2018高校選抜の収穫①~男子新体操・維持し続けるチーム力の凄み

高校選抜の試技順は、前年度の成績を反映しているので、いわゆる強豪チームは後半に集中する。そのため、前半はメンバーが6人に満たなかったり、3年生が抜けると大幅なチーム力ダウン、というチームが目立つ。

それはそれで、新しい息吹を感じられるフレッシュな演技だったりはするし、そういうチームが夏までにどう立て直してくるのか、が楽しみになったりはするのだが、今年の高校選抜、前半に抜けて目を引くチームがあった。

試技順4番の科学技術高校(福井県)と、前半のトリだった坂出工業高校(香川県)だ。

どちらも男子新体操の伝統校ではある。しかし、表彰台には、もう一歩。いわゆる中堅校という位置づけにいるが、2校に共通しているのは、継続してよい選手を育て続けているところ。常に一定レベルのチームを作り上げてきていること。

そして、どちらのチームも、そのチームらしい色のある体操をする。

よい意味で、「ああ科技だな」「坂出らしいな」と感じさせる演技を毎年見せてくれるのだ。

今回もそうだった。

団体競技が行われた25日、朝からの公式練習を見ていても、まず科学技術のタンブリングの力強さ、そろい具合に圧倒された。

そして、なによりも、深く、美しく、大きな体操。

これは、「いいな!」と直感する練習ぶりだった。

 

さらに、坂出工業は、もう練習のときから、「これ、かなり上位にくる?」と感じる迫力ある演技を見せてくれた。

果たして本番。

科学技術高校の演技は、鹿倒立や斜前屈などでわずかに動いたり、という細かいミスは見られたが、テンポ入りのタンブリングのスピード感や、2人並んで行ったときのそろい方など、素晴らしかった。彼らのタンブリングは力強いだけでなく、まっすぐなところが魅力で、だからこそ2人並んだときにこの同時性が出るのだろう、と感じた。

また、科学技術の特徴として、体回旋の前の「ひっぱり」がある。

回旋に入る前に右方向に上体が引っ張られているかのように遠くに伸ばすのだが、なんだろう。科学技術の「ひっぱり」には独特のスケール感と柔らかさ、そして間がある。この間から一気に回旋に入ると、ため息が出るほど美しいのだ。

この春、国士館大学を卒業した吉村翔太選手は、本当に徒手の美しい選手だった。

大学時代は団体に専念していたが、団体にいても、個人でも、その徒手の美しさは際立っていた。小柄な選手だったが、動けばだれよりも大きく見え、人よりも関節が多いのではないか、と感じるような動き方をしていた。

その吉村選手も、この科学技術高校の出身だった。現在、国士館大学にも青森大学にも、吉村選手の後輩たちが在籍しているが、どちらも高校時代から徒手の美しさでは目を引く選手だった。

今回のチームにもそういう選手たちが複数いた。

個人競技に出場している選手はおらず、抜けた力をもっている選手はいないのかもしれない。が、「ああ、科学技術だ!」「吉村翔太の後輩たちだ!」と感じられるチームを、3月のこの時期にちゃんと作り上げてきた。

得点は、14.875。細かいミスで少々得点は落としているようだったが、印象は得点よりもずっと高い。そんな演技で、6位入賞を果たした。

 

前半最後に登場した坂出工業高校は、「期待を裏切らない」ではなく、「期待の斜め上をいく」演技を見せてくれた。

坂出工業は、2015年には川東拓斗選手(現在国士館大学3年)を擁する力あるチームで、高校総体でも4位になっているが、今は、そこまで個人で抜けている選手はいないように思う。今回の選抜の個人競技にも出ていない。

しかし、このチーム力の高さと言ったら!

凄まじいとしか言いようがない。

従来の坂出工業は、高校から男子新体操を始める選手が多かった。

それでも、1~2年で使える選手にする、それが林晋平監督の力量だった。

以前、高校総体前に坂出工業の練習を見に行ったとき、レギュラーチームはもちろんのこと、Bチームも非常にまとまっていることに驚いたことを思い出す。中には春に新体操を始めたばかり、という選手が混じっていたりもしたが、それでも作品の中に入って違和感がないところまで、3か月足らずでもっていく、坂出工業はそういうチームだった。さらに、Bチームが組めるだけの部員数がいる。経験者以外でも伸びる環境があるから、部員も集まるのだろう。そこもこのチームの強さだと感じたものだ。

そんな坂出工業だから、1,2年生しかいないこの時期の高校選抜でいい演技をしても、驚きではない。それができるようなチーム作りをしていることは知っているから。

ただ、今年の出来は既知の範囲を超えていた。

高校で始めた子が多くても、ここまでできますよ! というものではない気がした。競技終了後、林監督に確認してみると、「坂出ジュニア出身が5人いる」とのことだった。

ついに、坂出にもそういう時代が来たのだ。

高校始めの選手でも、毎年、コンスタントに強いチームを作り上げてきた林監督のもとに、基礎を身につけた選手たちが集まってきた。

今年の坂出工業は侮れない! そのことを十分に印象づける演技だった。

力強く、大きな徒手。強いタンブリング。

演技終盤のいちばんきついところで、花火大会のフィナーレのように連続して打ち上げる組みからの飛び技。

今年の坂出工業の強さを、高らかに宣言するような演技、だったと思う。

得点は、15.575。前半グループながら、終わってみれば5位に食い込む得点だった。

 

こういうチームの躍進を見ることのできた高校選抜は、じつに見ごたえのある大会だった。そして、これが夏の高校総体への序章だと思うと、4か月後の静岡での決戦が楽しみで仕方ない。

 

TEXT:Keiko SHIINA     PHOTO:Ayako SHIMIZU