2018高校選抜の収穫③~諦めない金蘭会の挑戦

2018年3月25日、高校選抜女子団体。

金蘭会高校の試技順は、23校中の20番目だった。

この時点でのトップは、試技順1番ながら突き抜けた得点をマークした常葉大常葉。

そして、駒場学園、八千代松陰がそのあとにつけていた。

金蘭会高校は、昨年の高校総体覇者。そのときの優勝メンバーはかなり抜けているが、なにしろ金蘭会は中学のころから全中で結果を残し続けている。上が抜けても埋める選手はいる。そこがこのチームの強みだ。

そして、今やだれもが知っている、おそらく「日本一攻めた構成」。

昨年は、D得点に10点上限があったことがやや不利に働いた感もあったが、今年からはD得点の上限がなくなったため、どこまで攻めてくるのか? と関心がもたれていた。

ここまでもっとも高いD得点を得ていたのは常葉大常葉の10.80。駒場学園が9.70。

金蘭会なら、これを上回る内容でくる可能性はある。

優勝の行方も変える、と思われた金蘭会の演技が始まる。

曲が流れたとたん、その意外性に「はっ」とした。

Lara Fabian の「Je t'aime」

ベルギー出身の多言語歌姫。名前は知らなくても、聴けば「ああ!」と思うような名曲を数多くリリースしている世界的な女性シンガーの曲。

そして、この曲は、高校生で、ましてや新体操というスポーツで表現できるものだろうか? と思わせる哀愁や女性らしさ、そして人生をも感じさせる曲だ。

そんな曲に、ある意味、今、もっともスポーツらしい新体操をやってきた金蘭会はどう挑むのか? その意外性に度肝を抜かれたが、驚いたのは最初のほんのわずかな時間だけだった。

なぜなら、彼女たちは、なんの違和感もなく、この女性らしく大人びた曲調に溶け込み、今までの金蘭会史上一ではないかと思わせる美しい演技を繰り広げていたから。

ここ数年、いつも金蘭会は上位にいる。そして、いつも呆れるほど果敢な演技をして、それでもノーミスやノーミスに近い演技をしてみせては、驚かせ、感動させてくれた。

ただ、もちろん毎回、優勝しているわけではない。

いくら金蘭会の演技が「凄く」ても、凄さ以外の何かで金蘭会を上回るチームはいる。

そこが新体操という表現スポーツの面白さであり、難しさでもある。

「凄い!」と思わせることはできても、いわゆる表現の部分で、人の心を動かす、という点や、音楽と演技との融和性などの点、そして動きの美しさなどでは、金蘭会に対する評価は必ずしも高くはない、こともあった。ミスらしいミスはなくても、得点が伸びないということもあったが、そこにはそういった所以があったと思う。

金蘭会が追求してきた、他を圧倒する複雑な構成、そしてそれでも正確にやり抜くという演技では、どうしても曲とのずれや動きがややバタついてしまったり、表現から感情までは伝わりにくい、という面はあった。そして、そこが評価の分かれ目になっていたのではないか。

しかし、その金蘭会が、こんなにも情感を込めて、見る人の心を表現でわしづかみにするような演技を、見せた。そのことに、感動もしたし、驚嘆もした。

正直、今までの金蘭会の演技を見て、何回も「凄い!」とは思ったが、おそらくこういう表現は苦手なのだろう、だから、自分たちなりの路線で突き抜けようとしているのだろう、と思っていたのだ。

ところが、そうではなかった。

今回の彼女たちの演技の美しさは、感情をこめて演じ、踊りながら、それでもいつも通りに投げ受けや連携の見せ場は満載、という中で揺らぐことがなかった。

「苦手だからやらない」ではなかったのだ。もしかしたら今までは、自分たちの強みを際立たせるために封印していたのかもしれない。

ことによっては、苦手を克服する努力を続けてきたのかもしれない。

ふと、12月に見た武庫川女子大学の発表会での金蘭会とすみれRGの集団演技を思い出した。あのときは、どこまでもとことん美しいバレエだった。ロマンチックチュチュに身を包んだ、優雅な演技を彼女たちは見せてくれた。いつも曲芸のような投げ受けを気持ちよく決めている運動神経の塊のような選手も、顎を上げ、肩をおとして、プリマのような気品を漂わせていた。「こういう作品もやるんだ」と驚いたり、感心したりはしたが、ある意味、あの作品は、今年の団体作品のプレリュードだったのかもしれない。

少なくとも、大会での演技を見ているだけではわからない多面性を持ったチームなのだということをあの時に感じたのが、今回の高校選抜で確信に変わった。

金蘭会は、必要と思ったことはなんでもやる! やってきた! 

その貪欲さ、その勇気には、おそれいるしかない。

いずれにしても、この高校選抜で見た金蘭会の演技は、大きな衝撃だった。

じつは、今大会では、珍しく落下があり、得点はD9.60、E4.25で総合13.85で5位だった。納得のいく演技でも、結果でもなかっただろうと思う。

しかし、この演技の完成度がもっともっと上がってきたときに、彼女たちの演技からなにが伝わってくるのか。そして、どんな結果が待っているのか。

楽しみで仕方がない。

TEXT:Keiko SHIINA      PHOTO:Ayako SHIMIZU/Keiko SHIINA(※武庫川女子発表会のみ)