができるのだ。

順風満帆ではないが、準備は万端。

この日の潤徳女子の練習の雰囲気、そして通しの完成度からはそう感じられた。

 

初の全国高校総体に向けて、吉田監督は、

「東京は、個々のレベルの高い駒場学園や、合わせが素晴らしい二階堂と強いチームがあるので、そこをどう超えるかが課題でした。うちは、演技の流れやダイナミックさを重視して、会場で演技を見ている人までが一体になる演技を目指してきました。

勝つことも大事かもしれませんが、それ以上に、挑戦した演技で勝つ、努力を重ねて勝つことを目指したいと思っています。

今年のメンバーは3年生が多いですが、みんな高校を卒業しても新体操は続けたいと言っている子たちなので、とにかく新体操が好きで、こちらも感心するくらい前向きに頑張っている。そのことに価値があると思っています。」

と言う。かつて吉田監督が言っていた「頑張れる選手を育てたい」という夢は、叶いつつある。

キャプテンの瀧井には、自分たちの演技の見せ場、強みを訊いてみた。

「後半に難しい技が集まっているので、今までは後半で崩れたり、後半を意識しすぎて前半が縮こまることがありました。総体に向けては、2分30秒を同じ気持ちでやる練習を重ねてきたので、最初から最後まで出し惜しみのない演技をしたいと思います。

この大会に出るまでに、たくさんの悔しい思いもしてきたので、緊張もするとは思いますが、やっとこの舞台で踊れるということを楽しんで、やってきたことを出し切りたいです。

部活としての目標は、『全国制覇』を掲げているので、そこを目指します。ただ、ここがゴールではなく、一つ一つの試合は次に繋がっていくものなので、次に向かう希望のもてる試合にしたいと思います。」

3月の高校選抜で見た潤徳女子の演技は、後半でミスこそあったが、フロアからあふれ出すようなエネルギーがあり、見るものの感情を大きく揺さぶるものだった。

この日、何回も通しを見たが、何回通してもそのエネルギーは、無尽蔵のようだった。

彼女たちは、このチームは、こんなにも新体操に懸けている。そう感じられる演技であり、練習ぶりだった。

2000年シドニー五輪の日本代表団体のメンバーだった吉田桃子。

あれから18年が経ち、彼女の育てた選手たちが、ここまできた。

決して平坦な道ではなかったろうし、長い時間もかかっている。

だが、即席ではないだけに、「たしかなもの」が育っていると感じる。

 

なによりも、ここには「新体操を頑張ることが楽しい」と感じられる選手たちが育っている。

やっと手にした全国高校総体という舞台で、彼女たちが最高の輝きを見せてくれることを期待したい。

 

TEXT & PHOTO:Keiko SHIINA